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マイハニーミルク【7】
「八尋さんっ、ただいまぁ!」
望は勢いよくリビングのドアを開けつつ叫んだ。
「おー、おかえりー」
時刻は十一時過ぎ。八尋はリビングのソファでテレビを見ていたようで、放送していたらしいアクション映画がクライマックスを迎えようとしている。
脱いだジャケットとカバンをソファの背もたれに適当に掛け、望は八尋に声をかけた。
「す、すみませんっ! 遅くなってしまって」
「お疲れ。夕飯まだだろ? カレー温めるよ」
八尋はそう言って望の脇を素通りしてキッチンに行ってしまった。
目を合わせてくれない。
望は焦りつつ八尋を追いかけた。
「八尋さん……ごめんなさい。断る勇気なくて」
そう言いながらカレーを火にかけ温める八尋を背中から抱き締め、首筋に顔を埋めて甘えてみる。
「仕事なんだからしょうがないだろ? 部長なのに断るなんてありえんだろ」
八尋は笑いながら応える。
(怒ってる訳では無いのか……?)
八尋は湯上がりらしく白いロゴTシャツに黒のハーフパンツだ。温かな身体からほのかに感じるフェロモンとミルクの香り。
望は自身の中で八尋への渇望が膨れ上がるのを感じた。
「……八尋さん、今朝の約束、まだ有効ですか?」
望は八尋のネックガードで覆われたうなじにキスを落とした。しかし八尋は「あ……えっと……」と困ったような反応だ。
「だ、ダメですか……?」
一日期待していただけに絶望の淵に立たされた気分だ。望は戸惑いながら聞き返した。
「だ、ダメじゃないんだが……。さっきシャワー浴びたら、その……漏れちゃって……」
八尋の首筋が赤くなる。『何が?』とは聞くまでもない。言葉に困り言い淀んでいると今度は八尋が焦ったように続けた。
「す、すまんっ! 搾らないでおくって言ったのに……。シャワーなら大丈夫かなって思ったんだけど……その、俺も……期待しちゃってた、みたいで……」
どんどん小声になっていく八尋の言葉。だが望は一語と漏らさずに聴き取った。
望は手を伸ばしコンロを火を消した。
「望?」
「ご飯は後で勝手に食べます」
望はそう言うと同時に八尋を担ぎ上げた。
「わっ! の、望っ!」
驚く八尋をよそに望はそのままリビングを出て自分の部屋へまっすぐに向かい、八尋をベッドに下ろした。
「い、いいですよね?!」
望はワイシャツにベスト、スラックスのまま八尋に覆いかぶさり確認した。八尋は瞳を潤ませた静かに頷いた。
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