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第5話
挑戦的に言い放つと、彼は目を丸くした後に笑った。
「あはは! そんな時がきたら楽しみだな?」
じゃれるように、互いの胸や首元に愛撫する。全然嫌じゃないし、怖くない。
ただただ温かくて、楽しい、と思えた。
彼の手が腰に回る。ズボンの中に潜り込んで、下着の中をまさぐった。
「アケミ様。もっと……」
不安や羞恥が高まる。けどそれ以上に、この熱を発散したかった。
自ら腰を擦り寄せて強請ると、優しくキスをされた。
「したいけど、そろそろ朝の見回りが来るから無理かな。ごめんね」
もうそんな時間か。随分熟睡してしまったようだ。ていうか、
「朝!?」
「朝だね。暗いけど」
確かに、時計は朝の時刻をさしている。
やばい。人間捜しはおろか、朝食の準備もしてない。
「い、急いで戻ります!」
ベッドから這い出て、大慌てでシャツを着る。アケミは上半身が裸のまま、大きく腕を伸ばした。
「まだ寝てたらいいのに。暑いから二人とも裸で寝てました、って言えばいいよ」
「駄目に決まってるでしょう! 俺が処刑されます!」
能天気な彼につっこみ、「朝食を持ってきます」と言い残して部屋を出た。
かつてない事件に心臓がバクバクしてるけど、これはただ浮かれてるだけかもしれない。
あんな姿を見せたのも、甘えたのも初めてだ。
「うわ……」
恥ずかしい。その日は鏡が見れない上、ため息が止まらなかった。
とりあえず昨夜のことは忘れて、今は仕事に集中しよう。
でもアケミ様って、本当に不思議な人だ。
あんな風に誰かに触れたいと思ったのも、触れられたいと思ったのも生まれて初めて。
あの一夜から芽生えた、甘酸っぱい想い。
続きができるのなら、またあの宴の後だろう。
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