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第6話
その後も、享楽の夜は続いた。
だけど俺はある日初めて、誰も連れて帰らなかった。
なにか、自分でも気付かない心境の変化でもあったのだろうか。
良い人間が見つからなかったのだと嘘をついた。
初めて宴が開けなかったことで、当然のことながら冥王は憤り、臣下達の前で罰を下した。
無期限の投獄。それが俺に与えられた罰で、今できる唯一の仕事。世界から遮断された地下で、ただ蹲る。光の届かない、深海のような冷たさに身を縮めた。
……この檻に入れられてからもう一週間は経つ。
近頃は外界から冥王の振る舞いに苦言が呈されていた。それも理由の一つとして伝えたのだが、逆効果だった。
生かされてる身で出過ぎたことをしたのは確かだ。けど“彼”に何も言えないままここに閉じ込められてしまったこと、それだけが心残りと言える。
やっと目にした光だったのに、もう二度と見ることができないなんて。
「アホな主君を持つと苦労するよな」
甲高い靴音と共に、目の前に暖色のランプが差し出された。
「……またそういうことを言って。誰かに聞かれたら大変ですよ」
「良いだろ、事実なんだから」
鍵をあける小気味いい音が響く。岩壁に背を預けたまま、小さな扉が開くのを見ていた。
「俺はこんなところで終わるつもりはないよ。君もだろ?」
扉をくぐり、現れたのはアケミだった。
「宴は貪婪を象徴する寓意ってな」
鍵をちらつかせ、こちらの手をとる。彼は上着を脱ぐと、それを俺の肩に乗せた。
「鍵を奪うのは骨が折れたよ。結局冥王様を酒で酔い潰して奪ったんだけど」
「……助けに来てくれたんですか?」
「それ以外何があんの」
頬を膨らまし、アケミは外へ出るよう指示した。
「このことが知られたら、貴方もただじゃ済まない。案内するので、今すぐ地上に逃げてください」
「君は?」
「俺は……帰る場所もないから」
足早に階段を上りながら、声を落とす。しばらく暗がりの中で過ごしていたせいか、アケミが持つランプが眩しくて辛い。
前を走っていたアケミが、息を深く吸って振り返る。
「でも、ここは君の居場所じゃないんだろ」
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