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第14話 ドライブ
男達に緊張が走った。彼らの気難しいボスが屋敷から出てくる。
黒いGUCCIの細身のスーツに黒シャツ姿。白く小さな顔は整いすぎていて、遠くから見ると血の通っていない人形のようだ。
ボスの名前はレイ・リー。
広い石階段をゆっくりと下りてくる。
階段の両脇には亜熱帯植物が生い茂る。レイは左手に鋭いナイフを持っていて、邪魔な葉を乱暴に切りつけながらゆっくりと下りてくる。後ろにはびしょ濡れの日本人ヤクザ。白いシャツ越しに見事な刺青が透けていて、大きな子犬のように弾む足取りで、ピッタリとレイの後ろからついてくる。部下たちが一斉に頭を下げる中、レイと良二がが車に乗り込もうとした時に坊主頭の男が良二にキーを差し出した。シャオ家の男だ。
「若からです。先程の騒ぎのお詫びです」
狂ったような黄色に塗られたAudiのS8、オープンクーペが用意されていた。
「派手だな」と良二が笑ってから「せっかくだし、ドライブしましょうか?」とレイを誘う。
「⋯⋯ブレーキに細工してるかもしれない」
レイは眉を顰めた。あのシャオ家の息子ならばそれぐらいのことはするだろうということはよく知っていた。
「大丈夫ですよ。ほら、乗って!」と良二が運転席に飛び乗った。
昼下がりの香港の冬。太陽がこれでもかというほど明るく輝く。レイは細い肩をすくめると助手席に乗りなら、眩しさにきれいな顔をしかめた。青い空には白い雲。雲はものすごい速さで右から左に流れていく。
「こんな風が強い日にオープンカーかよ。嫌がらせだろ」
「俺、好きですよ。香港の生暖かい風」
良二がエンジンをかけた。
エンジン音を響かせて、高台から街へと下っていく。良二はカーブが続く道を、安全運転すぎるほどの慎重さで走らせる。しばらくすると車に慣れたのか、香港の街中に入った時にはスピードを上げた。やたらクラクションを鳴らす香港市民の間を、慣れた様子で走らせていく。頭上には香港名物の派手で巨大なネオン看板。レイのリーカンパニーの関連企業の名前もある。レイは、ずっと黙っていた。黙って、ときどきチラリと隣の若い男のシャツ越しに見える刺青を見ている。
ボソリと、
「それって龍だろ?」
と聞いた。
「龍の王になれって、遺言なんですよ」
「誰の?」
「祖父です」
「へえ⋯⋯」
宮人家の総裁だった宮人秀平が数ヶ月前に亡くなったことはレイも聞いていた。カリスマ的な求心力を持った男だったらしく、亡くなった後は一時、宮人家は分裂の危機にあったらしい。それをまとめあげたのが、今、レイの隣にいる良二だ。
⋯⋯若すぎるだろ。
レイはまた刺青に視線を投げながら思った。宮人家の組織はここ10年ほどでかなり巨大化している。それをこんなに若い、二十歳そこそこの男がまとめることができるものなのか? 色々と疑問は残る。
「危ないなあ⋯⋯」
バイクと接触しかけても良二の口調は穏やかだった。片手で軽くバイクを避けてみせた。なかなかのハンドルさばきだ。
スポーツカーの中は狭い。レイのすぐ近くに若い男の体があった。ハリのある肌や汗の匂いが、レイに夢の中の男を思い出させた。ふと、「こいつの可能性は?」と自分を拉致って散々抱いたであろう男がこの若い日本人ではないか、と考える。だけどすぐに否定した。もしそうだったら真っ先に見事な刺青を思い出していたはずだ。夢の中でレイを抱く男の肌に刺青はない。
⋯⋯俺を拉致ったのはやはり義母か?
考えているとき、車が信号で止まった。横断歩道を渡っていた派手な格好の数人の男たちが、レイたちの車に興味を持ったらしい。白人と東洋人が混じっている。若く、やたらと鎖をジャラジャラとつけている。チンピラだ。男たちは「ヘイ、ビューティ」とニヤニヤしながら近づいてきた。レイに、「俺の方がでかいぜ」と英語で話しかけてくる。
「失せろ」
広東語で冷たく言う。大抵はこれで何かを察して離れていくのだったけれど、赤毛にそばかすの白人は鈍いらしい。車のドアにもたれて、「見せてやろうか?」と下手くそな広東語で言いながら顔を寄せてきた。
レイはポケットのナイフを掴んだ。男の腕に突き刺す前に良二が動いた。レイの肩をグイと掴むと自分に引き寄せる。それからドスの効いた低い声で、
「触るな」
と英語で言った。
「やる気か⋯⋯」
男たちには仲間がいた。歩道から次々に現れて十数人ほどが車を囲む。レイは薄く笑って、
「どうすんだ?」
自分の肩を抱いている良二に言った。
「どうもしませんよ」とレイの耳元で良二は柔らかい声で言う。それから目つきがいきなり変わった。彫りの深い顔に荒っぽい表情が浮かぶ。「俺の男に触るな」静かな声だった。静かすぎるほどに、低く沈んだ声だった。
「やめろ」と東洋系のスキンヘッドが赤毛の白人を止めた。軽くレイたちに頭を下げる。赤毛も青くなって車から離れた。
良二がアクセルを踏む。いきなりのトップスピードで香港の混雑した道を走り出す。レイは笑い出した。
「いつから俺は、おまえの男になった?」
「こういう時は協力してくれないと⋯⋯」
「ふざけるな」
言いながらも、レイは良二に引き寄せられたままでいる。良二は右手でレイの肩を抱きながら、左手で器用に混んだ道を走らせる。筋肉質の体が濡れたシャツの向こうにあった。シャツ越しに、熱を持ったような赤い龍の目が、レイをじっと睨んでくる。それを睨み返して、
「ほら、青だ」
良二の腕から逃れた。
レイのスマホに側近のヤンから連絡が入った。
「疲れた」とレイが言うと、
「お疲れ様でした、若⋯⋯」ヤンの声が笑った。それから事務的な口調になって、「良二さんを本社ビルにお連れしてください。ミスター村上ももうじきこちらにおいでです」
「俺が連れていくのかよ?」
「⋯⋯お願いします、若」
「ったく」とスマホを胸ポケットに戻す。「本社はそこを右だ」と良二に指示した。
「ホテルで着替えてもいいですか?」
「は?」
「だめならこのままでもいいですけど⋯⋯」
「ったく、わかった! 行けよ」
黄色いスポーツカーは勢いよく左に曲がった。片手でハンドルを切りながら良二が、
「俺の男って、いい響きですね」
嬉しそうな顔をする。
「今度言ったら、刺す」
半ば本気で、レイは言った。
*
「シャワー、浴びてもいいですか?」
「いちいち、俺に聞くな」
レイは窓際に行き、雑多な街並みを見下ろした。良二が泊まっているのは湾側のホテルで、部屋からは市街が見渡せる。高級ホテルではあったがシンプルな部屋で、とても日本の極道のトップが泊まる部屋には思えなかった。
「金、ないのかよ」とレイが聞くと、
「日本人は慎ましいんですよ」
良二は笑って、バスルームに入った。
眼下に広がる街並みの右全方にはかなり古いビル群が集まっている。そろそろ建て直しが必要な地域だ。それにはまず住人を出て行かせなければならず、「悪どい手でも使うか...」とレイがきれいな顔で考えている時、後ろでシャワーの音が聞こえてきた。
「全身?」
ふと、疑問が浮かぶ。
あの滅多にないほど芸術的な刺青は、若い体のどのあたりまで続いているのだろうか。シャツ越しに見えたのは上半身だけだ。腹、腰、そして...。想像がレイの白い頬を熱くする。舌打ちをして、また意識をビル群の開発計画に戻す。しばらくすると、
「くそッ」と呟いて、バスルームに向かった。「俺が覗きかよ⋯⋯」自分を罵るが、足は止まらない。そっとドアを開け、隙間から見る。香港のほとんどの高級ホテルにはバスルームとは別にシャワールームがついている。このホテルにもガラス張りのシャワールームがあった。白く煙る湯気の中に良二の背中が見える。
「すげえ」
レイはドア口にもたれて、腕を組んでじっと見つめた。刺青は背中から尻、そして太ももの半ばまで続いている。鍛え上げた滑らかな体。その上で龍が踊り狂っている。今にも動き出して飛び出してきそうな龍だった。真っ赤な目をしている。レイのところまで飛んできて襲いかかる⋯⋯そんな妄想がレイの頭に浮かぶ。
「チッ」
舌打ちをしたのは、体が反応したからだ。レイはドアを閉めかけた。が、途中で止めた。良二が横を向いたので逞しい体の前方が見えた。シックスパックに鍛えられた腹から下腹部。そこにも青と赤の刺青が続く。そして、ペニス⋯⋯。下腹部から続いたペニスにまでも彫り物が入っていた。
良二は頭から全身が泡だらけで、目を閉じて、やや上を向いて湯を浴びている。手のひらが、滑らかな体に泡を撫でつけ、下腹、ペニス、と下がっていく。エレクトしていなくても十分に大きなそれだった。良二はペニスにたっぷりの泡をつけると、擦る。徐々に立ち上がってきた。大きい。へそ上まで軽く届いている。
レイの手が動き出した。ゆっくりと自分の股間を触る。服の上から撫であげる。すでに十分すぎるほどレイのペニスも高まっていた。
「⋯⋯ン」
声にならない呟きが赤い唇から漏れた時、シャワーが止まった。
レイは慌ててドアを閉め、足早に窓際まで行った。鼓動が速くなっている。細身のジャケットのポケットに両手を入れて、香港のビル群を見下ろした。
「お待たせしてすいません」と良二が近づいてくる気配に振り向くと、腰に白いバスタオルを巻いただけの姿だ。
「服を、着ろ!」
思わず声を荒げた。
良二は苦笑して、「そんなにすぐには着れませんよ」と短い髪をタオルで擦る。それから「服を着ろ、か⋯⋯。あなたにそれを言われるなんて、面白いな」
「なんだよ、それ」
「なんでもありません」とベッド脇のスマホを手に取る。電話が入ったらしい。良二は出ると広東語で話し出した。なかなか上手い。資料によると良二の母親は台湾系らしい。そのせいで話せるのだろうかと思っていると、急に困ったような口調に変わった。「いいですけど⋯⋯、え? それはどうかな⋯⋯」半裸のままでベッドに座る。長い足が開いて、股間が見えそうになる。レイは目を逸らして、また窓の外を見た。
「まあ、スポーツといえばそうですけど⋯⋯、騎乗位が得意なんですか?」笑う。「へえ、それは期待できそうだな。今夜ですか? でもミスター・シャオ、俺は激しいですよ、そんな細腰で大丈夫ですか?」
シャオ? 思わず振り向くと、良二がじっとこっちを見ていた。視線が合う。良二がニヤリと笑った。
「シャオ?」聞くと、濡れた髪を吹きながら頷く。レイは良二に近づくと無言でスマホを取り上げ、切った。
「なにすんですか?」
「シャオ家と取り引きするつもりか?」
「個人的な話ですよ、会社同士じゃない」
「同じことだろ?」
「違いますよ」たくましい肩をすくめる。水滴が青い刺青の上を流れて、銀色に光る。
「同じだ。シャオ家と関わるなら、俺たち李は手を引く」
「そんなことを言われても⋯⋯。あなたが俺を渡したのが原因なんですけど」
確かにそうだ。レイは赤い唇を噛んだ。ふと、毎晩見るエロティックな夢の解決法を思いついた。拉致られようが、凌辱されようが、大したことじゃない。だけど、忘れようにも忘れることができない手や唇、それに激しく築き上げる腰の記憶が腹立たしい。喘ぐ自分自身が許せない。
「おまえで上書きできるかもしれない⋯⋯」
この龍を背負った男の体なら、自分の中にしつこく刻まれた男の影を消せるかもしれない。やる価値はあるのか、ないのか? 冷静に考えて、レイは賭けに出ることにした。いい加減、毎晩のエロティックな夢にも、急に熱く火照る体にもうんざりしていた。
「なんのことです?」
「シャオの代わりに俺が寝てやるってことだよ」
レイは良二の体をベッドに押し倒し、その腰の上にまたがった。
「いいんですか?」仰向けになった良二が真面目な顔になる。
「なにが?」
「⋯⋯俺と寝て後悔しませんか?」
「おまえって、変なヤクザだな。時々、妙に丁寧だよな。なに笑ってんだよ?」
⋯⋯嬉しいんです。
聞こえないほど小さな声で呟いて、若く端正な顔が少し悲しげに笑った。
*
レイは腰にバスタオルを巻いただけの良二の上にまたがって、腹から胸につづく龍の模様をなぞるように指で撫でている。赤い龍の目元までくると、手のひらでゆっくりと愛でた。美しかった。今にも動き出しそうだったし、レイが動くと龍の赤い目もまるでレイを追いかけてくるような気がする。
「この龍って、目が動く? まさかな⋯⋯」
「そういうカラクリ絵なんですよ、睨んでいるでしょう、あなたを?」
「へえ⋯⋯。すごい腕前の刺し師ってわけか」
「中国にも刺青はあるでしょう?」
「あるけど、こういうのは日本独特だと思う」
龍のまわりには花が咲いている。
「この花は?」
「牡丹ですよ」
「へえ⋯⋯」
今度は花を観察していると、良二が笑い出した。体が動いて良二の股間がレイの股間に当たる。レイはそっと体を動かして、それを避けた。
「なにがおかしいんだよ?」
「俺たち、エロくなりませんね」
「悪かったな。あのガキとは違うんでね」
「確かにあの人はエロいな⋯⋯」
「あっちがいいなら、行けよ」良二の腰から下りようとすると、両手でウエストを掴まれた。
「細いな⋯⋯」
「離せ」
「離したらできませんよ。するんでしょ?」
「⋯⋯する」
「じゃあ、脱いで」手をジャケットに伸ばしてくる。レイは振り払った。
「脱がない」
「え?」
「俺は、脱がない」
「⋯⋯いつもそうなんですか? 女性とする時も?」
「そうだ」
「⋯⋯まあ、いいですけど」
笑っている。
「嫌なら⋯⋯」レイが言いかけた時、良二が腰のバスタオルをはだけた。股間にも刺青は続いている。思わすレイは、
「すげえ」
と呟く。
さっき遠目に見た入れ墨が入ったペニス。それが目の前にある。下腹部に牡丹の花が咲き乱れ、その中から挑みかかるような龍。ペニス全体が、龍だ。
「痛くないのかよ⋯⋯」
ペニスへのタトゥーは日本以外では滅多にない。痛くて、それに耐えたれる人間はいないと聞いたことがあった。
「ヤクザなんて我慢比べみたいなもんですから」
「これのおかげで一目置かれるってわけか?」
「まあ、そんなことです」
「トップ取るのも大変だな」
見つめている目の前で、良二のペニスが大きくなっていった。龍もそれに伴って形を変える。カッと目を向いて、恐ろしげな顔になっていく。
「⋯⋯ッ」
ピッタリとした細身のスーツの中でレイのペニスも固くなり始めた。痛い。
「ここは開放しましょう」
笑いながら、良二が手を伸ばしてくる。
「触んな」とレイは手を払ったけれど、その左手が強い力で捕まった。
「まだ傷が塞がってないじゃないですか、包帯、巻かないとダメですよ」
「触んな!」振り払おうとしたけれど、良二の力は強い、そのまま両手首を片手で押さえられて、もう片手でチャックを下ろされた。
「やめろ」
「出すだけですよ。ここだけは出さないと、なにやってるかわかんないでしょ、俺たち」
駄々っ子にでも言うような口調で話しかけてくる。レイのペニスが外に出た。すでにかなり高まって、先から透明の液が溢れている。
「気持ちいいことをしましょう。リラックスしてください」
良二が赤い目の龍が踊る自分のペニスと、レイの薄桃色のペニスを重ねた。
「ここも可愛いですね」
「殺すぞ」
「ナイフはなしでお願いします」
レイがナイフを出したので、良二は両手で首を守った。枕の横のマットレスにレイは鋭いナイフを突き刺す。良二が「危ないなあ」と呟いて、ナイフを抜くと壁に投げた。見事に飛んで壁に刺さる。
「俺のナイフ⋯⋯」
「怖いから、持たないでください」
「怖いもんなんか、あるのかよ」
レイは両手を良二の顔の横につき、上から覆い被さるようにして、自分のペニスを良二のそれに擦りつける。
気持ちよかった。
喘ぎたくなるほどに⋯⋯。
セックスなんて大嫌いだったけれど、あの悪夢を上書きするためだと思えば我慢ができる。この生意気な日本人の若いヤクザを、それに利用してやるのもなんだか気分がいい。
そう冷静に決めたはずのセックスだった。だけど、今、黒いシャツのボタンすらひとつも外さずに服を着たままのレイは、そこだけ露出させたペニスをリズムカルに、龍が彫られた太く固いペニスに夢中でこすりつけている。
⋯⋯龍とまぐあう。
その想像がひどく気持ちを昂らせた。閉じていた大きな目を開くと、下から見上げてくる良二と視線が絡む。
「あ?」
腰を動かしながら睨んだ。
「綺麗ですね」
「ざけんな」
「綺麗です、すごく」
いきなり力強い両腕が腰を掴んでくる。そのまま揺すられた。お互いの鬱血したペニスが激しく擦れあう。
「⋯⋯ア」
とレイの唇から吐息が漏れる。支えていた両腕から力が抜けて、良二の上に倒れ込んだ。良二はレイの腰を揺する手を緩めない。下半身からも力が抜けて、されるがままにレイは揺すられた。喘ぎ声が聞こえたが、それが自分の声だとわかってギョッとした時、甘く苦しい刺激が腰から頭に走り抜けて、イった。息が止まるような瞬間の後、ぐったりと良二の、龍が睨む胸の上に白い頬をつける。そのまま荒い息を吐く。
「大丈夫ですか?」
良二の問いに応える力も残っていない。こんなに激しくイったことはなかった。いつもはもっとそっけなく終わる。冷めた頭のSEXしか経験がなかった。そういうものだと思っていた。こんな、終わった後に全身から力が抜けて声も出ないような状態になったことは、今までにない。
レイのジャケットの内ポケットでスマホが鳴った。取り出す力もなく呼吸を整えていると、体の下にいる良二がレイの服を探ってスマホを取り出す。
「俺です、宮人です。⋯⋯ええ、いらっしゃいますけど、今、ちょっと⋯⋯。わかりました、お伝えします。それから俺たち、ちょっと遅れます」と言って切る。
やっと声を出せるようになったレイは、良二の胸の上で龍の赤い目を見つめながら、
「ヤンか?」
「そうです」
「遅れるって、なんだよ」
掠れた声で聞く。
良二が、二十代前半の男とは思えないほど落ち着いた低い声で、
「次は俺の番でしょう?」
囁いた。
レイの腰に、ズンと甘く重い刺激が走った。
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