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第15話
ケーキを食べ、紅茶を飲みながら課題を進める。
思ったより早く終わったけど、カイもまだ戻らないので数学の問題集をやり始めた。
・・・あ、ここわかんないな・・・しまった、参考書持ってきてないや・・・んー・・・とりあえず飛ばして次の問題やろ・・・。
カリカリと、俺が数式を書き込む音だけが聞こえる。
シグマは完全に気配を消してるし、この部屋は防音なのか外の音も聞こえない。
集中は出来るけど、やっぱり家の書斎の方が勉強しやすいな・・・。
・・・カイも、いないし。
まだ数日しか一緒にいないのに、傍に居ないと落ち着かないなんて・・・。
「お待たせ璃都」
「・・・あっ、カイ!お帰りっ」
「・・・っ!」
「・・・え、どうしたの?」
カイが俺の顔を見て立ち尽くした。
なんだろ、何か付いてるのかな・・・。
「俺が居なくて寂しかった?会えて嬉しいの?今の笑顔すっごく可愛かったよ?ねえ俺の事好き?」
「なっ!?なに言ってんのっ?そんなんじゃないしっ!」
恥ずっ!!
笑顔ってなに!?
俺そんな顔してた?
「カイザル様、璃都様はケーキをお召し上がりの際もカイザル様の事を想っていらっしゃいました。こちら、証拠動画です」
「ちょ・・・っ!?」
「良くやったシグマ」
シグマからスマホを渡され、早速動画を再生するカイ。
止めようとしたけど身長差によって手が届かず、カイはしっかり動画を見てから俺をぎゅうっと抱きしめた。
「俺はケーキより璃都が好きだな。今すぐ食べちゃいたい」
「会社で変な事言わないっ!」
「ふふ、急いで帰ろう」
抱き上げられそうになったのを断固拒否して、なんとか車までは自分の脚で歩かせてもらえた。
ただし、車中ではカイの膝上に座らされたけど・・・。
「可愛い・・・俺の璃都。待たせてごめんね、寂しかったんだね。お家 に帰ったらいっぱい愛してあげる・・・」
「も、いいからっ、べ、別に寂しくなんか、なか・・・んぅっ」
頼むからスイッチ切って!
明日も学校なんだから!
「そ、そうだ、相談・・・お願いしたい事があって・・・」
「お願い?なあに?俺と離れる以外のお願いなら何でも聞いてあげる」
しっかり防衛線を引かれたけど、お願いは聞いてくれるみたいだ。
「あの・・・その・・・だ、大学、進学って・・・しても、いい?」
俺の言葉に、一瞬片耳を倒してきょとん、としたカイ。
え、なにその表情・・・か、かわい・・・。
「もちろん。今志望してる大学の薬学部ならキャンパスも家 から近いし、いいよ」
「え、ほ、ほんと?あ、ちゃんと奨学金も・・・」
「学費を俺が出すのが条件」
やっぱり、学費出してくれるんだ・・・。
「・・・ぁ、ぅ、・・・いい、の?」
「ああ。俺に依存して、俺なしじゃ生きられない、可愛い俺のダメ璃都になってもらうからね」
「だめりと・・・」
大学に行くダメ人間て・・・。
でも・・・。
「ぁ・・・ありがと・・・嬉しい・・・俺、頑張って勉強するっ!」
「無理はしない事。それと、俺と一緒の時間は目一杯甘える事。いいね?」
「ぅん・・・うんっ、わかった!それも頑張る!」
甘えるって、やり方よくわからないけど、今も既に色々甘えてると思うし。
学費も、生活費も、家も、送り迎えも、ご飯も・・・。
俺、もうちゃんとダメ人間になってるんじゃないかな・・・。
───────
「ねえ、俺の体操服とジャージって、ある?」
昨日はなんとかエッチせずに済んだ。
なぜなら今日は体育があるから、エッチ断固拒否。
なんとかキスだけで許してもらったんだけど・・・。
「ちゃんとあるよ。でも体育って・・・着替えはどうしてるの?」
「ん?教室で、男子と女子別れて着替えてるよ」
「そう・・・俺以外の男に肌を見せる気なんだ?」
すう・・・っと、カイの表情が暗くなる。
「い、言い方・・・授業なんだから。それにクラスメイトだよ?」
全裸になるわけじゃないし・・・あ、ちょっと待って・・・。
制服に着替える前に、クローゼットの姿見で恐るおそる自分の身体を確認してみる。
「・・・これじゃ教室で着替えられない」
首、肩、胸、腹、二の腕にも・・・明らかにそーゆう事したってわかる痕が・・・。
きっと脚にも・・・。
噛み痕に絆創膏したとしても、大量のキスマークはどうしようもない・・・。
「背中にもあるよ」
「変態オオカミっ!」
「体育は体調不良って事で、教室で自習かな」
「ぅう・・・はぁ、まぁいっか。体育苦手だし」
授業をサボるようになるなんて・・・カイのせいで不良生徒になっちゃうよ・・・。
「学校には連絡入れておくから」
「・・・ありがと。ねえ、絆創膏は?」
首と頸 の噛み痕を隠すため、貼ってもらいたいんだけど。
「もう痛くないでしょ?かぶれちゃうから、ここはもう貼らなくて大丈夫」
「え、大丈夫じゃない。制服じゃ隠れないから絆創膏貼って欲し・・・」
「璃都には番 がいるってみんなもう知ってるだろうし、隠す必要はないよね」
あるよ!
恥ずかしいじゃん!
自分で絆創膏を探そうとしたけど、カイに制服を着せられてしまい、片手で抱き上げられ車まで連れて行かれてしまった。
うう・・・このまま学校連れてかれちゃう・・・。
「おはようございますカイザル様、璃都様」
「おはようシグマ」
「おはようござ・・・おはよ、シグマ」
「はい、おはようございます璃都様」
挨拶すら敬語は許さぬというオーラを感じて、慌てて言い直したら「よくできました」って顔でにこっとするシグマ。
な・・・慣れない・・・けど慣れなきゃ・・・そのうち怒られそう・・・。
昨夜カイに聞いたけど、シグマはルプス家に仕える執事の家系で、シェパードの獣人だとか。
忠誠心高そう・・・。
「シートベルトしようね」
「だ、だから、自分で出来るってば」
昨日と同じく8時15分に学校到着。
手前で停めてと頼んだけど、運転手さんにもスルーされロータリーに入ってしまった。
他の生徒たちの視線にさらされながら、イケメンオオカミ獣人に手を引かれ降車し、ハグとキスを甘んじて受ける。
・・・諦める・・・諦めるんだ俺・・・もう手遅れだ・・・せめて世話してくれるカイの好きにさせて・・・そう、これは・・・恩返しみたいなもんだ・・・。
「今日もお昼は一緒に食べに行こう」
「ん、3限終わったらすぐ下りてくる」
カイに見送られ校舎に入り、教室の自席へ。
待ってましたと言わんばかりにクラスメイトが寄って来る。
昨日より人数が増えたな・・・。
「ラブラブだね〜」
「今日も昼は外食べに行くのか?」
「なーなー、どこで出会ったんだ?馴れ初めは?」
「うわ、それ噛み痕?愛されてるわねぇ」
あー、やっぱ首の噛み痕つっこまれた・・・。
恥ず・・・。
「うん、今日も外食べに行ってくる。先週の金曜に公園で・・・初めて会ったのは12年前。噛み痕 は・・・見なかった事にして・・・」
あーもー、早く先生来てー・・・。
「でもさぁ、橘花 くん美人で頭良いし、やっぱ獣人・・・しかもエリートの番ってなるとレベル高いよねぇ」
「・・・え?」
「だよなー、やっぱそうか、って思ったよなー」
「・・・は?」
ちょっとなに言ってるかわかんない。
美人って誰の話だよ・・・。
頭は・・・特別奨学金もらうために真面目に勉強してただけで・・・。
「イケメン獣人と美人でめっちゃお似合いだよね!2人でいるの見てていいなーって思った!」
「なあ、結婚とかすんの?」
「・・・う」
そうだった・・・明後日・・・婚姻届・・・。
「ぅぁあ・・・」
「ど、どしたの?」
「頭、痛いのか?」
「・・・なんでも・・・なぃ」
・・・別に、わざわざクラスメイトに言う必要はない、よな。
入籍する、なんて・・・。
はぁ────・・・。
木曜が来るの・・・恐い・・・。
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