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第16話*

書いちゃった・・・(つい)に書いてしまった・・・。 今まで、何度となく書いてきた字だけど、一番緊張した・・・。 橘花(たちばな)璃都(りと)。 自分の名前を・・・婚姻届に・・・書いてしまった・・・。 気付けば木曜の朝。 カイの作った朝食を食べて、リビングでカイが用意していた婚姻届に記名した。 ・・・俺の名前以外、全部記入済みだったんだけど。 「書けた?」 「・・・ん・・・ぅん」 「ちょーだい」 「・・・ぅん」 今日これから、区役所に、出しに行くんだ・・・。 俺、結婚しちゃうのか・・・。 「じゃあ、行こうか、橘花璃都くん」 「なんでフルネーム・・・?」 「これ出したら、璃都・ルプスになるんだから、今のうちに呼んでおこうかと」 「────っ」 そ・・・そうなる、のか・・・。 え・・・ちょっと・・・待って・・・。 「それって、明日から記名する時は・・・」 「璃都・ルプスと書くんだよ。あ、ルプスの綴りはLupusね」 「────っ」 待って、来週から中間考査始まるんだけど? 答案用紙に、ルプスって、書くの・・・? えー・・・。 「が・・・学校では、橘花のままで・・・」 「だめ。学校にも申請は出すから、明日から先生からもルプスくんって呼ばれるよ」 「そ・・・な・・・」 問答無用で結婚が知れ渡るじゃん。 恥ずかしい・・・! またクラスメイトに質問攻めにされる・・・。 「ほらほら行くよ、橘花璃都くん」 「・・・はぁい」 カイの運転で区役所へ行き、あっさりと婚姻届は提出されてしまった。 ・・・実感が()かない。 「次は指輪を取りに行くよ、璃都・ルプスくん」 「フルネームやめて・・・」 「実感湧かないって顔してたから」 「なんでわかるかな・・・」 妙に勘がいいんだよな、このストーカーオオカミ・・・。 この前と同じパーキングに車を停め、指輪を頼んだ宝飾店へ。 カイが指輪のケースを受け取り、開けて中を確かめる。 それをスーツの内ポケットに入れて、俺の手を引き店を出た。 すぐ()めないんだ、と思いながらカイに手を引かれるがまま付いていく。 パーキングに戻り、車に乗って(しばら)く走ったかと思ったら、有名な高級ホテルの駐車場に入った。 「レストランのランチを予約してるんだ」 「そ、そぉ・・・なんだ・・・」 どうりで、着せられた服がジーンズじゃなかった訳だ。 カイもスーツだし。 景色のいい広い個室に通され、カイにエスコートされイスに座る。 俺の横に立ったカイは、内ポケットからケースを取り出してテーブルに置いた。 開けると、俺たちが選んだダイヤが光る指輪が2つ。 カイが、ケースからカナリーイエローダイヤが埋め込まれた指輪を手に取り、(ひざまづ)いて俺の左手を取る。 「これで璃都は、完全に俺のモノだ」 俺の左手の薬指に、カイの手で、指輪が嵌められた。 ぶわ・・・っと、実感みたいなのが湧いてくる。 ああ、俺、カイと結婚したんだ・・・。 「俺にも嵌めて?」 「・・・ぁ、うん」 コニャックダイヤが埋め込まれた指輪をケースから取り、カイの左手の薬指に嵌める。 そのまま、カイが俺の左手を引いて、薬指の指輪にキスをした。 「愛してる、璃都。死んでも放さない」 「・・・こわ・・・けど・・・ょ、よろしく、お願いします・・・」 それからコースランチを食べたけど、俺は色々いっぱいいっぱいで・・・。 美味しかったはずなのに、味がよくわからなかった。 ─────── 「んん・・・はっ、ん・・・んぅっ」 「璃都・・・璃都・・・っ」 ランチを食べたホテルのスイートルーム。 部屋に入るなり、壁に押し付けられながらキスされる。 カイは右手で俺の両手首を掴んで頭の上に固定し、左手で腰をキツく抱き寄せた。 そのせいで、俺はなんとか爪先立ちで耐えている状態。 「んぁ・・・ゃら・・・っ、んむ・・・も・・・たて・・・な・・・っ」 噛み付くようなキスに、俺の足が浮いてしまう。 これやだ、苦しい・・・。 俺の(まなじり)に涙が滲み、涎が喉元を伝うと、(ようや)く両手が解放され、抱き上げられてベッドへ運ばれた。 「璃都、脱いで。俺がやったら破きそうだから」 「ふぇ・・・ゎか・・・た・・・」 破かれたら帰る時困る・・・。 言われた通り、自分で服を脱いでいく。 カイも、俺から眼を離さないまま、性急に服を脱いだ。 「ひ、ゃ・・・んぁ・・・っ!」 腰を抱えられた状態で舌を捩じ込まれ、唾液を(まぶ)された。 昨夜もソコにカイを受け入れていたので、それだけでひくひくと求めてしまう。 「ぁ・・・うぅ・・・ゔあ・・・ぁっ!」 ぐっと脚を開かされ、鎖骨に噛み付かれながら、一気に奥まで(つらぬ)かれた。 「璃都・・・愛してる・・・俺の璃都・・・っ!」 「あっ、あ・・・んゔぅっ・・・っ」 ごちゅごちゅと奥を突かれて、首に噛み付いてくるカイの肩にしがみ付く。 待って、いきなり激し過ぎ・・・。 「か、いぃ・・・っ、も・・・ゅく、りぃ・・・っ」 「ん・・・っ、そう、したいんだけど・・・っ、璃都が可愛くて・・・っ」 ゆっくりするつもりは、あるんだ? ほんとかな・・・と疑いそうになったら、カイが動きを止め、俺を抱き上げた。 向かい合わせのまま、カイの胡座を跨いだ状態でぎゅっと抱きしめられる。 これ、体重で深く繋がるんだけど・・・。  「璃都、そろそろ言ってくれてもいいんじゃない?」 「んっ、な・・・にぉ?」 「俺の事、好きって言って」 そう言えば、ちゃんと好きになって、好きって言いたい、とか言ったような・・・。 でもその後カイが、それはもう好きなんだと思うって言ってご機嫌になって・・・。 だから・・・あ、俺、まだ言ってなかった・・・。 「いっ・・・今ぁ?」 「結婚したんだよ?ちゃんと璃都の口から言って欲しい」 「ぅぅ・・・」 こ、こんな状態で? 言ったら・・・う、動いて、くれる・・・? 「・・・す・・・すき・・・っ」 「誰を?」 そんなの、決まってるじゃん。 「かぃ・・・すきぃ・・・っ、だからぁ・・・も、動いてぇ・・・っ」 「そんな可愛いおねだりまでして・・・また立てなくなっても文句言わないでね・・・っ!」 「んぁあ"────っ!」 奥の、更に奥を抉られて、カイの肩に縋り付きながらイってしまう。 痙攣するナカを激しく犯され、ぐちゃぐちゃになりながら、俺は何度も「好き」って言わされ続けた。 ─────── 「改めて、お誕生日おめでとう、璃都」 「・・・ぁ、ありがと」 何時間、経ったんだろ。 本当に、今度こそ死ぬかと思った・・・。 何度も気絶したし・・・。 最後に気絶した後、目が覚めたらバスルームだった。 今はバスローブ姿で、ソファに座ったカイの膝上に座ってる。 目の前のテーブルには、見た事もないような豪華なバースデーケーキ。 1と8の形をしたロウソクも立ててある。 「吹き消して、願い事して?」 「願い事?」 なんだろう・・・願い事・・・なにかあるかな・・・願い・・・。 俺の一番の願いは・・・家族が欲しい、だったけど・・・叶ったし。 大学進学も・・・カイが許してくれたし・・・。 「・・・あれ、俺、願い事ない・・・」 「本当に無欲だね。少し心配だな・・・」 カイが、ちょっとがっかりしたような顔をした。 違う、無欲なんかじゃない。 願いがなかったわけじゃなくて・・・。 「全部カイが叶えてくれたから、今はないのっ」 「俺が?・・・それって、どんな願い事だったの?」 「・・・か・・・家族が・・・欲しい・・・ぁ、あと、大学進学・・・」 カイが俺を抱きしめる腕がキツくなった。 ちょっと苦しいけど、この感じにも慣れたと言うか・・・嫌いじゃないと言うか・・・。 「じゃあ、代わりに俺が願い事するから、璃都が吹き消して」 「ん?いいけど・・・」 ふう・・・っとロウソクを吹き消す。 ・・・俺、バースデーケーキのロウソクを吹き消すの、初めてだ。 「・・・で、なにをお願いしたの?」 「・・・聞きたい?」 「・・・どちらとも言えない」 なんか恐い事願ってそうな気が・・・。 「璃都の全てが俺のモノであり続けますように」 「俺の願い事の権利返してっ!」 「ふはっ、もう使っちゃったよ」 それから、カイとケーキを食べさせ合い、家族と過ごす初めての誕生日が()けていった。

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