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第18話*
カイとの生活にも慣れてきた頃、俺はたぶん完全に油断していたんだと思う。
5限の移動教室から戻って来る途中、ペンケースを忘れてきた事に気が付いて、急いで取りに行った。
「あったぁ・・・」
ペンケースを持って教室に戻ろうとしたら、次にここを使う他クラスの生徒たちが入って来てしまった。
「あれ?どうしたの?」
「ゎ、忘れ物を取りに・・・」
「あっ!もしかして君、獣人の番の子?」
「まじか!ほんとだ美人・・・うわ、痛そー」
1人が俺の首の噛み痕を見て、手を伸ばしてくる。
いつも近くにいるクラスメイトたちは、俺の相手がハイイロオオカミだって知ってるから、俺には触らないよう気を遣ってくれていた。
だから、俺は自分から触らないようにだけしていて、触られないように気を付ける必要がなかったんだ。
気を付けてなきゃいけなかったのに。
「・・・あっ!?」
「あ、ごめん、痛かった?」
「おい、勝手に触るとだめなんじゃないか?だって相手って・・・」
「・・・ぉ・・・オオカミです・・・」
彼らは平謝りしてくれたけど、正直俺はそれどころじゃなかった。
いい子の条件・・・カイ以外に触らせない触らない・・・いい子にしなかったらお仕置き・・・触られてたら匂いでわかる・・・。
そんな言葉が頭の中をぐるぐるぐるぐる・・・。
「どぉ・・・しよぉ・・・」
ちょっと指先が触れただけ。
わざとじゃない。
相手も謝ってくれた。
そんな言い訳があのストーカーオオカミに通用するのか。
・・・不安しかない。
「と、とりあえず、石鹸で洗ったら匂いとかわかんないよね・・・」
トイレに行って、石鹸を手で泡立てて首を洗い、濡らして絞ったハンドタオルで拭った。
これできっと大丈夫、と鏡の中の自分に言い聞かせながら。
「気付かれませんように・・・」
6限も終わり、不安を拭いきれないまま教室を出る。
今日は仕事が早く終わるから、俺の学校が終わったらそのまま帰るって言ってた。
いつも通りロータリーに停まっている外車と、車の前に立って待っているカイ。
大丈夫・・・絶対大丈夫・・・そう、触られたりしなかった・・・そんな事起こらなかった・・・俺が忘れればなかった事になる・・・!
「璃都 」
「ただいま、カイ」
いつも通りぎゅっとされ、頬にちゅっとキスされる。
・・・よし、いつも通り。
「今日はもう帰るんだよね?」
「・・・そうだね、お家 に帰ろうか」
車に乗り込み、カイにシートベルトをしてもらう。
これも慣れた。
カイが迎えに来られない時は自分でするけど、カイがやりたがる事はやってもらうようにしてる。
「今日はどうだった?」
「んぇ?・・・ぃつも通り、だよ?」
「・・・そう」
なんでそんな事聞くの・・・いや、たまに聞いてくる事あったし・・・なにか勘付いてとかではないはず・・・。
「璃都」
「・・・なあに?」
「黙っていればバレないと思ってる?」
優しい笑顔。
なのに、目が笑ってない。
終わった・・・。
「ご、ごめん、なさぃ・・・」
「うん。言い訳は聞いてあげる」
言い訳・・・聞くだけって事は・・・許してはくれないって事・・・?
「き、教室に、ペンケース忘れて・・・取りに行ったら、他のクラスの人が来て・・・」
「それで?」
恐い・・・本気で恐い・・・。
「く、首の、噛み痕が、痛そうって・・・し、心配してくれたみたいで・・・」
「どこ、触らせたの?」
触らせたって、俺が触らせた訳じゃないのに。
でも、余計な事言わない方がいいかも・・・。
「こ・・・ここ、だけど、わざとじゃなくて、あ、謝ってくれたし、だから・・・っ」
「石鹸の匂い」
・・・あ、俺、余計な事したのかも。
「ここ、ね」
「・・・い"っ!」
がぶり、と噛み付かれ、治りかけた痕の上に新しい傷が付く。
噛んだ傷痕を大きな舌がなぞった。
「・・・ん、ぅ・・・ぃうっ」
「璃都は痛くされるの好き?ここ、反応してるよ」
違う、痛いのなんて好きじゃない。
それなのに、なんで身体が反応してしまうのか、自分でもわからない。
「家に着いた。おいで璃都」
車を降りて、カイに手を引かれながら家に入る。
シグマは何も言わず、頭を下げて俺たちを見送った。
カイに手を引かれるまま、寝室に連れてこられる。
俺はカイの顔が見られなくて、ずっと足元を見てた。
「約束通り、お仕置きだね」
「・・・ゎ、わざとじゃな・・・」
「石鹸で匂いを消そうとしたのは故意だよね」
「・・・ご・・・めん、なさぃ」
ああ、俺、余計な事した。
隠そうとか、なかった事にしようとか、そんな事考えないで、自分からちゃんと言っていれば・・・。
なんで、カイに嘘をつこうなんて、思ったんだろう・・・。
「服を全て脱いで、ベッドに上がりなさい」
冷たい声で命令されて、手が震える。
ブレザー、カーディガン、ネクタイ、ズボンと脱いでから、ワイシャツのボタンを外していく。
どうしよ、うまく外れない。
カイはスーツのジャケットだけ脱いで、ワイシャツの袖を捲 りながら俺の事見下ろしてる。
やっとワイシャツを脱いで、下着も下ろして、言われた通りベッドに上がって座り込んだ。
「ここに、四つん這いになりなさい。こっちにお尻向けて」
ベッドの横に立ったまま、自分の前を指差すカイ。
俺は言われた通り、カイの前で四つん這いになる。
「・・・ぅぅ」
カイはスーツ着たままなのに、俺だけ裸でベッドの上でこんな格好させられるなんて・・・泣きそう・・・。
「痛いのが好きな璃都に、これがちゃんとお仕置きになるといいけど」
そう言って、カイが掌 を振り下ろした。
「ひぎゅ・・・っ!?」
ばちん、という音と共に、お尻に焼けるような痛みが奔 る。
・・・うそ、これ、まさか・・・。
ばちん。
「い"ゔっ!」
思わず両手でお尻を庇う。
痛い、これ、ほんとに痛い!
そもそも痛いの好きとか、そんな訳ないじゃん!
「璃都、手をどけなさい」
「ゃ・・・ごめ、なさ・・・も、やだぁ・・・っ」
「まったく」
もう終わりにしてくれるかも・・・と思ったのも束の間、両手首を掴まれ顔の前で一纏めにされ、カイのネクタイでぎゅっと縛られてしまった。
「ひ・・・」
俯 せにされ、腰を高く上げさせられて、再び容赦なくお尻を打たれる。
「ぎっ・・・ゃあっ、ごめんなさ・・・い"ぁっ!」
ばちん、ばちん。
手加減なく打たれて、お尻がビリビリと熱い。
両手も縛られて、庇う事も逃げる事も出来ない。
「・・・ぅゔ・・・ふぇ・・・め、なさ・・・ぅぇっ」
「何が悪かったかわかってる?」
「ひっ・・・ぅ、かく、そ・・・したぁ・・・っ、せっけ・・・でぇ・・・っ」
「隠して、黙っていればバレないなんて考えるなら、このままベッドに鎖で繋いで二度と外には出さないよ」
ばちん。
「やぁあっ!ごめんなさいっ!ふぇぇ・・・っ」
「あーあ、痛そう。こんなに赤くなっちゃって」
「んぅゔ・・・っ」
じんじんと痛むお尻をべろり、と舐められた。
カイの声が、いつもの感じに戻った気がして、少しほっとしたら、打たれるのとは違う痛みに襲われる。
「い"・・・っ!?」
お尻噛まれた・・・。
まだ許してくれない・・・。
「ねえ、璃都は誰のモノ?」
「・・・っ、か、カイ!カイのものっ!」
「そうだよね。璃都は俺のモノだから、璃都に触れていいのは俺だけだ・・・っ!」
「ぅあ"────っ!!」
ずぶん、と突き刺すような痛みが挿入された。
痛い・・・息が・・・出来ない・・・。
「気絶しないで、ちゃんと覚えて、璃都」
「・・・ゔ・・・んぅ"・・・っ」
「璃都は誰のモノ?」
「・・・ふぅ"・・・ぅ・・・か・・・ぃ・・・カイ・・・のぉ・・・っ」
「いい子」
そこからは、殆 ど意識がないまま、カイが満足するまで後ろから犯され続けた。
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