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第26話
「ふぁー・・・外のお風呂って・・・きもちぃー・・・」
「璃都 、抱っこさせてよ」
「やだぁー・・・」
「カイザル、せっかく広い露天風呂なんだから、好きに入らせてあげなよ」
「お前、ヒトの事言えんの?俺から離れろ」
初めての露天風呂。
開放感があって、すっごく気持ちいい。
カイがいつもみたいに背もたれになろうとしてきたけど、りっくんの言う通り自由に入らせてもらう。
ただ、りっくんは玲央 にべったりくっついてるけど・・・。
「璃都は逆上 せやすいから傍で見てないといけないんだ。お前こそ玲央くんを解放してやれ」
「さすがに抱っこはしてないぞ。くっついてるだけー」
「鬱陶しい・・・」
やっぱりこの3人、仲良さそうだな。
俺・・・混ざっていいの、かな・・・。
「璃都?どうしたの?具合悪い?」
「んぇ?いや、なんともないよ。逆上せてもない」
ちょっと考え事しただけで心配性オオカミが反応してしまう。
今は温泉を満喫しよ・・・。
「やっぱり抱っこしようね」
「ちょっ!?カイ、やだってばっ」
りっくんと玲央の前でやめて、恥ずかしいっ!
「璃都ちゃん、やっぱり抱っこされてやって。カイザル幸せそうだし」
「カイザルさん、璃都探したり囲い込む準備したり、必死だったからな。笑顔なんて見せた事なかったし」
「・・・え?」
カイ、よく笑う方だよ?
たまに目が笑ってない時もあるけど・・・。
「璃都がもっと甘えてくれたら、もっともっと幸せなんだけど?」
後ろから俺を抱きしめて、カイが言った。
すりすりしてくる・・・甘えんぼなのカイの方じゃん。
「金銭面も生活面もカイに頼りきりなのに、これ以上どう甘えろと?」
「璃都ちゃん、それは甘えてるんじゃない、カイに依存するように仕向けられてるだけ。甘えるってゆーのはね・・・」
「シド、お前は黙ってろ」
「合格発表の日は上手に甘えてくれたのに。後は眠い時と事後で立てない時に・・・」
「黙って!!」
なに暴露してくれちゃってんの!?
恥ずか死ぬ!!
「璃都ちゃん甘えベタかー。玲央も最初はそうだったよねー」
「お前も黙れ」
最初は・・・って事は、今は違うの?
え、玲央、りっくんに甘えたりするの?
「玲央、どんな風に甘え・・・」
「聞くな」
───────
浴衣に着替え、和室でのんびり。
俺はオレンジジュース、玲央はアイスティー、カイとりっくんは・・・ビール。
「ねえ、飲み過ぎないでよ」
「ふふ、ビールなら大丈夫だよ。酔っても璃都が居るし」
「俺で酔いを醒まそうとしないで」
それが一番嫌なんだってば。
りっくんと玲央が居るのに、あんな事になったら大変だ・・・。
「璃都ちゃん、僕がセーブさせるから任せといて」
いやいや、貴方のせいでカイが酔っ払いオオカミになったんですけど?
「りっくん、ちょっと信用できない」
「ええー?」
夕食が運ばれてくるまでにはまだ時間があるらしく、玲央がトランプを取り出した。
先ずはババ抜き。
「璃都、顔に出てるよ」
「ええっ?」
「ああ、これがババか」
「玲央、わかってるなら取ってあげなよ」
負けた・・・。
次はダウト。
「だうとっ」
「もー、璃都ちゃんいい加減僕を信じてよ。ほら、また嘘じゃなかったでしょー?」
「あーあ、また璃都の手札が増えたな」
「おいリシド、俺の璃都を泣かせるな」
また負けた・・・。
泣いてない・・・まだ、泣いてない・・・っ。
「璃都、次は神経衰弱にしようか」
「ぅん・・・」
玲央がカードをきって、テーブルに満遍なく並べてくれる。
りっくんがひっくり返したカードは、クローバーの6とダイヤの3。
玲央がひっくり返したのが、ハートのエースとダイヤのキング。
カイは、ダイヤの7とクローバーのクイーン。
俺は、ハートのクイーンとクローバーのクイーン、クラブのエースとハートのエース、クラブの6とクローバーの6、ハートのキングとダイヤのキング・・・。
「ちょ、璃都ちゃん、記憶力すご・・・」
「俺の璃都は頭がいいんだ。だからもう勉強なんてしないで俺だけ構ってくれればいいのに」
「これ負けたやつはペナルティにしよう。璃都、何にする?」
ペナルティ?
俺、多分このゲーム得意だから負けないだろうし、何にしようかな・・・。
「んー・・・語尾ににゃん付けて喋る?」
「璃都、勝ち確だからって・・・」
「せめてわんにしてよー」
「シド負けるだろうけど、語尾ににゃん・・・笑えるけどウザいな」
結局、りっくんが負けた。
それから、りっくん以外の3人でジジ抜きして、負けた玲央は語尾にぴょん。
俺とカイでスピードやって、負けた俺がお嬢様言葉。
カイだけ何もないのは不公平なので、語尾にわん。
「わー、美味しそーにゃん!」
「お前・・・旅館の人の前で、よく平気で喋ったわん」
「語尾守らなかった時の罰ゲームが恐いからぴょん」
「・・・ふ・・・くふ・・・っ、ぉ、オモシロ過ぎ・・・ですわ・・・っ」
ところで、語尾守らなかった時の罰ゲームとは?
俺、聞いてないんだけど?
「ええと、罰ゲームとは、なんですの?」
「璃都ちゃん美人だから、お嬢様言葉が似合うにゃん」
「お黙り」
「璃都、俺の茶碗蒸しも食べるわん?」
「頂きますわ。天ぷら食べきれないので、カイが召し上がってくださいませ。あとご飯も」
「璃都は少食だぴょん」
「前よりたくさん食べるようになりましたのよ・・・って、ですから、罰ゲームってなんですの?」
食事しながら、言葉遣いに気を遣いつつ、罰ゲームについて質問してもはぐらかされる。
もしかして、決めてないんじゃ・・・?
「璃都、卵が好きぴょん?俺の卵焼きも食うぴょん」
カイに卵焼きをもらっているのを見て、玲央も1つくれた。
「よろしいんですの?頂きますわ」
「卵って、鶏卵だけじゃなく、魚卵もにゃん?」
りっくん、カイが俺の小鉢に自分の分の数の子を入れてるの見てたんだな。
「数の子と子持ちししゃも・・・あと子持ちガレイの煮付けは好きですわ。いくらはちょっと苦手ですの」
さっきも、トッピングのいくらを何も言わずにカイが食べてくれたし・・・。
カイ、俺の好き嫌いを完全に把握してるんだよな・・・。
「璃都はキャビアも好きじゃないわん」
あれ、前にちょっと食べさせてもらった時、嫌いとは言わなかったのに。
確かに苦手なんだけど・・・。
「よくおわかりですわね」
「1番好きな卵料理はにゃーに?」
「俺が作ったオムライスわん」
間髪入れず本人でなくカイが答えた。
ちょっと、なに勝手に・・・正解を言うなよ・・・。
「凄い自信ぴょん・・・」
「じゃあ2番目はにゃーに?」
「俺が作ったフレンチトーストわん」
ねえ、俺ってそんなにわかりやすい?
なんでわかるの・・・。
「璃都、これも正解ぴょん?」
「・・・まあ、そうですわね」
「あー、胃袋も掌握されちゃったのにゃん?因みに3番目はにゃーに?」
3番目・・・それは難しい質問だ。
同列3位が3つあるし・・・。
「目玉焼きが乗ったハンバーグとスクランブルエッグと卵サラダが同列3位わん」
「ちょっ、な、なんでわかるのっ!?恐いって!」
「「「璃都アウトー」」」
なに、このハメられた感・・・。
───────
「やだ。むり」
「りぃ、我儘言わないのぉ」
「語尾守らなかった罰ゲームだよー」
「頑張れ璃都ぉ」
罰ゲームは、俺以外の3人が各々考えて紙に書き、裏返した状態で俺が引くという方法で決められた。
俺が引いたのはりっくんが書いた「カイザルが降参するまで誘惑する」。
「みんなしてハメたでしょ・・・」
「「「そぉんな事ないよぉ」」」
「ハモるなっ!」
罰ゲームの内容も最悪だけど、食事中にりっくんと日本酒呑んじゃってたカイが口調からして酔っ払いオオカミになってるのも最悪だ・・・。
カイが降参するような誘惑ってなに?
俺にそんな引き出しはない。
「璃都、一撃必殺教えてやるよ」
「い、いちげき?」
玲央、それで俺がどんな目に遭うかわからない訳じゃないよね?
あと、玲央も日本酒呑んだな。
俺以外みんな酔っ払い・・・。
結局、玲央に教わった方法で挑む事に。
浴衣の裾を少し上げて、カイの胡座を跨いで座り、オオカ耳に唇を寄せる。
「・・・カイの・・・赤ちゃん、欲しぃ」
・・・恥ずっ!!
俺は男子なので妊娠出産なんて出来ないのに!
こんな事言うだけでカイが降参なんて・・・。
「・・・降参です」
「ふぇ?」
「さっすが璃都ちゃーん」
「よくやった璃都」
なぜ?
カイは俺に抱き付いて顔を隠したまま、オオカ耳をぷるぷるさせてる。
・・・可愛い。
カイを降参させた事に満足し、オオカ耳を両手でもふもふ堪能してたら、カイが俺を抱いて立ち上がった。
「落ち着けカイザル、旅館 ではセックスしない約束だろ!」
「・・・車でヤる」
「待ってください!さすがに璃都に負担が大き過ぎます!カイザルさん絶対嫌われますよ!」
え、なに、どうしたの?
りっくんも玲央も、本気で焦ってる?
ここではセックスしない?
車でやる?
なにを?
嘘でしょ?
「く、車でなんて絶対やだあーっ!助けてりっくん玲央ーっ!」
「りぃ、俺以外の名前呼ばないで」
暴れる俺を肩に担ぎ上げるカイ。
それをりっくんと玲央が懸命に宥 め、1時間後、寝室のベッドでなんとか寝かしつける事に成功した。
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