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第30話*

「やっ、だめ、カイ・・・っ」 「璃都(りと)は敏感だね」 「んっ、も・・・ひゃはっ・・・ひぅっ」 玄関ホールにどーんと据えられた240cmのクリスマスツリー。 旅行から帰り、クリスマスマーケットで買ってきたオーナメントの飾り付けをしてた。 上の方はカイにやってもらって、最後に頂辺(てっぺん)の星を俺が飾るってなったんだけど、星を持った俺をカイが後ろから抱き上げようとして、両手で脇腹を掴まれた瞬間、あまりのくすぐったさに俺は耐えられなかった。 「ちょ、い、いったん、はな・・・はなひっ・・・ふひゃっ」 「ほんと可愛い」 「ひゃめぇっ」 カイが目的を見失ってる。 ツリーの飾り付けから、俺をくすぐるにシフトチェンジしたみたい・・・。 「ゔあーっ!もおっ!ストップ!」 「ふふ、ごめんごめん」 全く悪びれた様子が(うかが)えませんが? 「き、きゃたつ、とか、ないの?」 「ないよ。だから俺が抱っこして・・・」 「他の方法ない!?」 ツリーに星が飾られる前に、俺が笑い死にして星になる! ・・・あ、そうだ。 「肩車して!」 「いいよ」 おんぶもそうだったけど、肩車も密かに憧れてた。 ・・・さすがにこの歳で肩車してもらえるとは思ってなかったけど。 「ほんとに?重いよ?」 「璃都は軽いよ。最近やっと53kgまで増えたけど」 「・・・え?55kgくらいでしょ?てか、体重計乗ってないのになんでわかるの?」 「毎日抱っこしてるから。公園で逢った時は50kgくらいだったし」 ・・・あれ、俺そんな体重だった? アパートには体重計なんてなかったし、学校の健康診断で確か55kgって・・・。 「カイが軽く見積もり過ぎなんじゃない?」 「体重計乗ってみる?」 「55kgだったらカイ罰ゲームね」 「53kgだったら璃都が罰ゲームね」 ツリーの星を持ったまま、1階のパウダールームへ。 あ、ここに体重計あったんだ。 「その星は預かるよ」 「はいはい。星で嵩増(かさま)ししようなんて思ってないから」 この体重計、乗るだけでいいのかな。 スリッパを脱いで上に乗ると、ピッと電子音が鳴って、液晶にパッと数字が表示された。 「ほら、53kg」 「・・・え、なんで」 俺、痩せたのかな・・・。 でもカイと暮らすようになって、食事量は増えたはずなのに・・・。 それにしても、抱っこで正確に体重を測ってくるオオカミって・・・。 「じ、じゃあ、星飾ろう。肩車してねっ」 「その後、罰ゲームね」 ・・・忘れてなかったか。 罰ゲームなんだろ・・・語尾になんか付けろとかかな。 ツリーの前に戻り、しゃがんでくれたカイの肩に脚をかけ、上に乗る。 「う、あ、た、たか・・・っ」 カイが立ち上がると、上半身がぐらついて、思わずオオカ耳を掴もうとしたけど、手には大事な星が・・・。 「気に入った?」 「・・・ぅん、巨人になった気分」 「ふはっ」 ツリーの頂辺に星を飾り、完成。 俺を肩車したまま、カイがツリーの全体が見える位置まで下がる。 ・・・うん、我ながらよく出来た。 色や配置バランスに(こだわ)り過ぎて2時間もかかってしまったけど・・・。 「玄関ホール(ここ)の照明をオフにすると、ツリーのイルミネーションが点くよ」 「え!見たい見たいっ!」 この家の照明は人感センサーになってるんだけど、どうやって消すんだろうと思ってたら、カイがスマホを出した。 あ、スマホのアプリでも操作出来るのか・・・すご・・・。 「・・・わぁ・・・きれぇ・・・」 シャンパンカラーのイルミネーションが灯り、オーナメントもキラキラして、本当に綺麗。 拘った甲斐があった・・・! 「イルミネーションのパターンも選べるよ」 「どんな?」 カイがまたアプリで点灯パターンを順番に変更してくれる。 常灯、フラッシュ点灯、ウェーブ点灯、段階的に点灯、交互にウェーブ点灯、交互に点滅・・・。 どれもいいな・・・悩む・・・。 「んー・・・交互に点滅がいいかな」 「了解」 すっごい満足感。 オオカ耳をもふりながらツリーを眺める・・・至福だ。 「それで、罰ゲームだけど」 「・・・忘れてなかったか」 念願の肩車にツリーでテンションも上がってるし、なんでも来いっ! 「じゃあ、ベッドへ行こうか」 嫌な予感・・・。 ─────── 「んゃ・・・んっぅ・・・っ」 「こら璃都、ちゃんとにゃあって鳴かないと」 「・・・に・・・にゃ・・・あんっ」 カイが俺に課した罰ゲームは「寝るまでずっとネコ語で喋る」だった。 ベッドに組み敷かれ、ゆっくり挿抜されながら、喘ぎ声すらネコ語にするよう強いられる。 そんな余裕ないってば・・・。 「んぅ・・・」 「璃都はゆっくりされるの好きだよね。とろんとして、可愛い。ほら、にゃあってお返事して?」 「・・・に・・・にゃぁ・・・っ」 恥ずかし過ぎる・・・。 なんで、俺がこんな目に・・・。 「ひあっ!や、らめ・・・っ」 「ネコ語以外使ったら、お仕置きっ」 「にゃぁあっ、んに・・・っ、ひにゃっ!」 奥の入り口をごちゅごちゅ突かれて、必死にネコ語で喘ぐ。 た・・・耐えろ俺・・・明日は学校なんだから、カイをイかせれば・・・。 「にゃぁ・・・んにゃ・・・んんっ・・・んぅ」 「甘えてるの?可愛い・・・奥に欲しい?」 「んっ、んにゃっ」 カイに手を伸ばし、頷いて肯定する。 早くイって・・・終わらせて・・・っ! 「じゃあもっと奥に侵入()れさせて・・・ほら、ここ開けて・・・っ」 「に"ぅ・・・ゔ・・・ん"あっ」 ぐりぐりとこじ開けられ、ぐぽっと奥まで挿入()れられて、衝撃を逃がそうとカイの背中に爪を立てる。 噛まれたり吸われたり、痕だらけにされてきたけど、俺もカイにいつも痕付けてるんだよな・・・。 いつもカイが爪切りしてヤスリまでかけてくれてたから、みみず腫れみたいになってたけど、今は旅行帰りでちょっと爪伸びてる・・・。 がりって、しちゃったかも・・・。 「ふ・・・っ、好きなだけ引っ掻いていいよ。我慢出来ないんでしょ・・・っ」 「んい"っ・・・に"ぃ・・・あっ、ぁあ"っ!」 肩口に噛み付かれ、仕返しみたいに爪を立てて、奥に熱を叩き付けられながらイった。 ─────── 「はい、お待たせ」 「・・・にゃ」 ダイニングテーブルに、とろとろ卵の親子丼、レンコンの柚子胡椒和え、白菜ときのこのコンソメスープが並ぶ。 美味しそう・・・。 「にゃん(いた)にゃ()にゃ()にゃん(ます)」 「召し上がれ」 俺のネコ語をなぜか理解するカイ。 ・・・ネコ語で無理難題をふっかけて困らせてやろうか。 「にゃん(カイ)にゃにゃーん(スプーン)にゃ()にゃにゃん(欲しい)」 「はい、スプーンね」 ・・・え、なんで、わかった? 卵とろとろだから、箸じゃなくてスプーンがいいって・・・言わなくてもわかったかもしれないな。 じゃあ、全然関係ない話を・・・。 「璃都、美味しい?」 「ん。んーにぃ」 「ふふ、可愛い」 喜ばせてばかりはいられない。 無理難題・・・無理難題・・・。 「にゃんにゃ(明日)にゃにゃん(お昼)にゃ()にゃにゃにゃ(お寿司)にゃ()にゃにゃにゃん(食べたい)」 「お寿司ね、いいよ」 いやだからなんでわかるの!? 普通、絶対わからないよね? わからないようにネコ語使ってるんだけど? 「どうしたの?」 「にゃんにゃ(なんで)にゃにゃんにゃ?(わかんの?)」 「璃都の事はなんでもわかるよ」 「にゃぁ・・・(こわ・・・)」 もっと・・・意味わからない事を言ってみるか・・・。 「にゃにゃ()にゃにゃーにゃん(宇宙人)にゃ()にゃっにゃ(会った)ゃに()にゃにゃんにゃ(ないんだ)」 「ふふ、俺も宇宙人には会った事ないなあ」 「んにゃー!?」 なんでわかるんだ・・・カイの恐いの次元が爆上がりした・・・。 ・・・でもなんか、おもしろくなってきたな。 夕食後も、お茶を啜りながらカイにネコ語で話しかけまくった俺は、忘れてたんだ。 カイが帰りの車で「明日の学校は諦めて」と言っていた事を・・・。

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