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第58話*

予定通り15時半に帰宅して、まず着替えるんだけど問題が。 「カイは先に着替えて、リビングで待ってて」 「どうして?誕生日なのに璃都(りと)と離れたくない」 「もぉ・・・」 それでも着替えを見られる訳にはいかない。 苦肉の策で、カイに後ろを向いてもらって着替えた。 「もう見ていい?」 「待って・・・よし。いいよ」 「・・・っ!・・・かっ・・・わいい・・・っ!」 口元を抑え、オオカ耳をぷるぷるさせるカイ。 気に入ったみたいだな。 今日くらいは恥を捨て、カイの好みに合わせてあげようと思って、お義姉(ねえ)さんから送られてきた部屋着の中にあった、三毛猫柄の着ぐるみパジャマを着てみた。 カイが特注した後ろまでチャックが開くタイプではない、健全なやつだ。 あと、フードじゃなくて、別でネコ耳のカチューシャが付いてた。 これ付けるのはちょっと抵抗あったけど・・・。 「璃都が可愛い・・・俺のネコちゃんが可愛い・・・」 俺を抱き寄せ撫でなですりすりしてくるネコ好きオオカミ。 ぷるぷるオオカ耳触っちゃお。 「落ち着きたまえよ。ほら、キッチン行くよ。ケーキ作ろ」 「ん・・・先に璃都食べた・・・」 「だあめっ!順序を守って!」 今はまだ脱がされる訳にはいかない。 ネコの下にもサプライズがあるんだから。 なんとかカイをキッチンに引っ張って行き、ケーキ作りを始める。 「今日は抹茶のレアチーズケーキを作ります」 「はい、璃都にゃん先生」 お揃いのエプロンを着けて、調理器具と材料を並べる。 クリームチーズを室温に戻している間に、ビスケットをビニール袋に入れて砕き、麺棒でごりごり粉状にした。 これに溶かした無塩バターとレモン汁を加えて、カイに混ぜてもらう。 混ざったらケーキ型の底に敷き詰めてから冷蔵庫へ。 次はボウルにクリームチーズ、砂糖を入れて練りねりと混ぜる。 プレーンヨーグルトを加え、カイと混ぜ役を交代。 更に生クリーム、レモン汁も加えながら、カイにずっと混ぜてもらう。 「疲れた?」 「大丈夫だよ。璃都にゃん見てるだけで癒されるから」 そんな幸せそうな顔でなに言ってんの。 はぁ・・・どうして俺の旦那は変態なんだろ・・・。 「抹茶パウダー入れまぁす」 「はぁい」 白かった生地が綺麗なグリーンに変わっていく。 カイが混ぜてる間にゼラチンをレンジで溶かして、生地に加える。 とろみが付いて(なめ)らかになったら、冷蔵庫で冷やしといた型に流し入れて、とんとんと軽くカウンターに落として空気を抜いた。 「ヘラで平らにします」 「璃都にゃん先生、手際が良くなりましたね」 「ほんとっ?えへっ」 褒められた。 カイが料理するの手伝ってたから、俺もレベルアップしたかな。 「後は冷蔵庫で冷やすだけ。じゃ、晩ご飯の支度するから、カイは座ってて?」 エプロンを外したカイをカウンターチェアに座らせて、飲み物を出しゆっくりしてもらう。 今夜のメニューは(たけのこ)ご飯、キャベツの柚子胡椒和え、肉巻きアスパラガス、具だくさんの豚汁だ。 「美人な奥さんが料理してるの眺めていられるなんて・・・ほんと幸せ過ぎる」 ティーカップ片手に、(とろ)けるような笑顔を向けてくれる旦那さん。 「その奥さん、ネコ耳着けてるけどな」 我ながらシュールな絵面(えづら)だと思う。 でも、そんな笑顔を見せてくれるなら、それでもいいかって思えた。 ─────── 「いただきます」 「召し上がれ」 ダイニングテーブルに出来上がった料理を並べ、カイと向かい合って座り、食事をする。 ・・・うん、美味(おい)しくできた。 「はぁ・・・美味しい・・・幸せ・・・」 「喜んでくれて良かった」 食後はほうじ茶を淹れて、リビングでまったり抹茶のレアチーズケーキを食べる。 ロウソク立てようかとも思ったけど、カイが「はやく璃都吸いしたい」って急かすからやめた。 「改めて、カイ、お誕生日おめでとう」 「ありがとう璃都。こんなに幸せな誕生日は初めてだ」 俺を膝に座らせて撫でながら、ご満悦のカイ。 フォークでひと口大に切ったケーキを口に運んでやる。 「ん、美味しい」 「良かった」 「璃都も美味しそう」 「こらこら・・・まあ、食べ終わったらね」 不本意ではありますが、サプライズ用意してあるし。 ・・・うん、ケーキも美味しくできてる。 俺、意外と料理できるのかも。 「毎日が誕生日なら、毎日璃都にゃんを可愛がれるのに・・・」 「それじゃあっという間に歳とるじゃん」 そんなにネコが好きなら飼えばいい・・・って言いかけてやめる。 リビングに新設された大型水槽が目に入ったから。 120cmの海水魚水槽だ。 珊瑚礁を模したレイアウトに、色鮮やかな熱帯魚たちが泳いでる。 ・・・ずーっと見てられるなぁ。 「璃都にゃん、お魚食べちゃだめだよ」 「見てるだけですぅ」 ソファにはうす紫色のミズクラゲが2匹と、白いアザラシ。 ラグの上にはネムリブカ、茹で済みのタラバガニ。 水槽が置かれているキャビネの上には青いサメネコ、オレンジのカワウソネコ、ピンクのペンギンネコ。 なんともファンシーなリビングになってきたな。 ・・・まだまだ増やすつもりだけど。 ─────── ケーキも食べ終わり、三毛猫姿でカニをふみふみしてたら、カイが耳に噛み付いてきた。 頭に着けたネコ耳の方でなく、俺自身の耳に。 「璃都、そろそろ我慢の限界なんだけど」 「・・・ゎ、かった・・・ベッド、行こ・・・」 「ここじゃだめ?」 「だめ・・・ここでネコ脱ぐのは・・・ちょっと・・・」 明る過ぎるので・・・。 「ベッド連れていったら脱がせていい?」 「・・・ぅん、いいよ」 そう言ったら、がばっと抱き上げられて寝室へまっしぐら。 ちょ、落ち着いてよ、なんか恐い・・・。 ベッドに下ろされ、カイの手が首元のチャックにかかる。 「待って」 「これ以上待ては無理なんだけど」 「じ、自分で脱ぐ、から・・・」 これ、着るの凄い勇気出したんだから、どうせならちゃんと見て欲しい。 チャックを下ろし、三毛猫の着ぐるみパジャマを脱ぐ。 「・・・はぁ・・・っ、嘘だろ・・・なんだよそれ・・・っ」 「えっ、なんで・・・だめ、だった・・・?」 カイの険しい表情と乱暴な言葉に、自分がやった事が急激に恥ずかしくなった。 ネコの下に着てたのは、薄ピンク色の、所謂(いわゆる)ベビードール。 新婚旅行用にって、お義姉(ねえ)さんが送ってきた服の中にあった「内緒の10着」の中の1つだ。 旅行に持って行くスーツケースに入れる前、こっそり中を確認して、びびって家のチェストの奥に隠してた。 だから、カイはこれ、初見なんだけど・・・。 「こ、これ、嫌い・・・?」 「エロ過ぎてめちゃくちゃに噛み付くかも」 「ふぇ・・・そ、れは、や・・・んんぅっ!?」 そんなみっともない格好しやがって・・・って意味で怒ったのかと思ったのに、そっち? いや、そっちでも困るんだけど・・・。 「んぅ・・・ぢゅ・・・んぐ・・・んっ」 待って、溺れる、息できない、溺れるっ! 押し倒され、ベッドに沈めて溺れさせようとしてるみたいに、激しく舌を絡められる。 「・・・っ・・・ぷぁっ・・・ゃ、ぁ・・・ひあっ!?」 やっとキスから解放されたかと思ったら、ベビードールの中に手が入ってきて、胸や背中を撫で回され、首に噛み付かれる。 胸からすすす、と下がってきた手が腹を撫でた。 「子宮(ここ)()れるから、孕んで?」 「ひ・・・っ」 ヤバい。 こんなつもりじゃなかった。 ただ、いつもと違う格好して、カイが喜んでくれたらって思っただけなのに。 ちょっと興奮してくれるかなって、可愛いねとか揶揄(からか)われるんだろうなって・・・。 「ぅああ"───っ!ひぅゔっ・・・や、ぁあっ!」 両脚を掴まれ、容赦なく奥を突かれる。 抵抗するどころか、シーツを掴んで必死に耐えるしかない。 「そんなカッコして俺を煽って、本気で喰い殺されるかもって思わなかった?」 「ん"ゔっ・・・ぅぐ・・・っ、やらぁっ」 首が熱くて、痛い。 肩も、腕も、胸も、脚も、腹も。 血の匂い、する。 「璃都・・・っ、孕め・・・孕め孕めはらめっ!」 「ん"ぁああ"───っ!」 金の瞳のオオカミが、口元に付いた赤を舐めるのを見ながら、俺の意識は黒く染まった。

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