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第64話*
大学の夏休み。
遠くから聞こえてくる蝉の声をBGMに、エアコンの利 いた書斎で勉強中。
目の前には、ノートPCを開きながら電話で仕事の話をしてる、イケメンスパダリハイイロオオカミの旦那。
・・・見ちゃうな、これ。
仕事してる姿も異常にカッコいいんだよな。
「・・・ああ、それで頼む。・・・悪い、後は任せていいか。俺のネコちゃんが構って欲しそうにこっち見てるから」
・・・は?
カイの視線はずっとノートPCだった筈なのに、なんで俺が見てるって気付いたんだ?
いやそれより、会社の人にも「俺のネコちゃん」イコール俺 って知られてんだから、余計な事言うなよ!
俺が仕事の邪魔してるみたいじゃん!
「見てるだけだからどうぞ続けて」
俺の申し出を無視して、スマホを置くカイ。
「せっかく璃都 が勉強より俺に興味を示してくれたのに、仕事なんてしてられないよ」
カイは立ち上がると、俺の横に来て勝手に参考書を閉じ、タブレットもOFFにしてしまった。
・・・ま、いっか。
そろそろ息抜きしようと思ってたし・・・。
「って、ちょっと、なんで抱き上げるかな?」
「ネコちゃんは抱っこして愛でるものでしょ」
「抱っこ嫌いなネコもいるだろ」
「俺のネコちゃんは抱っこ好きだよ」
「へー初耳」
カイの肩に顎を乗せ大人しく運ばれていると、進行方向がリビングでなく寝室なのに気付いた。
いや待て、ちょっと息抜きしたいなと思っただけなんだけど?
「カイ、そっちじゃないよ」
「ん?どこでシたいの?」
なにを?
休憩だよね?
一息つくだけだよね?
「リビングか・・・遊びたいなら、地下 でビリヤードでもしようよ」
「ビリヤード台でシたいんだ?」
「・・・ビリヤードをね」
エッチはしないぞ。
まだ昼前だし。
「じゃあ、その体 で下りるよ」
「その体ってなんだよ」
とんとん、と軽快に階段を下りていくオオカミ。
俺も馴れたもので、抱っこで運ばれる事に微塵も恐怖を覚えなくなった。
抵抗したり、落とされないか心配してしがみ付いたり、どこに向かうのか不安できょろきょろしたりもしない。
完全に脱力している。
「璃都がされるがままなの、可愛い」
「知ってる?脱力した人間って重いんだよ」
「力が分散しないからね。俺はその方が嬉しいけど。璃都の全てが俺に委ねられてる感じがして幸せだな」
嫌がらせのつもりだったのに、まさか喜ばれるとは・・・。
なんかムカつくからジタバタしてみよう。
「むうーっ」
「ああもう、可愛いなあ。よしよし、いっぱい遊んであげるからね。逃がしてなんてあげないよ」
だめだ、変態オオカミが更に喜んだだけだった。
地下のプレイルームに入り、ビリヤード台に下ろされる。
いや、ビリヤード台 は座るとこじゃないだろ。
「こら、押すな、押し倒すな」
「抵抗すると・・・」
「ナインボールで勝負してカイが勝ったら好きにしていい」
そう簡単に乱暴にされてなるものか。
「ふふ、いいよ。5ラックでいい?」
勝負する前から勝ち誇った顔すんな。
俺だって結構上達したんだから。
「7ラック、ボールハンデも付けて」
ボールハンデを付ければ、カイは9番ボールを入れて1ポイントなのに対し、俺は7番以上のボールを入れたら1ポイントになる。
だからきっと勝てる・・・と思ったのに。
「やだやだ入れないでぇっ!」
「勝負だから」
前半は順調だったのに、なんで7番ボールも8番ボールもカイが入れちゃうの!?
そのまま9番ボールまで入れちゃったら俺にポイント入らないじゃん!
こんな感じで3ラック目が終わり、カイは3ポイント、俺は0ポイント・・・。
「降参する?」
「しないっ!まだ4ラックあるもんっ!」
俺が12ポイント取る可能性だってある。
まだ全然負けてないから!
「だめぇっ!」
「こらこら、くっ付いてたら打てないよ」
5ラック終わってカイが5ポイント、俺が0ポイント、6ラック目でカイが7番ボールを入れ、8番ボールを狙ってる。
8番ボール を入れられちゃったら、残り全部俺が入れたとしても4ポイントしか取れない。
つまり、なんとしてでも阻止しなければならない。
「なんでもするから8番ボール 譲ってぇ」
「なりふり構わなくなっちゃったね。じゃあ、抱かせて?」
「それじゃ本末転倒・・・ああっ!」
俺の隙をついてカイが打った手玉が、8番ボールをポケットに落とした。
終わった・・・。
「好きにしていい、よね?」
「く・・・っそぉ・・・」
だめだって言っても好きにする癖に。
抵抗すれば喜んで酷い事する癖に。
ならせめて、自分に負担の少ない状況にするしか・・・。
「・・・いいよ。ベッド行こ」
キューを置き、カイに両手を伸ばす。
さあ、抱っこして2階の寝室まで運べ。
カイは嬉しそうに微笑みながら、俺を抱き上げ・・・あろう事かビリヤード台に乗せた。
・・・いやいやいや待て待て待て!
「こ、ここじゃない、ベッド・・・」
「ここ、テーブルベッドって言うんだよ。それに、勝負に勝ったら好きにしていいって言ったよね。嘘ついたの?イケナイ子だね、お仕置きしなきゃ」
詰んだ。
どう転がっても俺の負けだ。
ビリヤード台 で大人しく抱かれるしかないっぽい。
「ぅぅ・・・好きにしなよ、男に二言はないっ!」
「ふふ、じゃあ下脱いで?」
まさかの強制ストリップショー。
神様、どうして俺の番を変態にしたのですか。
「・・・ちょ、見るなぁ」
「見たいからさせてるんだけど」
ハーフパンツを脱ぎ、Tシャツとパンツ姿でビリヤード台に座る俺。
カイは笑顔のまま、ただ俺を見てる。
はいはい、パンツも脱げって事ね。
「これでいい?」
「隠さないで。脚開いて全部見せて」
くそ・・・変態オオカミめぇ・・・。
Tシャツの裾を少し持ち上げ、そろそろと脚を開く。
・・・これじゃ俺の方が変態みたいじゃん!
「ふふ、恥ずかしそう。興奮する」
「へんたいっ」
耐え切れず脚を閉じると、両膝を掴まれてがばっと開かされた。
その勢いで、俺は上体をラシャのテーブルに倒してしまう。
「ぅわっ・・・ひぅうっ」
熱い舌が捩じ込まれ、びくっと腰が跳ねた。
どおしよ、本気でここでヤる気だぁ・・・。
・・・だが待てよ、ビリヤード台の縁 が邪魔なのでは?
そうだよね、挿 れらんないよね?
カイ、気付いてないのかな・・・。
「下ろすよ」
「ふぇ?」
ビリヤード台から下ろされたかと思ったら、後ろ向きに立たされ上半身をラシャの上に倒された。
背中にカイが覆い被さってきて、耳元で囁く。
「ブレイクショット」
・・・・・・は?
「ゃあ"───っ!?」
奥まで届く衝撃と、ぱんって肌がぶつかる音。
・・・うそ・・・おれ・・・いまので・・・。
「璃都、イっちゃった?」
「・・・あ"・・・ぅ・・・っ」
も・・・カラダおかしい・・・。
カイのせいだ・・・俺の身体が変になったのは・・・。
「ナカ凄い痙攣してる・・・っ、まだ始まったばかりだよ、気絶しないでね」
無茶言うな!
死ぬかと思ったのに!
「んあっやらっ・・・んぐっ・・・しんじゃ・・・っ」
「そんなに気持ちイイ?もっと遊ぼうよ、璃都」
「ひぅう・・・っ」
やだ、これ俺がやりたい遊びじゃない!
無意識にカイから逃げようと延ばした手に、9番ボールがあたって転がっていく。
なんで・・・まだ昼間なのに・・・書斎では真面目な顔して仕事してた癖に・・・。
「なんれぇっ・・・へんた・・・っ、なのぉ・・・っ」
「ふ・・・俺の事?・・・璃都のせい、だよ・・・璃都が可愛くていい匂いで美味しいから・・・っ!」
「ひゃんっ!」
変な声出たぁ・・・。
後ろから奥突かれるの弱いんだってば。
恥ずかし過ぎるから両手で自分の口を塞ぎ、カイの責苦に耐える。
「ん"ぅ・・・っ・・・んっ」
「こら、声我慢しないの。おてて離して、俺が掴んでてあげる、ね」
「んあ"っ!・・・やっ、あ・・・ぁんっ・・・っ」
口を抑えてた両手を掴まれ、ラシャの上に縫い付けられる。
その状態でがんがん腰を打ち付けられて、俺はみっともない声を漏らしながら何度もイかされた。
ねえ、俺、なんか悪い事した?
勉強の片手間にスパダリオオカミ眺めてたのがいけなかった?
その結果、仕事の邪魔しちゃった罰なんですか?
ねえ神様。
どうして俺の番を変態にしたのっ!?
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