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第67話

【カイザルside】 自宅に璃都(りと)玲央(れお)くんを留守番させ、リシドと実家へ帰ってきた。 近況報告や仕事の事を話したり、食事したりして、ついにみんなが聞きたがっている事を父のライアン・ルプスが聞いてくる。 「璃都ちゃんはどうしてる。元気か?」 「ええ、元気ですよ。大学生活も順調のようですし、俺の耳が好きでよく触ってくれます」 「ふふふ、良かったわね、気に入ってもらえて」 「まだ18歳でしょう?ちゃんとお外で遊ばせてあげてる?」 母の深雪(みゆき)と、リシドの母で叔母の鈴香(すずか)さん。 2人に璃都の写真を見せたら、会いたい会いたいと大騒ぎして大変だった。 「学校にも通わせてますし、遊びにも旅行にも連れて行ってますよ」 「もちろんカイザルも一緒にだろうな?独りでなんて出歩かせるなよ?誘拐でもされたら・・・」 いらぬ心配をするテオドア兄さん。 そんな事するわけないだろう。 「テオドア兄さん、璃都を独りで外に出すなんてあり得ませんよ。外出時は俺が一緒ですし、玄関の扉は璃都には開けられないようにしてあります。大学内ではボディーガードも付けてますから」 「そりゃそうよね。テオドア兄さんたら、愚問よ。あ、カイザルもリシドも、帰りに番ちゃんたちの服、持って帰ってね」 ヘラルダ姉さんはまた、璃都と玲央くんの服を作ってくれたらしい。 自分の仕事は進んでいるんだろうか。 「ありがとうございます、ヘラルダ姉さん。ああ、そうだ、内緒の10着なんですが、危うく璃都を喰い殺してしまいそうでしたよ。ありがとうございました」 残りの9着はいつ着てくれるんだろう。 楽しみでもあり、自制できるか不安でもあり・・・。 「番を喰い殺しそうになって礼を言うとは・・・そんなに似合っていたのか」 呆れながらも笑顔で聞いてくる、リシドの父で叔父のダレンさん。 「ええ、最高に」 「玲央にも貰ったけど、アレは良かったー・・・4着目までは着せたんだけど、残りの6着が見つからなくてさー」 リシドは4着も楽しんだのか。 残りは璃都と同じで、玲央くんが隠したんだな。 だが、着せた、という事は、玲央くんが自主的に着てくれた訳ではないんだろう。 「璃都は俺の誕生日にサプライズで着てくれたんだ。しかも、三毛猫パジャマの下に。俺の恥ずかしがり屋のネコちゃんが、自分で着て見せてくれたんだぞ」 「マウント取ってくんな!」 その後、玲央くんの近況についても話していたら、俺のスマホに通知が入った。 庭の監視カメラからの動体検知通知だ。 すぐにカメラ映像を確認する。 「リシド、あの子たちが庭に出たぞ」 「え?ああ、水風船やるのか」 2人でカメラ映像を見ようとしたら、テオドア兄さんが接続用コードを取り出し、俺のスマホをリビングの大型モニターに接続させた。 「まあ!2人とも可愛い!」 「玲央くんも美人さんだけど、璃都ちゃんも美人ねぇ!」 「送った水着を着てくれたらいいのにぃ!」 女性陣が大盛り上がりだ。 監視カメラには集音マイクも装備されているので、2人が楽しそうに騒ぐ声も聞こえる。 「ああ、本当に良かった・・・璃都ちゃんが生きていてくれて・・・」 「本当だね・・・元気な姿が見られて嬉しい・・・」 父と叔父は、元気にはしゃぐ璃都を見て涙を流している。 相当心配していたからな・・・。 「璃都ちゃんは暑いの苦手だと言っていなかったか?あまり長く外にいたら熱中症になってしまう」 番が喘息持ちで、彼と一緒になってから人の体調に過敏になっているテオドア兄さんが狼狽(うろた)え始める。 テオドア兄さんは実家に来てからも番に1時間おきに電話しているが、俺たちにも今すぐ電話して部屋に入るよう伝えろと言い出した。 水風船を使い果たした2人は、プールに浸かってぐったりしている。 ・・・電話しよう。 「どっちが先に気付くかなー」 リシドとお互いの番に電話をかけながら、モニターを睨む。 たぶん、璃都はスマホの存在自体を忘れているだろう。 防水なんだから、持ったまま水遊びしてくれればいいのに。 「あっ、玲央がテラスの方行った。さすが僕の玲央」 「璃都は可愛いからいいんだ」 玲央くんが璃都のスマホも持ってプールに戻った。 璃都がスマホを受け取り、電話に出てくれる。 『・・・なぁに?』 そっけない言い方だけど、笑顔なの、見えてるよ。 本当に俺の璃都は可愛い。 「楽しそうだね」 『うん?え、なんでわかんの?』 「庭は監視カメラがあるから。最初から見てたよ」 璃都がきょろきょろし出した。 プールの中で少し身を低くして、天敵を警戒する子ネコみたいに。 ああ、可愛くて美味しそう。 「タオルは用意したの?」 『へ?・・・たお・・・あっ!』 きっと遊ぶ事しか考えてなくて、用意し忘れるだろうなと思ってた。 大丈夫だよ。 「ふふっ、そんな事だろうと思った。テラスのカウチにかけておいたから、使って」 朝食を作った後、置いておいたんだ。 ほかほかになっちゃってるだろうけど、水遊びで身体が冷えてるだろうし、丁度いいだろう。 『ほんと?ありがと・・・って、俺たちが庭で水遊びすんの知ってたの?』 電話で話しながら、小首を(かし)げる璃都。 撫でてあげたい、キスしたい、食べちゃいたい。 「リシドが玲央くんにプールと水風船ねだられたって聞いたから、遊ぶんだろうなって」 『ハイイロオオカミって未来予知の能力もあんの?』 「ふふ、ないよ。俺がいなきゃ生きていけない、可愛いダメ璃都になって欲しくてやってるだけ」 『・・・もお結構ダメ人間化してると思うけど』 まだ足りない。 俺がいないと歩けないし食べられない、息もできないくらいになってくれなきゃ。 「俺のネコちゃんが熱中症になったら大変だから、そろそろお(うち)に入って?ちゃんと水分も摂るんだよ?」 『はぁい』 電話を切り、ちゃんと言う通りにするか引き続きモニターを監視する。 玲央くんと一緒にプールを片付け、タオルで身体を拭いて部屋に入っていった。 「可愛かったわねぇ。璃都ちゃんとっても頭のいい子だから、あんまりお外で遊ばないんだと思ってたけど、楽しそうで良かったぁ」 「ちゃあんと子どもらしく遊べてたわねぇ。玲央ちゃんも、一緒に遊べる子ができて嬉しそうだったわぁ」 「2人がお外で遊ぶ用の服、作ってあげなくちゃ!」 「ダレン、前に話していたプール付きの別荘、やはり買おうか」 「そうだな。隣接している敷地ごと買い上げてしまおう。その方が安心だ」 「カイザル、リシド、後でまた連絡をしておけよ?時間が経ってから具合が悪くなる事もあるからな」 大盛況の中、璃都と玲央くんの水遊び視聴会は終わった。 監視カメラの映像はスマホにも保存される。 リシドにも送ってやり、また璃都の可愛い動画が増えた事に喜びを感じていたら・・・。 「ただいまぁ!ヘラぁ、お腹すいたぁ!」 仕事で遅れていたヘラルダ姉さんの夫、アドルフが元気にご帰宅。 ルプス家の婿で、同じハイイロオオカミの獣人だ。 このヒトにだけは、絶対に璃都を見せる訳にはいかない。 「ダレン叔父さん、鈴香叔母さん、お元気でしたかぁ?義兄(にい)さん、義弟(おとうと)くんたち、久しぶりだねぇ」 「アド、お腹空いてるんでしょ、こっちいらっしゃい。だめよ、カイザルとリシド(おとうとたち)にちょっかい出しちゃ」 「はぁい!」 ヘラルダ姉さんが遠ざけてくれて助かった。 それに、監視カメラ視聴会が終わってから帰ってきてくれたのも良かった。 ルプス家に俺やリシド、テオドア兄さんが番を連れて来ない理由がアドルフだから。 あのヒトは天性の人タラシで、その上気に入ったら放さない性格だ。 璃都を奪われでもしたら、俺は彼を殺すしかない。 そうならないよう、アドルフの事を一番理解しているヘラルダ姉さんが気を遣ってくれている。 「アドルフ義兄(にい)さん、いいタイミングで帰ってきたねー」 「ああ。彼が帰ってきたからには、番の話は禁止だぞ」 悪いヒトじゃないんだが・・・。 俺の嫁が可愛過ぎるから、仕方ない。

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