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第69話*
未だ残暑の続く日々、俺は涼しい書斎で創薬科学の本を読んでいた。
この本を買ってくれた旦那様は、土曜なのに午前中に会議があるとかで外出中。
2時間で帰るって言うから、俺は留守番する事にしたんだ。
本を読むのに集中したまま、デスクの上に手を伸ばす。
アイスティーの入ったグラスを手に取って、飲もうとしたんだけど・・・。
「・・・ぅあっ?」
グラスを取りこぼし、びしゃっと腹に冷たい紅茶がかかった。
咄嗟に本を持ち上げて庇ったので、被害に遭ったのは俺の服だけ。
「・・・やっちゃった」
本をデスクに置き、ほとんど空になったグラスを持ってキッチンへ行く。
グラスに残ってた量は多くなかったから、全て服に染み込み歩いても溢れない。
書斎を汚さなかっのは不幸中の幸いだ。
キッチンにグラスを置き、洗面所へ向かう。
シミになる前に手洗いしなきゃ・・・。
Tシャツ、ハーフパンツを脱ぎ、残念ながら被害を免 れなかった下着も脱ぐ。
「着替え持ってくるべきだった・・・」
全裸で服を揉み洗いするとか・・・かっこ悪過ぎる。
洗い終わった服を絞り、ランドリーバスケットへ放り込むと、背筋にぞわっと悪寒が走った。
なんつータイミング・・・。
「・・・ぉ・・・お帰り」
「ただいま。熱烈な歓迎ありがとう」
「いいえ違います飲み物こぼして手洗いし・・・ひいっ」
全裸の俺は、いつの間にか帰宅していたカイに抱き上げられ、寝室へ運び込まれた。
こら、ベッドに下ろすな!
「璃都 は裸族だったの?言ってくれれば・・・」
「違うってば!」
カイが俺を押し倒し、胸から腹へとキスを落としていく。
く・・・くすぐったいぃ・・・っ。
「ふふ、アップルティーの匂い」
「こぼしたの。だから脱いで揉み洗いしてたの。裸族じゃな・・・んひっ」
下腹部に噛み付かれ、びくっと身体が跳ねる。
やばい・・・。
「ほんと、璃都は俺の牙が好きだね」
「違うっ」
「ちょっと噛むとすぐ勃 つのに?」
「違うってば・・・んぃっ」
「ほら、見て?ここ、どうなってる?」
見たくないし、見なくたってわかる。
自分のカラダだし。
でも、なんで噛まれただけでそうなるのかは、未だに理解できない。
自分のカラダなのに。
「ほら見て。可愛いよ?」
「煩いっ・・・んっ・・・ゃめ・・・」
可愛いってナニに対して言ってんの?
失礼が過ぎるんですが?
あと噛むのやめろ!
「見て。どこが、どうして、どうなってるか、言って?じゃないと、この可愛い璃都にも噛み付いちゃうよ?」
「・・・もぉ・・・なんで、そんな・・・へんたいなのぉ・・・っ」
言える訳ないだろ!
そんな、恥ずかし過ぎる事・・・。
「ねえ、ほら、言わないと。ここ噛まれたらきっと痛いよ?」
俺の急所のすぐ側で、口を開くオオカミ。
先っぽに熱い息がかかる。
そんなとこ噛まれたら痛いじゃ済まないだろ・・・。
「ゅ・・・から・・・やめ・・・」
「うん。早く言って。美味しそうで我慢できなくなってきたから」
うああ"ー!
観念して視線を向けたら、変態オオカミの眼が本気の色してて恐いい"ーっ!
だめだ、泣くな俺・・・泣いたらオオカミが興奮するだけ・・・。
「ぅ・・・っ、カイが・・・噛む・・・からぁ・・・っ、た・・・ってる・・・」
「どこが、が抜けてる」
「い"っ!?」
カイが俺の先っぽを咥えた。
牙はあたってない、けど、歯はあたってる。
本気で噛む気・・・?
「やぁっ・・・おれの・・・ぉちんちん・・・っ、かぃ・・・かむからぁ・・・っ、たっちゃったぁ・・・っ!」
「ふふ、かわい・・・」
「んゃあっ!」
先っぽにちゅっとキスされ、腰が引ける。
まだ昼前なのに・・・このままじゃ・・・。
「脚開いて」
「やだ・・・やぁっ」
両膝裏を掴まれ、かばっと広げられた。
くそ・・・なんで飲み物こぼしたりしたんだ。
「そんなに睨まないの。わかってるよ、こっち舐めて欲しいんだよね」
「ちがっ・・・んぅぅ・・・っ」
嫌だって言ってんのに、舌で慣らすのやめて欲しい。
指だと爪で傷付けるからって言い訳してるけど、俺の爪の手入れと一緒に自分のだってちゃんと手入れしてる癖に。
「・・・ぁう・・・も、いいからぁ・・・っ」
「我慢できなくなっちゃった?挿 れて欲しいの?どこまで?」
はあ!?
俺に言わせるな!
変態へんたいヘンタイ!!
「んぁっ、あ・・・っ」
ぐりぐりと熱いのを押し付けられ、それを飲み込みたくて孔 がひくつく。
カタチを覚えさせられた胎内 が、期待してしまう。
「・・・ぉく・・・っ、いれ・・・て・・・っ」
「子宮まで挿 れていいの?」
だめ!
そんな奥までいらない!
でも、拒んでも焦らされるだけで、結局奥の奥まで入れられるんだし・・・。
「・・・・・・ぅんっ」
「一気に?ゆっくり?」
「・・・ゅ、ゆっくり・・・ぃあ"───っ!」
ずぶん、と奥まで貫かれる。
言う通りにしてくれないなら聞くなよ!
「あれ、ちょっとお漏らししちゃった?奥こじ開けたら潮吹いてくれるかな」
「やらぁ・・・んん"ぅ・・・ゔぁ・・・っ!」
ぷし・・・っと勢いよく漏らし、つま先がぎゅってなった。
お腹んとこまで、侵入 ってる。
苦し・・・。
「璃都、可愛い・・・子宮 に挿 れるとすぐでちゃうね。いっぱい突いてあげるから、もっとイって・・・っ」
「ひぁ・・・ぁうっ・・・ゔっ・・・んぁあ・・・っ!」
そこから、俺のイき地獄が始まった。
───────
リビングのソファで、ミズクラゲ2匹とサメとアザラシの赤ちゃんと茹でタラバとマダコとシーラカンスをバリケードにし、遅い昼食後のお茶を飲んでる。
「まだご機嫌斜め?」
「・・・・・・」
「璃都・・・ねえ、ネコちゃん・・・俺の可愛い奥さん」
「煩い」
「ふふっ」
笑ってんなよ。
カイが、俺が積み上げたぬいぐるみの山からミズクラゲを引っ張り出して言った。
「璃都はみんなに名前付けてるよね。クラゲはクラゲとクララだっけ。どうやって見分けてるの?」
ミズクラゲは2匹とも薄紫色で、ぱっと見違いはない。
でも、見分ける必要もないんだ。
「俺がその時持ってる方がクラゲ。持ってない方がクララ」
「じゃあ、今は?」
「両方カイが持ってるから、両方クララ」
「ふふ、そっか。じゃあ、これは?」
次はマダコを手に取る。
「マッド」
「Madness からとったの?目に狂気を宿してるとこが気に入ったんだっけ。こっちは?」
シーラカンスが山から引き抜かれた。
「シル」
「シル?どうして?」
「生きたFossil だから」
「ああ、なるほど。この子は?」
カイがアザラシの赤ちゃんを「きゅっ」て鳴かせながら聞いてくる。
「アジ」
「それ、この子のエサじゃなくて?」
カイはぬいぐるみの名前を聞きながら、バリケードを確実に崩していった。
俺も、別にこのまま朝まで篭城するつもりでもなかったし。
「ネムリブカの事は、ずっとサメって呼んでるよね。カニはカニ?」
「茹でタラバだから・・・ボイル」
「それ、今決めたよね?」
カイとの間に築き上げたぬいぐるみバリケードが完全に崩壊し、抱き寄せられる。
別に、もうそんなに怒ってないし、いいけど。
・・・いや、本当はもっと怒りたい。
カイに反省して欲しい。
そしてもっともっと俺に優しくシて欲しい。
「あれ、また怒っちゃった。ごめんね、璃都。そろそろ赦してください」
オオカ耳をぺたんと倒しながら、俺の首元にすりすりしてくるカイ。
もふもふのオオカ耳がくすぐったい。
「赦して欲しかったら、明日どっか遊びに連れてって」
「どこに行きたい?」
「涼しい場所」
暑くなくて、面白い場所に俺を連れて行け。
「うーん・・・涼しい場所なら、高原とか・・・鍾乳洞とか?」
「鍾乳洞?行く!」
カイと目的地を調べながら、気付けばいつも通りカイの膝上に座ってはしゃいでいる自分に、我ながら本当にちょろいなと呆れてしまった。
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