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第ニ話 漁村にて
島へと着いた2人だが、なんだか様子がおかしい。
どうにも周りの視線が痛いのだ。…主にハクに対して。
「なんだ?鬱陶しいな…」
長い船旅で酔い不機嫌なハクは、周りを鋭く睨む。
すると、そそくさと視線を逸らしいつもどおりを装う村の人間達。
「もう、睨んじゃよくないよ。ハクちゃんの髪の色は珍しいから、きっと驚いただけじゃないかな」
「ちゃん付けはやめろっつってんだろ。ちっ、それだけじゃねえ様な気はするが…」
「うーん…気になるけど。船酔いが残ってそうだし、とりあえず休めそうな宿を探そうか。」
そうして2人は宿を探し始めたが、村に数軒ある宿はどこも部屋がいっぱいだと言われ追い返されてしまう。
ダメ元で民家にも声をかけたが、案の定断られてしまう。
一つ目を断られた時はまだ良かったが、二つ目三つ目と断られる毎に、ハクの眉間に皺がより機嫌がますます悪くなっていく。
「どこもかしこも部屋は埋まってる…だ…?明らかに暇そうな宿もあっただろうが…っ!」
「お、落ち着いてハクちゃん…!」
沈みゆく太陽と反比例して、怒りが頂点に達しそうなハクを慌てて宥めるアゲハ。
宿が見つからないのもそうだが、一番頭にくるのは…。
「くそ!全員、俺の頭を見てバケモン見たような顔しやがって…!」
「他の場所でも物珍しそうにされたことはあったけど、ここまで怖がられることは無かったのにね。
…顔が怖いとか、もうちょっとにこやかにしてみる?」
場を和ませようと言った軽い冗談だったのだが、余裕のないハクはアゲハの両頬を引っ張りながら怒る。
「悪かったなあ、悪人面でよ…。テメェはもう少し締まりのある顔しとけ…!」
「うう、いひゃいよ…」
アゲハの情けない声に溜飲が下がったのか、アゲハから手を離し周りを見渡すハク。
「とりあえず、島の奥を目指すか。さっき聞き込みして、村があるって言われたんだろ?」
「そうだね。でも、そんなに遠くはないみたいだけど、もう夕暮れ時だし危なくないかな…」
アゲハは摘まれた頬を撫でながら、心配そうに言う。
「どうせ宿に入れないんだ。辿りつけないようなら途中で野宿すりゃいいだろ」
言いながら近くにあった松明を一本拝借し、開けた道から森に入っていくハクを、アゲハは慌てて追いかける。
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