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永遠の別れ2

 キッチンへ行くと父さんと母さんがまだリビングにいた。こんな遅くまで珍しいな。2人の姿をチラリと見てから水を飲んで自分の部屋に戻ろうとしたところで母さんに声をかけられる。 「なに?」 「お式は来年中にしますからね」 「は? なにそれ。本人何も知らないところで勝手に決められるの?」 「あなたに任せていたら、いつまでも式を挙げないでしょう。あなたも2月には31歳になるし、千景くんも27歳になったしちょうどいいでしょう。いいえ、遅いくらいね」  婚約者が勝手に決められた次は、結婚式も勝手に決められるのか。 「俺、千景とは結婚しないよ」 「千景くんの何が不満なの? 先日も友子のところにお邪魔して千景くんに会ったけれど、とてもいい子よ。家事なんて家政婦に任せてもいいのに、自分でもできるようにってお料理教室にも通っているのよ。気立ても良くて千景くんがお婿さんに来てくれるなんて嬉しいわ」 「それなら母さんが結婚すればいいだろ。大体、令和のこの時代に婚約者とか古いんだよ」 「何馬鹿なことを言っているの。結婚相手は重要よ。この宮村家に入って貰うのだから。その点千景くんなら問題はないわ。出身学校は違うけれど、いい学校を出ているし、友子は旧子爵よ。身分的にも申し分ないわ」 「そのさ、旧子爵とかいつの時代だよ。華族制度は昭和に廃止になってるよ。それをまだ言うのかよ」  昭和22年に華族制度が廃止になって70年以上が経つ。それなのにまだ華族に縛り付けられている。父さんは何も言わないけれど、結局は賛成しているということだ。少なくとも反対はしていない。会社存続なんて兄さんがいるんだからもういいじゃないかと思うけれど、母さんには伝わらない。 「廃止になっても大事なことです」 「俺は絶対に結婚しないからな。もう心に決めた人がいるんだ。認めてくれないなら家を出る」 「何馬鹿なことを言っているんですか! いいですか、家柄のハッキリしない子は宮村家の敷居はまたがせません」 「許して貰えないなら勝手に出て行くよ。おやすみ」  我ながら子供じみた態度だとは思うけれど、家柄の話しは今始まったことではなく、親が勝手に決めた婚約者との結婚の話しも嫌になるくらい話してきている。それでも、1ミリも進展しない話。母親は婚約者との結婚を望んでるし、俺は和真との未来を望んでいる。  確かにベータである和真とは結婚することができない。男同士で結婚できるのはアルファとオメガの場合のみでその他の同性との結婚は認められていない。だからアルファの俺とベータの和真では結婚ができないのだ。でも、そんなこと関係なく母さんは和真のことを認めてはくれないだろう。なぜなら和真の家庭は普通のサラリーマン家庭で、両親も庶民で旧宮家・公家・華族などではない。だから絶対に望みはないのだ。  部屋に戻り、ベッドにドサリと横になり大きなため息をつく。  絶対に和真を認めてはくれない母さん。かけおちなんてせずに認めて貰おうとする和真。確かに和真の言う通り認めて貰えるならそれに越したことはない。でも、結婚の認められていない男のアルファと男のベータ。それどころか庶民。どう頑張っても”釣り合わない相手”だ。  母さんを攻略するよりは和真を攻略する方が簡単かもしれない。結婚を来年なんかに決められるのなら悠長なことは言ってられない。早く家を出ることを和真に納得して貰わなければ。とりあえず4日に会ったときに話すかな。
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