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第21話 肉欲

21話 肉欲  リョウが退院してある程度時間が過ぎ、今日もリョウは一人部屋で暇していた。  ガルゴは職場で仕事をし、遊び仲間とは連絡がとれず。外にだってガルゴと一緒でないと出られない。  それに加え、ガルゴと夜のことで満足がいってなかった。傷つけたくない、まだ体は治りきってないだろう?という文言を並べ最後までしたことが無かった。  欲望に忠実に生きていたリョウにとって欲求不満が溜まりに溜まり、この前爆発し暴れたがそれも子をあやすように対応され相手にしてもらえず呆れた。  またガルゴが落ち着いてきた雰囲気も感じる。リョウの行方不明が堪えて一時的におかしくなっていただけなのか、あのギラギラした欲望が感じられなくなってきた。 「あぁ~。」  ソファの上で伸びをして声を出しても、何もなく。窓から見えるうざいほどスッキリした青空が、反射して部屋を青くさせて部屋の中を冷たくする。  ふと、窓際に立ち窓に触れる。指先に冷たさを感じ背中を向け寄りかかる。  ぼうっとリビングを見渡す。一人暮らしにはどう見たって大きすぎるその部屋はガルゴのものに溢れていた。勿論、自分のものは自室にあるのだがそのリビングにため息をついて目を閉じた。 「リョウ……リョウ……。」  そんな自身を呼ぶ声で目を覚ます。  ほらすぐに彼の顔が見える。目を閉じて夢の世界へ行っても、すぐに彼の顔が微笑みがそこにある。  別にそれにそこまでうんざりはしていなかった。最近似たようなことがあった為、すっかりそんな生活には慣れていた。欲望が発散できないし飛べる薬がないのが問題だった。 「そんなところで寝てたら風邪引く。ほら、こっちこい。」  そう言ってガルゴはリョウを抱きかかえてソファに座らせる。 「ねぇ……ガルゴ。」  袖をつかみ声を出す。寝ぼけたような声になりちょっとだけ自身にムカつきながらガルゴを見やる。 「ん?どうした?」  そんなリョウに何気なく返事をするガルゴ。 「今日出かけたいんだけど?」  ハッキリした口調でそう言うと、ガルゴは眉をひそめ彫りの深いその目元に影を濃くする。 「なら一緒行こう。どこに行くんだ?」  ソファに座ってるリョウを見下しながら言うその姿に、腹立たしさを感じながらも平然に答える。 「一人で行く。バーに顔出すだけ。すぐ帰ってくる。……これでいいでしょ。」 「駄目だ。」  立ち上がろうとしたリョウを押さえつけるように両肩を掴む。 「離せよ。」  彼の手に爪を立て顔を歪ませて悪態をつく。 「……今日はもう飯食べて寝ような?」 「やめろってそういうの、俺の好きなように過ごさせろよ。」  ガッと彼の腹を蹴る。 「っ!リョウっ!」  両手に力がこもりリョウの肩に爪が食い込む。ガルゴは慌てたように言う。 「バーに行きたいんだな?なら、一緒に行こう。あの二人が居なかったらすぐ帰ろう。」 「……嫌なんだけど。てか、痛い……。」  両手を離させようとわざと赤くなるように右手を引っ掻いてやった。 「……っ。」  手は力が緩みダラリと重くなった。何かを噛み締めるような顔をして、頭を下げてガルゴは体をわなわなと震わせている。  ガルゴがリョウの上に項垂れるようになったのをリョウは歓喜して受け入れた。それを悟られないように、ガルゴの無防備になった心の奥底にある傷跡に触れる。  ガルゴの両手を優しく掴んで自身の首に持ってこさせる。 「……リョウ?」  顔を上げ青白い顔で目を丸くしたガルゴは手を離そうとするが、リョウがそれを押さえつける。暴れれば暴れるほどリョウは力を込めガルゴの手と共に自身の呼吸を荒くさせる。 「……っ、はぁっ、はっ!」 「やめろっ!やめろリョウっ!」  ガルゴは今度は顔を赤くして汗をかきながら叫んでいる。その表情を見てもう少しだとリョウは抵抗し続けた。  バンッ!  弾け飛ぶような鈍い音がしてリビングは静かになる。  ガルゴはハッとしてリョウの方を見る。リョウの抵抗にガルゴは勝ったが、それは大きく振り落とされリョウの頬を叩いた。 「あ、ぁ……。」 「ガルゴ、なぁに……ね、それ。」  ぐいっとガルゴの頬を掴み顔をこちらに向けさせる。その表情は眉を下げ怯えた子犬のような情けなさを持ちながら、口角は上がり、紅色に染まった頬にえくぼができていた。 「へ?」  何とも間抜けな声を出すのでリョウは笑ってしまい。ガルゴの困惑は増すばかりであった。 「……っ、はは、ガルゴ笑ってるよ。」 「は?ぁ……いや、リョウこれは……。」  自身の顔を手で隠しガルゴは言い訳のような言葉をつらつら並べ、リョウの頬の心配をし許してくれと言う。 「ガルゴ……やっぱりこういうのが好きなんだね?」 「……は?違うっ!俺はそんなんじゃない!」 「嘘、ガルゴはそういう人間なんだよ。」 「違うっ!」 「俺に暴力して、どんな気持ち?ねえ?」 「やめろ!違うんだっ!!」  叫ぶようにガルゴは言い放ちリョウの胸ぐらを掴む。リョウの体は半ば浮いたような姿勢になりながらも言葉を続ける。 「ガルゴ、トウマとやってること同じだよ。」 「は?」 「俺に外に出させないで外との連絡も絶たせてさ。」 「それはっ、それが一番いい方法だから……そもそもっ!お前が色んなところで遊んだりしてっ!!」 「でも、トウマの方が良かったかも?」 「……、……は?」  ガルゴの表情は今まで見たことのない無機質な顔になり澄んでいた瞳が真っ暗に見えた。そして次にくる行動を予想してリョウは背骨をゾクゾクさせた。  リョウはソファに投げ捨てられ顔面を二度殴られた。ガルゴはそのまま首に手をかけ血管が浮き出るほどの力を込め締め付けた。 「ぅ゙うぅ……グ……ッガ!」  喉の奥から空気が抜け変な音がリョウの口から出る。 「っ!お前の為に!……っ、どれだけ!!……お前がそんなんだから!!俺はっ!」  それにリョウは満面の笑みを浮かべ目をぐるりと天井に向かせる。足を暴れさせたり手をガルゴの上腕に力強く握りしめたり抵抗はするが、手自体は触れずに好きにさせた。 「はぁ……っ、リョウっ、リョウ……。」  名前を呼ぶ彼の声に反応するようにビクッと手を跳ねさせたり、ぎゅっと脚を絡ませると何かを察したようにガルゴは薄ら笑いをする。 「はっ、はっ……お前、ほんとどうしようもねぇな。」  片手がリョウの首から外れしたに下がっていき、リョウの膨らんだモノをズボン越しに撫でる。それにリョウの脚はぎゅっと閉じらさる。  ガルゴは首から完全に手を離すと、リョウは咳き込み風切り音のような呼吸音を響かせる。ガルゴはそんな無抵抗なリョウのズボンを下ろしていき鼻で笑う。 「お前ってのはどうしてこんな……はぁ……。」  下着にシミを作っているそれを膝でグリグリと押すとリョウは嬉しそうな甘い声をあげる。 「なぁ……そんなのどこで覚えたんだよ。おい、いつもそうさ、俺の知らないところでなにをしてたんだ?え?」 「……はぁ……あっ、ぁあ、それ、好き……。」  体重をかけてやると背中をそらせ赤くなった顔で大きく口を開け笑う。 「っ……そうかよ!」  またそんなリョウの顔面を殴り付け、下着を完全に脱がせてしまう。 「うぅ……はぁ……ガルゴ、どんな気持ち?今の気持ち教えて……。」  殴られ鼻血を出しながらリョウは輝いている目をガルゴに向ける。  ガルゴはリョウのことを見ず苛ついているのかリョウの腕を強く握る。 「はぁ、はは、最悪だよ。」  すると、ガルゴは自身のズボンのベルトを外し前を開ける。 「……お望み通りにしてやるよ。」 「っ、はっはは!ガルゴっ!」  リョウは満面の笑みを浮かべた。ガルゴはリョウの下着を脱がせた時にはもう分かっていた。リョウはもう準備を終えた後であり。これはきっとリョウが欲望を満たすために仕組んだ罠だったと。  試しに指を一本入れてみるとリョウの後ろは簡単に受け入れていき、そんなリョウはしたり顔でガルゴの頬を撫でた。 「んっ……ぁ……。ガルゴの指、温かい。」 「っ、はぁ……。クソっ……。」 「あっ、ぁあ……ぁ、そこ……んっ……分かる?そこ……良い所。」  指を進ませるとガルゴに優しく指示してくる。 「っ、うるせぇ……。」  指を引き抜くと事前に仕込んでたのかローションらしい液で指と蕾に糸が引く。 「……まだ慣らしたほうがいいか?」  勝手の分からないガルゴは指を増やした愛撫を始め、リョウは更に腰を跳ねさせる。 「ぁあ、そのまま……三本入るくらいまで。」 「……わかった。」  水音が部屋に響き、お互いの呼吸音がうるさく感じてくる。下だけ何も布がないリョウは扇情的で、ガルゴのモノは熱を帯び始める。すると、そんなガルゴにリョウの足が伸びてきて先端を擦る。 「っやめろ。脚、ちゃんと開け。やりにくい。」 「んっ……何もしないのは寂しそうだったから。」  ニヤニヤと笑うリョウを見て体がさらに熱くなる。ガルゴはわざとらしく乱暴に指をリョウの内壁に擦り付けた。 「っ!」  絡みつくような粘り気のある水音を鳴らしながらその蕾を弄る。時折、リョウの足が跳ねたり上擦った吐息が漏れた。 「はっ……、も、もういいから。そんな、早く……。」  指の出し入れを何度もしていると、リョウはガルゴの肩を軽く足でつつき、上目遣いで催促する。 「分かったよ……。っ、締め付けすぎんなよ。」  そう言うとガルゴはリョウのそこに合わせ調節すると、腰を両手で鷲掴みにし一気に突き上げた。 「っぎ!!」  リョウが濁った声を上げ体を丸めると、それを気にしてないように腰を打ち付ける。 「ひっ!ぁ、あっ痛いっ!痛いっ!」  叫び、しがみつき、その痛みをガルゴに訴えるがガルゴは動きを止めず笑う。 「なぁなぁ!こういうのがいいんだろ?慣れてるんだろ?えっ?」  その声には怒りと嘲りが含まれ、リョウを身体と心で嬲っていく。 「……ぅ、っはぁ、はぁ、ふぅ……んっ!」  眉間にしわを寄せながらも息を整え、慣れているのかすぐにそれは快楽に変わる。 「っ……は、あっ!ぁあ……ひっ!」  次第に声に甘さが現れガルゴに腕と足を絡ませる。 「っ!もっと……ぁ、もっと見せて……。ガルゴの深い所……。」  ガルゴの胸に顔を埋め微笑む。そんなリョウに困ったように眉を下げガルゴは言う。 「……お前は、俺に何を……望んでるんだ?」 「俺の望み?俺はガルゴと一緒になりたいっ!」 「それは……。」 「それは、普通に繋がるだけじゃ駄目。もっと深い所で繋がり合うんだよ。」  そう言うと笑いながら服をめくりリョウは自身の無数にある古傷を見せる。 「ね、もっと深い所。心かな?それとも……体内?俺はもうよく分からないよ。でも、そうじゃなきゃ満たされない。」  リョウはぐいっとガルゴの顔を引き寄せ口角を上げ歯を見せて笑う。  そしてまるで愛し合う恋人のように腕を首に巻き付ける。 「な?お前もそうだろう?」  ガルゴの手は震え、何か言おうとして何も出てこない口が間抜けに動くだけ。  リョウは確信していた。今まで心のどこかに開いた穴を塞ぐのはガルゴであると、今一つになって初めて自身は満たされるのだと期待に満ちていた。  ガルゴが自身と同じように、一般的、普通などといった言葉から外れて異常でイカれてる、そんなリョウと同じ場所に堕とす。他から疎まれ蔑まられるような場所へと。  しかし、そんなことを考えていた高揚感はリョウの頬に雫が落ちて消えた。  ポツポツとリョウの顔を濡らしていくそれはガルゴの目から静かに落ちていた。

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