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1.本社経理の戸隠さん③

――――このことは内緒。ね?  コンドームのパッケージの角を咥えて上目づかいで戸隠さんが言った。  さすがに昼休みとはいえ営業時間中に生でパイズリの上、顔射やパイ射なんかしたら後が大変だから当然と言える。  戸隠さんは俺がジッパーから取り出したギンギンにいきり立つムスコの頭を優しくなでなでして、ゴムの帽子をかけてくれる。そのソフトタッチだけでうっかり暴発してしまいそうだった。  その上で手とつややかな唇を使い、慣れた様子でゴムをかぶせてくる。ラテックス越しとはいえ、熱くて柔らかい咥内と、うねる舌と、筒先が突き当たる喉の感触に俺は必死に耐えた。まだメインディッシュの雄っぱいに到達すらしていないのだ。 ――――はい、どうぞ。  パチン、と根元まで覆われて、ボタンのはじけたシャツの穴へと誘われる。突き入れるとすぐにふわりとした肉厚に触れた。そこに裏筋を滑らせながらさらに推し進める。戸隠さんの唾液のぬめりを借りて、俺は胸筋の谷間で存分に抽挿を楽しんだ。  正直、過去一気持ちよかったです。  ゴムの中で俺の劣情は散々跳ね回って、戸隠さんの胸を揺らした。ここ数年のオナニーではありえない程たっぷりねっちりと出た。戸隠さんが来る前に一度抜いていたのに関わらず、だ。 ――――いっぱい出たねえ。  白濁の入ったゴム付きの脱力ムスコが服の間からずるっと出てくる。それを「若いねえ」というニュアンスを含んだ声色で戸隠さんは笑った。  ほにゃとしたたれ目の微笑み。業務にくさくさした心が一瞬で浄化された。  「……聖母かよ……」  俺は午後からの業務などまったく手につかずに、デスクで火照った顔を両手で覆った。それを隣の同僚がキーボードをたたきながら横目で見てくる。 「お前、昼休みに手洗いから戻ってきてから、なんかおかしいぞ。熱でもあるんじゃねえの?」 「そうかもね~」  俺はぼんやりと答える。  そう、これは熱だ。  もう明らかに恋の熱。  思春期に初めて知った股間を疼かせる甘酸っぱい初心な情熱。  切なくて、愛おしくて、ここ数年は仕事の忙しさを理由にして離れていた懐かしい感覚。  嗚呼、戸隠さんにまた会いたい。  あんなにこってりといやらしく触れ合ったっていうのに、すぐにもっともっとと欲しくなる。 「戸隠さんは?」 「もう本社戻ったよ。はぁよかった。あの人がいると緊張するからな」  俺が尋ねると同僚はそう言って腕を高々と天井に向けて伸ばした。  対して俺はぶーたれたまま、ゆるゆるとマウスに手を伸ばす。社内ネットワークで共有している業務カレンダーをあけた。  彼が本社から営業所へやってくるのは二週に一回がせいぜいで、ひどいときは月一しか来ない。  来ない方がいいのだ。彼がくるということは、本社がその営業所に対して財務的に睨みを見せる必要が見つかった時だから。  幸いにして現在のうちの営業所はそういうこともなく、だから戸隠さんは本当に月一しかこないし、ガン詰めで手抜きを締めたらだいたい半日で本社に戻ってしまう。 「くっそ。横領でも収賄でもやってやろうか」 「え、お前何物騒なこと言ってんの? ストレスたまってる?」  俺の物騒な企みに、同僚が怪訝な顔をする。  ストレスは溜まってない。むしろ気持ちよくミルクタンクが空っぽになるほどさっき抜いてきた。  溜まっていくのは戸隠さんへの憧憬だけ。 「冗談だよ」  しかし、そんなことをオフィシャルな空間で言えるわけもない。  恋愛は自由だが、デリケートなネタで社内の人間関係やコミュニケーションの風通しを悪くするのは厳禁なのだ。

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