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9.ラブホテルで戸隠さんと②
「体は洗ってもいい?」
すっかり灰汁が抜けた感じの戸隠さんに、泡で出てくるタイプのボディーソープを掌でくるくるとなじませて尋ねる。戸隠さんはしばらくぼんやりしていたが、髪をかき上げてから自分もボディーソープを手に取った。
「僕も湊人君のこと洗って良い?」
「洗い合いですかぁ? それってやらしくない?」
俺は意地悪くニヤニヤ笑う。
戸隠さんは少し恥ずかしそうに視線を逸らした。可愛い。
「ただ洗うだけ。デリケートなところは自分で。それでよくない?」
「いいですよ。じゃあ俺が触れるところに戸隠さんも触れて」
まず肩に触れて、普通にくるくると肌を撫でるように洗う。触れた瞬間少し強張ったので、力加減を調節する。ふっと力が抜けた。
「これは大丈夫?」
「平気。湊人君は?」
「大丈夫。じゃあ、次は腕でいい?」
「いいよ」
「じゃ、手を繋いで」
泡だらけの手を合わせ、指を絡ませて、揉み込むように動かす。これは比較的抵抗がないらしい。
「キモチいい」
「こってますね。お風呂上がったらハンドクリームでマッサージしましょうね。はい、次は手首から脇に向かって……」
ボディーソープを足して手首から上腕へ向かって洗い合う。手が腕を遡っていくときに少し硬くなるものの、しばらく繰り返していると解れてくる。
「くすぐったい?」
「最初は、ちょっと。でも今はなんか、あったかい」
「リンパが流れてるんでしょう。そのまま肩から首筋」
俺の手が先に鎖骨を辿って首筋から耳の後ろへ滑っていく。戸隠さんはぴくっと首をすくめて体を震わせた。
「あれ、感じちゃった? やらしい気分になるなら、やめましょうか?」
「ううん……いい」
戸隠さんの長い指が今度は俺が辿ったのと同じルートを滑る。背筋がゾクゾクする。久しぶりの感覚だ。気持ちいい。
「軽いキス……していい?」
お互い首筋に手を添えた状態で自然と唇が互いを求める。首筋は撫でるように洗い合ったまま唇が重なる。昼間のようなキスはしないと決めていたから、ただ唇の表だけを重ね、角度を変えて、軽く繰り返す。ちゅ、ちゅちゅぶ、という音が浴室に卑猥に響いていた。
その間に俺の手は首筋から胸へと降りていく。その動きを追って戸隠さんの手も俺の胸に触れる。柔らかな胸筋の丸みを、その先に実る果実を、ボディーソープのぬめりを借りて指先で、掌で互いに堪能する。キスに意識を半分奪われるからか、触れてる場所の割に戸隠さんの抵抗は少なかった。
俺の興奮は腹につくほどに強く勃ちあがって、腹筋をたたく。イキったムスコがビクビク揺れて我慢汁を垂らしていた。
対する戸隠さんの反応は割と控えめだ。ただこれまでの付き合ってきた相手との経験上、別に珍しくはない。48歳というのは男の更年期が来てもおかしくはないし、彼は16年間まったくセックスしていないのだ。忙しくて自分で発散することもなかったのなら、年齢相応に機能が衰えていてもおかしくはない。
「はぁ……」
お互いにすっかり茹だってしまった頭で額を合わせ、見つめ合う。
「背中、どうやって、洗おっか?」
問いかける蕩けた戸隠さんの顔がセクシーで、俺は正直我慢ができなかった。
「美弥さん……っ!」
泡だらけの体で戸隠さんを抱きしめて背中に腕を回す。その衝動は戸隠さんも同じでお互いの欲望を二人の間で挟み込み、押し付け合い、かき抱くように背中を撫で回る。
唇を唇で食みあい、ふれあわせ、深く重ねる。あわせた隙間から舌を差し入れ、歯列を割り、侵入し、絡め、撫で、吸って、舐める。
ちゅ、ちゅぶ、ぬりゅ、と粘度の高い音がバスルームに反響し耳を犯す。
湯気と高まる体温に意識が朦朧として理性が飛ぶ。
互いを求め合い、かき抱く腕や手、強く触れ合う肌が滑る。
全身が性器になったように興奮が背筋から脳髄に駆け上ってくる。
「あ、あ……ん……っ、い……はっぁ……もっ」
触れ合う肌の熱さが心地よい。俺は戸隠さんの腰を強く両腕で抱きしめ、戸隠さんはしなやかに背を逸らす。キスも忘れて興奮を擦り付け合い、互いの欲望が果てる先へ意識を飛ばした。
「あ、あ、あ、湊人君……だ、だめ……ぁ、出る、出ちゃう……!」
「いいよ。出して、美弥さん。俺に……かけて。美弥さんのものだって、匂い、つけて……好き、大好き……ふ……っん……あ、うぅ、俺も、出るっ……イクッ……い……っ!」
「イッて。湊人君で……僕を…………ん……ぁあ!」
俺の溜めに溜めた欲望がはじけ、戸隠さんの胸、鎖骨、首筋、顎を欲望の飛沫で白く穢していく。
俺の太ももには戸隠さんの白濁がどろりと滴っていった。
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