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10.朝と夜と戸隠さんと①
浅い眠りから覚めて、枕元を見る。携帯のボタンを押して時間を確認して、だいたい4時間くらいは眠れたらしいと知る。
体を起こして背伸びをする。部屋の中は快適な室温に保たれているのだが、布団の中が温かかったので素肌には少々寒く感じられる。昨夜は戸隠さんが布の擦れる感覚を嫌がるので二人して裸で眠ったのだ。
文字通り眠っただけ。
眠る直前まで互いの身体を手で触り合ったりくすぐったりして戯れてはいたけれども、風呂の湯で体力削られたサラリーマンに睡魔は容赦なかった。興奮するよりも先に、気絶するように二人とも眠りに落ちた。
俺の隣では静かな寝息をたてて戸隠さんがまだ深く眠っている。ふわふわの髪が額から頬にかかっていて、そっと指で払って現れた横顔は無防備で可愛いかった。
体の中心がむずむずする。朝の生理現象に便乗して俺のムスコがゆるゆると勃ちあがっていく。しかし本日も仕事なのでここでゆっくりいちゃつくわけにもいかない。
背後の鏡には頭が大爆発した俺の姿が映っている。乾かさずに眠ったせいだ。
俺は戸隠さんの肩に布団を引き上げて、起こさないようにそっとベッドを抜け出した。
いきなりシャワーを出すと水音で目覚めてしまいそうだったので、湯船に残ったお湯をそっと手桶に汲み上げて、それを朝から元気なムスコにかける。萎えるかと思ったら、思いのほか湯はまだ温かく、ムスコはあいかわらず元気なままだった。
「しかたない、か」
ちらっとベッドの方を様子見て戸隠さんがまだ起きていないのを確認する。
シャンプーの横に置かれたローションに手を伸ばす。たっぷりと取って掌で温めると、ゆるゆると起きだしたムスコに擦り付けた。
目を閉じれば暗闇の中、手探りで知った戸隠さんの身体が思い出される。
滑らかで、適度に張りの残る肌。
豊満な胸筋。
ほっそりと締まった腰つき。
小ぶりだが肉付きのいい柔らかい尻。
むっちりとした太もも。
その奥にある誰にも触らせたことのないはずの処女穴。
同じボディーソープの匂いに絡んだ甘いボディーパウダーに似た彼の体臭。
くすぐったいと身を捩った場所に触れるたびに微かに漏れる、舌足らずな高めのセクシーボイスと熱い吐息。
――――ネコになって、あげよっか?
主に媚びる飼い猫のように、しなやかで婀娜っぽい媚態。
可愛くてセクシーなこれまでの戸隠さんが全て思い出されて俺の興奮が急激に高まる。手元が忙しなくなって息が上がった。
「よ、美弥さん……美弥さん…………いい……いいよ……あ、あ、ぁい……いい、イイぃ…………い、い……クっ……………………っん!」
息が詰まる。
ぱたた、と風呂場のタイルをたっぷりとした白濁が勢いよく飛ぶ。
興奮の波が去って行くのに従って深く息を吸ったら、心臓が強く早く脈打った。
ふと、戸隠さんが気になってちらっと背後を伺う。
「あ……」
透明のガラス越しに、繭状態で布団に潜り込んだままこちらを見ている戸隠さんと目が合う。可愛いんだけど、ちょっと恥ずかしい。
「おはよう」
「お、はよう……ございます。いつから?」
「僕の名前を呼んでたくらいからかな。朝から元気だね」
ふふふ、と戸隠さんは綺麗な笑みを見せる。
起きているならいいか、と俺は頭を振って羞恥を振り切り、立ち上がる。カランを勢いよくあけて、強くて熱いシャワーを遠慮なく頭からかぶった。
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