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11.戸隠さんとカウントダウン⑥

 シャワーの音が風呂場に響く。  その音に紛れて俺たちがキスをする音が反響した。 「ん……っん……はっ……ぁ……ん」    戸隠さんから前のほど触れられることに抵抗は感じられなかった。俺たちはリラックスしてキスを交わし、じゃれながら互いの髪や体を泡だらけにして、肌を擦り付けあい、シャワーで流し合った。  湯気が風呂場に充満して、熱気に戸隠さんの白い肌がますますほの赤くなる。鋭く見える眼鏡がない素顔がぽやんとしてかわいい。  今なら、と俺は抱きしめたまま、背骨を辿る指先を双丘の割れ目に滑り込ませ、その奥にある秘穴を探った。 「あっ……」  戸隠さんは一瞬だけ身体をこわばらせて、きゅっと入り口をすぼめたけれども、首筋にキスを落とすとすぐにとろっと蕩けて、俺にしなだれかかる。  俺はゆっくりと彼の中へ指を進めていきながら耳元に囁いた。 「柔らかいね。オナニーはしないとか言ってませんでした? それともどこかで準備した?」  戸隠さんは顔を真っ赤にしてふるふると首を振るだけでこたえない。  夜な夜なきっとあのエネマグラで一人花蕾を解しているのだろう。そんなこと、バリタチを自称するなら言えるはずはない。  わかっていて俺は意地悪に尋ねる。 「それとも、実は誰かと、シタ?」  ばっ、と戸隠さんが俺の顔を見た。  傷ついているようにも、恐れているようにも見える。 「それは……ない、よ」 「でしょうね」  俺は戸隠さんに壁に手をつくようにそっと導いて、足を広げさせる。 「おしり、突き出して」  優しく命令すると素直に彼は従った。   浴槽の中に座る俺の目の前に、戸隠さんの綺麗なお尻が丸見えになっている。 「……はずかしい……」 「ここには俺と美弥さんしかいません。大丈夫。痛かったり、気持ち悪かったら言って。すぐにやめますから」  俺はぷるんとつり上がった桃尻の肉を少しかき分ける。体毛が薄くてよく見える秘穴に親指を這わせる。うっすら縦割れ気味だが、色はきれいなピンク色をしている。ベッドでも風呂場でも俺に悪戯されて、ヒクヒクとゆるく蠢いて淫らに誘う。 「すごく綺麗だ……誰にも蹂躙されたことのない色をしてますね」  人差し指と薬指で左右に押し広げて、中指を軽く出入りさせる。 「ぁ……あん……ん……んぁ」  シャワーの音に紛れて、舌足らずで高めの甘い嬌声が響く。風呂場という密室に声がこもって耳に心地よい。  その穴に舌を這わせ、溢れる唾液を流し込んでじっくりと解していく。  ポタポタと戸隠さんのほんの少し勃ちあがった筒先がだらしなく先走りを漏らす。開いた方の手で亀頭に擦り付けるように玉袋ごともみしたく。ピクピク反応して、かすかに花芯がさらに筒先をもたげた。 「気持ちいい?」 「ん、も……もぉ~……だめぇ……」 「ダメなの? やめようか?」 「ぃや……いや……やめないでぇ…………イ、きた……ぃ」 「お強請りして」  足下からちらっと上目遣いに見る。戸隠さんは泣きそうな顔で壁についた腕越しに俺を見下ろしていた。 「……いじわる……」 「欲しがってよ。そしたら何でも応えてあげる」 「イかせて………………ください」 「どっち? 前で? 後ろで?」 「~~~~~…………ダ、したい」 「おちんぽね」  敢えて下品な言い方をしてペニス全体を掌に包み込み、揉み込みながらもう片方と舌で会陰と秘穴をさらにしつこく柔らかく解していく。  割と未経験者だと前立腺を刺激してやればちんぽが勃って、射精すると思いがちだ。でもそう簡単なことじゃない。  ナカイキには快楽を拾う感受性の才能とコツが居る。それは射精感と基本的に別ラインにある快楽だ。  真性ネコの多くは天性としてこの快楽に適しているので勃たなくても中で女の子みたいにキモチヨクなれる。これは才能だと思う。  一方でタチからのネコ転向の場合、多くはそうじゃない。調教がうまくいってナカイキ出来るようになっても、その後で勃起を沈めるために後戯で公開オナニーをすることもある。これが時には寂しさや羞恥に繋がって、すっきり出来なかったりする。  同時にできればいい。  俺が開発するときに目指すのはここだ。ウリ専だった頃にネコ転向のオジサン達から人気だったのは、この感覚を限りなく一致させるように相手の体を躾けるから。誰にでもできるものではないけれど、体がそういうものだと覚えてしまえれば、尻穴にローターを入れさえすれば女性とのセックスもタチとしての立場も守れる。その上で打ち止めになっても、まだ中で楽しむことはできるので一晩中キモチよくいられる。  戸隠さんの体を、そんな風にしてみたい。  タチの矜持を失うこと無く、でもタチとして楽しむためには中も責められないとイケない体に。  8年ぶりのムラムラとした雄の欲望が俺の中で滾る。  じゅるると秘穴に唾液を流し込んで、中指をそっとさらに奥へ忍ばせる。 「あ……っ!」  慣れない感覚にきゅっと入り口がすぼんで指を咥える。ちょっと強めの甘噛み程度だ。 「痛い?」 「……くは、ないけど……変な、感じ」 「そのままで、リラックスしてて。大丈夫だから」  ペニスへの刺激をとめることなく、同じ程度の強さで中を探る。時々指先がイイトコロに触れるのか、桃尻がぷるりと何度か震える。そのタイミングで花芯と玉を扱いてやるとゆるゆるとまた勃ちあがっていった。 「キモチいい?」 「ぅん……きもちい……ぁあ、あぁん……あ、あ……」  こくこくと戸隠さんは必死に頷く。中を探る俺の指をねっとりと入り口が締め付けて、中のうねりが花芯の脈動とシンクロする。  16年。性の魂動を眠らせていた体が、再び目覚めようとしているのを感じる。それはまるで眠り姫の隠喩のようで、俺をひどく興奮させた。 「あ、あ、あ、あ、ぁあぅ……ぅぅ……すごっ……あぁ……あ、あ、クるっ、あぁ! なんか、クるっ! ん゛ぅ~……ん゛~ん゛~っ!」  中の痙攣の感覚が短くなってくる。それに併せて前の刺激を強めに変える。亀頭を真っ赤にした花芯は水平より少し下がる程度にまで勃ち上がり、裏筋を滑る掌に熱い命の脈動を感じる。相変わらずゆるい筒先からはたらたらと透明の涎が浮き出ていて、そのぬるつきを利用して俺はさらにペニスへの刺激を濃厚にした。 「も……おね、がい……湊人、くぅ……ん」 「ん? どうしてほしいの?」 「ぃ……じわ……る……ぅ」 「おねだりして」 「イかせてぇ。おねがい……ぃ」  にやっと笑って、俺は花芯を早くリズミカルに刺激する。一方で中の指が知った戸隠さんのイイところも甘く指先でひっかくように刺激していった。 「あ、あ、あ、あ、いい……いい……イク、イッちゃう!」  中がぐっと緊張する。同時に綺麗に割れた腹筋と腸腰筋に力が籠もって、背中が丸まった。  ぱた、ぱたたと白濁が風呂場の壁に飛び散る。この間よりも量も勢いもある。急に中が緩んで、桃尻から太腿が何度もビクビクと震えた。  俺は指を引き抜いて立ちあがる。足をガクガクとして立っていられない戸隠さんを背後から支えてゆっくりと浴槽に座らせる。彼はトロトロに蕩けきって脱力し、ぴくぴくと不随意に痙攣して完全にトんでした。  紅梅のような乳首がついたほんのり桜色の肉厚の雄っぱいの婀娜っぽさに喉が鳴る。すでにムスコは臨戦態勢だ。  でもまだだ。まだ足りない。  俺は戸隠さんの体液にヌルつく手でムスコに触れる。完全に無防備になってしまった戸隠さんの視点は定まっていない。それでも彼に見せつけるようにこすり続ける。背徳的な行為に背筋にぞくぞくと興奮が駆け上がっていった。 「っん……イく!」  戸隠さんの胸を、首筋を、俺の白濁が無遠慮に汚していく。それはシャワーの水流に押し流され、塊のまま腹へ、さらにその下へ流れていった。  きゅっとシャワーを止める。ゴボ、ゴボリと排水溝へ水が流れていく。  熱気が籠る静かな風呂場には、興奮冷めやらぬ俺たちの荒い呼吸音だけが響いていた。

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