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第27話
休日を利用して健康診断を受けに行った。尻の具合いもよくなり、身体はすっかり元通りで気持ちが自然と上がる。ここのところ家と学校の往復だけで気づまりしていた。
商業ビルに入り、雑貨店や洋服やを冷やかしていると一際目を引く女性が目に入った。
ボディラインに沿った真っ赤なワンピースに女優のようにセットされたワンカールのヘアスタイルは大翔の奥さんだ。確か沙良といったか。
だがなにより驚いたのが沙良と腕を組んでいるのが大翔ではなく、見知らぬ若い男だ。
豊満な胸を男の腕に押し当てて親密さが伺える。
(まさか大翔がいるのに浮気?)
あんないい男を旦那にして浮気なんて信じられない。
身体の向きを変えて二人の後を追いかけた。夕方の都心は人通りが多いので身を隠しやすいが、見失わないようにするのが難しい。
二人は周りの目を気にすることなくホテルへと入って行った。いわゆるラブホテルでそこで行われることは一つだろう。ネオンのどぎついピンクが目に焼きつく。
慌てて駅へと戻った。胸を押さえると心臓が痛いくらい拍動している。
とんでもない場面に出くわしてしまった。しかも後をつけるような姑息な真似までして。
夫婦のことなのだから自分が口を出せるはずもない。けれど浮気をする人は誰であろうと軽蔑する。
(でもだからと言って大翔に告げ口なんてできないよな)
大翔がショックを受ける様子が思い浮かんだ。最愛の妻が浮気をしていたら誰だって落ち込むだろう。ただでさえ母親が病気で入院して気苦労が多いだろうにこれ以上の負担をかけたくない。
自分では抱えきれない秘密に呆然とするしかなかった。
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