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第35話
家に帰っても気が休めない。
掃除は半月もしていなくて埃まみれだし、洗濯も溜まってしまい着る服がなく、比較的きれいなものを着まわしている。自炊なんてする暇もなくコンビニ弁当ばかりで飽きてしまい、食事を抜くことが増えた。
(想像以上の忙しさだ)
年が明けると共通テストがあり、各大学の受験も始まる。
年内に推薦や専門学校に進学することを決めたクラスメイトが半分、残りは死に物狂いで勉強しているなか、教室をまとめるのがしんどい。
進路を決めた生徒は残り少ない高校生活を楽しもうと騒いでいるが、それどころではない生徒からはピリピリしたムードが漂っている。
触ったら切れてしまいそうな空間に身を置いているとこちらまでナーバスになってしまう。
精神的な疲労が蓄積し、胃痛が増えた。心労が溜まっているせいだろう。
そのせいで家事をやる気力もなく、風呂に入って寝て、学校へ向かう。その繰り返しだ。
帰ってそのまま洗面所で服を脱ぎ、溜まっている洋服と一緒に洗濯機に放り込んだ。
気力で風呂に入り、買ってきた弁当をちまちまつまんでいるとなんだか視線を感じる。
「誰かに見られてる?」
まさかそんなわけない。この部屋には自分しかない。
カーテンの隙間が開いているからそう感じるのだろう。閉じても皮膚がじりじり焼けつくような視線はなくならない。
よっぽど疲れているのだろう。神経が昂り、いつも以上に回りに気が張っているせいだ。
そう決めてベッドに潜り込むといつもと違う匂いがふわりと香った。
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