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第7話

「オレさ…狡い大人なんだ」 「え……?」 「ななちゃんが泣く姿なんか見たくないし、ずっと笑ってて欲しい」 「急にどうしたんですか?」 「だけど、そう思うのと同時にオレにはななちゃんが眩しすぎて…真っ直ぐすぎて…」 そう力なく呟く亮介さんの表情は凄く苦しそうで…でも俺にはその理由がわからなかった。 「俺だって、亮介さんのそんな苦しそうな顔…見たくないし、ずっと笑ってて欲しい…」 理由はわからないけど、俺だって同じだ。 好きな人には笑っていて欲しい…って、やっぱり好き…なのか、俺。 「あのさ…もしかして…ななちゃんさ、オレのこと…」 そんな事を考えていたからか、 「は、え?!何言ってるんですか?!好きじゃないですよ?!違いますから!」 亮介さんの言葉に動揺した俺は、絶対言っちゃいけない言葉を口走ってしまった。 「好きなんでしょ?」 「違うって言ってるじゃないですか!それに仮に好きだったとしても亮介さんは迷惑でしょ?」 「なんで?」 「え?」 「嬉しいに決まってるじゃん」 墓穴掘りまくりで思考回路が完全におかしくなってるとこに、亮介さんの意外な言葉に固まる。 「だっだって…気持ち悪い…ですよ、男同士で…」 「気持ち悪いなんてオレは思わないよ。じゃあさ、試してみる?」 「は?何を…?」 「キス…してみる?」 「え?!」 あまりにもびっくりして飛び起きると、掴んだ腕はそのままに亮介さんも身体を起こした。 そして昨夜未遂に終わったキスを改めてされそうになっているこの状況。 「ななちゃん、こっち向いて?」 「むむりです……」 迫る気配に昨夜よりも恥ずかしくてありえないくらい心臓がドキドキして、近付いてくる亮介さんの顔をただ固まったままで見ていることしか出来ない。 「すごい顔真っ赤だけど、大丈夫?」 「だ、大丈夫なわけないじゃないですか!」 「だよね。でもさ、ごめんね…キスはしないよ?」 「…………。」 キスするとかしないとか正直何を考えてるのかわからない。 そして亮介さんは更に意味がわからないことを口にする。 「……それは、この気持ちが本気だったらいつかその意味がわかるよ。」 「意味…それいつですか?」 「そうだなぁ…あと3年くらい?だから、今は───」 そう不確かなまま告げられると、 掴まれていた手首の内側に、 跡が残る程、キツくキツくキスをされた──…… ───── ───

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