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第9話

「あの時、ななちゃんはまだ若かったしオレを好きな気持ちも一時だろうと思ってた。だから、もしななちゃんの気持ちが本気だったら三年経っても変わらないと思ったから、ああ言ったんだ。だからキスをしなかったのもそれ。今はしちゃいけないって思った」 「…それって俺のために?」 「そうだよ。オレのせいでななちゃんの人生狂わせるわけにはいかなかった、一応オレも大人だから」 「それは……亮介さんはあの時俺のこと…」 「……好きだからあえてああ言ったんだよ。オレは本気で好きだったから悩んであの決断をした」 「じゃあ、もし俺が亮介さんの事を忘れてしまっていてたらどうするつもりだったんですか?」 「その時はななちゃんの一時の気の迷いだったんだって思って諦めようて思ってた。」 「そ、そんなの……」 「オレさ、ななちゃんと初めて会った時から性別とか関係なく素直そうで可愛いなって思った。話しをするようになってオレにはない純粋さやその笑顔にどんどん惹かれていったんだよ。だから、ななちゃんがオレを好きだって言ってくれた時は嬉しかった。けど、本当にこれでいいのかとも思ったんだ。だから、全てを封印して唯一ここに想いを込めた」 そうゆっくりと話す亮介さんがそこまで言うと、手首の内側を指先でなぞりあの日のようにキスをする。 「……こうして跡を残して、オレを忘れないようにって。」 そしてそこに込めた想いを俺は初めて知らされた。 そんな想いを知って俺が平気でいられるわけもなく、色々な感情は涙となって溢れ出す。 「俺…全然気付かなくて……」 「いいんだよ、ここでこうしてまた会えたんだから。約束らしい約束もしなかったのに会えたのはやっぱり気持ちは本物だったんだ。」 「ごめんなさい……」 そこまで考えていてくれた事に気付かなかった未熟さに泣きながら謝罪すると、頬に流れる涙を親指の腹で拭いながら亮介さんは優しく微笑んでくれた。 「オレの方こそごめんな。自分勝手だったと思う。ななちゃんの気持ちを知っていながら試すような事をした。やっぱり狡い大人だよ、オレ。」 「……もう、いいです……また会えて亮介さんの気持ち聞けて、もう俺はそれだけでも十分……だから……」 亮介さんが好きだ。 今でもこんなにも好きで、溢れる想いをどうしたらいいかわからない。 「そっか、ありがとう。じゃあ、そろそろオレも言ってもいいよな?」 涙でぐちゃぐちゃなままな俺と視線を合わせながら、確かめるようにそう静かに呟くと、 「好きだよ……葉月、ずっと好きだった────」 あの日聞かされなかった想いを告げられ、俺達は三年分の想いを埋めるかのように何度も何度も深いキスをした────

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