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第56話 魔王総受け

「とりあえず、先に確認したいんだけどさ。レアンからメロウを剥がせんの? 俺にはかなり複雑にレアンの魂にメロウが絡まっているように見えんだけど」 「カロン、視えるんですか?」  フェリムが驚いた声を上げる。  カロンは頷いた。 「多分だけど、俺の固有スキル……、『神実』の力なんじゃないかと思う」  この世界に来て、リリムが夜神に見えたのと同じだ。  リリム夜神はカロンの目を、真実を見抜く目と呼称した。 「しかし、メロウは最初からレアンの中にいたのですよね? 自分とレアンは同じだ、と話していました」 「だとしたら、一緒にいる時に気が付かなかったのは、変なのか」  何故今になって、レアンの中のメロウの魂が視えるのか。 「別に全然、変じゃないよ。メロウはレアンの命の奥に隠れていたんだ。今になって出て来て、レアンの魂に自分の魂を絡ませているだけ。だから中途半端にレアンに拒否られて、同化できないんだよ」 「つまり乗っ取りきれていない、と?」 「そゆことだね。人間と同化しちゃうと、天使は神界に戻れなくなるからね。混ざるのを躊躇した。だから今になって、混ざろうとしてんじゃないの?」  ラスの説明は、納得だ。  原作者がメロウは臆病だと話していた。その臆病さが行動の優柔不断さに繋がっているように見える。 「本当は混ざりたくないけど、人間と同化しないと逃げきれないくらい、追い詰められてるってことか」  智天使プシュケが大天使メロウの動きを不審に思って動き出したのなら、女神アメリアの居場所も幽閉の犯人も、いずれ知れる。  メロウの悪行が明るみになり断罪されるのは、時間の問題だ。 (メロウには虫食いが巣食ってる。この世界を消滅させるしか、メロウには残された手段がないんだ)  なのに、乗っ取るはずのレアンの色欲に抑え込まれて、リリムを貪っている。  強いのか弱いのか、わからない大天使だと思った。 (魂も混ざれずに絡まっているだけだし、レアンがメロウより強いのかな。大天使より強い第一皇子って、チートやん。てか、レアンのリリムへの愛と欲が強いのかな)  もしくは、リリムの魅了の術が最強なんだろうか。  何に感心するべきなのか、呆れるべきか、もうよくわからない。 「我もカロンに確認ね。リリムの中の天使の核を壊せば、メロウは殺せる。レアンの中のメロウの魂も消滅する。けど、もれなくリリムも死ぬ。従魔契約してる我もただじゃすまないし、殺してほしくないんだけど、カロンには策があるんだよね?」  ラスに向かって、カロンは軟膏を見せた。 「これ、アメリア様の使者がくれた、異物を殺す軟膏だ。これを俺の矢の鏃に塗って、リリムを射れば、核だけ壊してリリムを救える、はず」  虫食いの説明はしづらいので、省略した。 「ふぅん。もしかしてだけど、その軟膏、皆に塗ってあげたり、した?」 「え? うん。訓練室で、シェーンやカデルやルカに、塗ったよ」  ラスがリリムに目を向けた。  釣られてカロンも目を向ける。 「さっきからシェーンがリリムの服を捲ってキスしたり、カデルがリリムの腹を撫でたり、ルカが肌を舐めたりするたびに、リリムの中の天使の核が弱ってるんだよね」  いつの間にかリリムのシャツが開けて、ズボンが半端に降ろされている。  かろうじて下着が無事だが、体幹がほぼ裸だ。  全部脱がずに腕や足に服が絡まっている姿が、余計にエロい。 「ちょっと待って、いつの間にあんなに開けてんの? 魔王なら鎧とかもっと重装備でいいんじゃないの? 竜に乗って冥界に行った時のリリム、魔王っぽい鎧みたいの着てたよね?」    ラスを掴んでわしわし揺さぶる。 「今日も魔王様の装いでした。レアンが剥ぎ取ったのでしょう。正気に戻る前に、一度本気でぶん殴りたいですね。一緒に暮らしていた私だって、添い寝で我慢したのに、許せない」  フェリムが拳を握り締めた。  もはや皇子という敬称すらなくなっている。  無表情が逆に怖い。 「添い寝は、してたんだ」 「添い寝だけです。寝ている時に頬にキスした程度です。本人は気が付いていません」  堂々と夜這いしましたと自白された気分だ。  フェリムにとっては幸せな冥界生活だったんだろうなと思った。 「いや、今はそうじゃない。えっと、何の話してたっけ……、そう、軟膏。もしかして、皆に塗った軟膏のせいで、天使の核が弱まってんのかな?」 「そうなんじゃない? 軟膏を使えば我の作戦成功しそうだけど、強引だよ。やる?」  ラスがムフっと笑った。  ちょっと悪い顔だ。 「やりましょう、カロン。レアンたちがこれ以上、リリムの素肌に触れるのは許せません」 「まだ作戦の詳細な内容、聞いてないのに、賛成なんだね」  フェリムをこれ以上、怒らせないためにもやるべきだと思った。  怒ったら、本当に何をするかわからない。 「我なら『魔実』の魅了をある程度、いじれるから、リリムの心の奥の欲望を引き出したりも出来ちゃう。リリムが本当は誰と何したいのか、わかるよ」 「魅了って、本人にも効果出ちゃうの? ダメじゃね?」  自分以外を虜にするから、魅了なんじゃないだろうか。 「リリムの内側に作用するように、我が外側から『魔実』を操作するのさ。今のリリムは受け身だ。自分で動くように仕向けないとレアンから離れないでしょ? 天使の核のせいで、今のリリムはレアンに恋してるんだから」  恋してる、といわれて、ズキンと胸が痛んだ。   「だったら、『魔実』を操作しても、レアンに抱き付くだけじゃねぇの?」  そんな姿は、これ以上、見たくない。 「そうなったらレアンを殺しましょう。王位継承権を持つ皇子はあと二人いますから、問題ないでしょう」 「待って、待って、フェリム。レアンもメロウに利用されてるだけだから、被害者だから。一回、落ち着いて」  この場でレアンを殺したりしたら、それこそフェリムが死罪だ。  杖を構えようとするフェリムをカロンは必死に止めた。 「魔性の実の魅了は、天使の核じゃなくて、本人の心の深い部分に作用する。『魔実』は今、リリムの果実だから、我じゃ操るまではできないけど、リリムの本音を引き出すくらいなら、出来るよ」 「本音……」 「最低限、リリムを自発的に動かすきっかけにはなるじゃん。動いたと同時に矢を穿って天使の核を壊すくらいなら、カロンとフェリムで出来るんじゃないの?」  今のまま、レアンやシェーンたちが四人もリリムに食いついている状態では、迂闊に矢を射ったりできない。  あの場所から引き摺り出すのは、必須だ。 「ぁ! ……んっ、それ、ダメぇ! シェーン、あぁん! ……きもちぃ、も、我慢、できな……、レアンと、キス、したぃっ……、んんっ……」  くぐもった声が響いて、カロンは目を上げた。  リリムが身を捩って自分からレアンにキスしている。 「好き……、レアン、もっと、僕を愛して。レアンをもっと、愛したい。レアンが、欲しい」  甘い吐息を吐いて、涙目のリリムがレアンに愛の言葉を語る。 「私もだよ。もっともっと、リリムの深い部分に触れたいよ。世界なんか、もうどうでもいい。リリムだけいればいい」  リリムの可愛さに負けて、あまりにも簡単にレアンが世界の消滅を放棄した。  レアンの指がリリムの股間の奥に沈んだ。  リリムの腰が震えて、身を捩る。  下着に手を突っ込んで、レアンの指がリリムの尻を弄る。 「ぁっ……、そんな、トコ、んっ……、はぁ……、レアンの指、入っちゃ、ぅぅ……」  リリムがレアンの顎を舐め上げた。  フェリムじゃなくても、レアンに殺意が湧く。 「はぁ……可愛い、リリム。もう、我慢できない」  シェーンが立ち上がって、自分の股間をリリムの顔に押し当てた。 「ほら、こんなに硬くなってる。リリムの可愛い口で、慰めて」  リリムが服の上からシェーンの股間にスリスリして、硬くなったモノをアムアムと食んだ。 「は、んん……、ぁむ、おいひぃ、シェーンの……」 「リリム、可愛ぃ……、愛してる。このままずっと、みんなで愛し合っていよ」  蕩けたリリムの顔が可愛すぎて、ゾクゾクする。  シェーンが、ねっとりとリリムの頬を撫でる。  服をずらしたリリムの背中にレアンが何度もキスしている。  その間にも、リリムの胸や腹にカデルとルカが吸い付いて、股間に手を伸ばしている。  隣のフェリムに強い緊張が走った。殺気が駄々洩れだ。  カロンの全身に寒気が走った。 「ラス! 作戦決行! 早くして! 一秒でも早くして!」  考えるより先に叫んでいた。  今にも杖を振って魔法を放ちそうなフェリムを抱えて抑える。 「了解~。『魔実』の力を強めよう」  ラスが両方の肉球をリリムに向けた。 「フェリムにも軟膏、塗っておくから。両手と、あと。フェリムは(タング)だから、とりあえず唇ね」  小瓶を取り出し、今のうちにフェリムに軟膏を塗りつける。  唇に、リップクリームを塗る要領で軟膏を塗った。 「ちょっとくらいなら、舐めますから、舌先にもください。必要なんですよね?」 「え? 一応塗るけど、無理しないで。美味しくなかったら、吐き出して」  フェリムが舌を突き出す。  舌先に、ちょんちょんと軟膏を塗った。 「効いてきたかな」  ラスの声に、カロンとフェリムはリリムに視線を向けた。  リリムが、きょろきょろと何かを探している。 「カロン、フェリムに神力、分けてあげなよ。万が一、乗っ取られたり魅了に掛かったり、しないように」 「え? 今更?」  フェリムは色んな意味で大丈夫だと思う。  ラスとフェリムが目を合わせて頷いた。 「そうですね。では、神力いただきます、カロン」  カロンを抱き寄せて、フェリムが唇に吸い付いた。 「舌を出して。絡めて吸い上げます」  唇を重ねたまま話されて、フルフル震える。 「わかっ……、ぁ、ぅん、んんっ」  ねっとりと舌が絡まって、変な気持ちになってくる。  そんなつもりはないのに、嬌声のような声が漏れる。 「カロンは感じやすいですね。声が、可愛いです」  舌を絡める合間に、フェリムが話す。  フェリムらしくない言葉に、困惑しかない。  突然、腕を強く引かれて、床に押し倒された。 「ぁんっ」  何が起きたのかわからなくて、カロンは衝撃に目を瞑った。

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