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第2話 母と姉
俺はヒカル。
今は高校を出て売り出し中のアイドルだ。
派手な事の好きな母親と姉が、勝手に美少年コンテストに応募して、末位でギリギリ受かった。
初め、俺にその気はなかったものの、入賞したので乗ってみた。
就職も進学もしない、バイトだけの日々だったから。
外見が全て、と言って整形とメイクに明け暮れている母親に似て、姉もルックスが全て、という女に育った。二人ともまあまあ美人だった。
母親の男出入りが激しいのを子供の頃から見て来た。
俺も美少年と言われて育ったが、身長が今一つ伸びなかった。168cmしかない。母と姉も150cmだ。
俺の理想は180cm超え、だが。
今でも納得出来ない「アイドル」という仕事。
歌うのは好きだから、ボイストレーニングが始まって、まじめに通う。
ダンスが苦手だ。小さい頃からダンスを習っておけばよかった。踊るって事がよくわからない。
姉の玲奈は見てくれがいいから中学生の頃から男を取っ替え引っ換え。母親の真似をしているのだろう。
玲奈は誰とでもやるので「サセコ」というあだ名が付いていると、ヤンキーの友だちから教えられた。その事は有名だから、俺は情けない思いをして来た。
バカ高校のバカ女。地元じゃ有名だった。友だちも、遊び仲間もたくさんいる女。
バカは群れる。数で勝負か。
卒業しても地元を離れない。一声かければ飛んでくる男たちがいるから、地元を離れないのだ。
姉貴はバカ高校を卒業して契約社員で近くの工場に入った。携帯会社のパソコン入力の仕事。
バカ高校でも商業科で、ありがたい事に、簿記三級とか、タイピングとか、が身に付いた。三年の月日は無駄じゃなかった。玲奈のために感謝する。
「あーあ、つまんない仕事。
銀座のキャバ嬢になりたいわぁ。」
玲奈はいつも言ってる。
(馬鹿じゃ、銀座で通用しねぇよ。)
母親は昔から近所の安スナックで働いていた。
自分の店を持つような器量も野望もない。
ただ、男にたかって生きて来た女。
(俺はこんな女には絶対引っかからねぇぞ!)
心に誓っていた。
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