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第5話 姉の結婚
アイドル見習いになって、高校の時の経験は役に立った。
「俺も母ちゃんの子だな。あの姉ちゃんの弟だ。」
自覚を持って遊びまくった。
先輩が卒業しても、俺は相手に不自由しなかった。男子校だから、みんな興味津々。
男同士でやるしかないのだ。俺は上手になった。元々男が好きだったから。
でも心を奪われたのは一人だけ。
あのフラメンコダンサーだけだった。
また、会いたい、と祈るような気持ちで過ごした。
それからしばらくして姉貴の玲奈が結婚する、と言い出した。
どこにでもあるシチュエーション。玲奈は不誠実な女だった。だから俺は、子供の頃から信用出来ない玲奈が、結婚すると聞いた時正直言って相手に同情した。
ここは神奈川県の田舎。山梨に近い。
玲奈は高校を卒業して近くの工場で契約社員として働いていた。携帯会社だった。
その会社の研修で東京に行った。そして研修期間に男を引っ掛けて来たのだ。
(全く、手が早いな。)
研修が終わって会社の方針が発表された。その会社は東京の社屋を売り払い、こちらに合流する事が決まった。東京の男はこちらに引っ越してくる事になった。
最初は独身者用のアパートに決めた男の部屋に、玲奈は入り浸りになった。半同棲状態であっという間に妊娠したらしい。
結婚するから少し広めのアパートに引っ越した、と聞いた。
俺は興味ないのでその結婚相手に会っていなかった。
玲奈の男なんてどうでもいい。子供が生まれる事には興味があったが。
俺の母親はガキが嫌いだといつも言っていた。孫が可哀想だ。
結婚式も挙げていない。赤ん坊が生まれた。
相手の親が病院に来ても、挨拶したいと言っても
おふくろは来なかった。病院のすぐ近くに住んでいるのに、だ。
相手の親は千葉の九十九里に住んでいるらしい。それまで住んでいた大田区のマンションを売って海の近くに移住した。車で3時間もかけて来たのにバカな俺の母親は、知らん顔だった。
それで俺も相手に会う機会を逸した。
「向こうの親に挨拶なしかよ。
親同士会わせるもんだろ。家族を紹介するとか、さ。」
「めんどくさいからいいよ。
あんな親と仲良くするつもり無いし。」
「愛する夫の親だろ?」
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