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第7話 遺産
死ぬのを待っていたかのようにマンションは売りに出され、俺は住むところを失った。
姉は結婚して家を出ている。身重だし、臨月だ。
母とアパートに引っ越して、戸籍上の父の遺産の整理をした。保険は自殺だと言うので大幅に減らされた。全く出ないと言うこともあるが,2年が経っていたので少しは受け取り分があった。
「全く悔しいったら無いわ。満額もらえるように考えて入ったのに。保険はクソだわ。」
マンションは思いのほか高額で売れた。
人気の物件だったから不動産屋が力を入れた。自死したことで問題物件になるところを何とか八千万で売れた。時価総額一億の物件だったが買い叩かれた。
「自殺なんかするから、値切られたじゃない。
腹立つわ。」
その八千万を残された遺族で分ける事になった。配偶者の俺の母が二分の一。残りを子供で分ける。俺と玲奈は実子ではなかったが、養子縁組が出来ていて、現在進行形で家族関係を維持していたので、前妻の元に置いて来た長男と同じ割合で分ける。四千万を三分割だった。
前妻の子と、俺と玲奈は各自1330万ずつ、分けることになった。
もちろんそこから税金が引かれる。
俺たちは突然持ち慣れない大金を手に入れた。
不動産を買うには少ない額だが、俺と玲奈には大金だった。
口座に入れて小出しにして使った。小遣いの気分で湯水のごとく浪費した。
玲奈の口座が一番早く枯渇した。
美容整形を受けたり、ブランドバッグを買い漁ったり、あっという間になくなってしまった。
結婚したら夫の給料の範囲でやっていかなければ、ならないのに玲奈は計算が出来なかった。
今まで持った事のない金だ。俺も少しギャンブルに使った。怖くてFX投資には手が出せない。頭が悪いと何も出来ない世の中だ,と思い知る。
「ウチの太一がニーサとか小口の投資で小遣いを稼いでるよ。みみっちいってバカにしてたけど。
ヒカルもやってみたら?」
そんな経緯で初めて義理の兄貴に会うことになった。
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