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第13話 不倫の代償

「どうしよう、ママあたし妊娠しちゃった。」  玲奈が家に飛び込んで来た。俺とおふくろは相変わらずアパートに住んでいる。  おふくろも遺産はもうほとんど浪費してしまったらしい。 「え?太一の子?二人目? 良かったじゃないか。」 「違うの。この前の合コンで会った男の、子だよ、たぶん。」  内緒で中絶するからお金貸して、と言う。 「あんた、遺産もう使っちゃったのかい?」 「ないよ、あんなの。すぐに無くなった。」 「太一は知ってんの?」 「知らないと思う。 バレない内に堕ろさなくちゃ。」  俺は呆れた。男同士なら妊娠の心配はないからよかった、と思った。  内緒にしてもすぐバレる。 中絶して、しばらくして太一さんにバレた。  彼は静かに怒りを溜めた。 「相手の人を愛しているのか?」  つらい質問だった。裏切りは愛がなければもっとつらい。 「高校の時の一つ下の後輩よ。 前から顔は知ってたけど。ただの成り行きよ。 愛してるわけないでしょ。」  太一の怒りを抑えた顔が、物凄く素敵だった。 玲奈は思わず、見惚れてしまった。この男を失いたくは、ない。 「ごめんなさい。」 玲奈の謝る顔が今ひとつ信用できない。 「もう一つ、話す事があるの。 子供を中絶したの。」 「なんだって!それは殺人だよ。」 「そんな大げさな。大した事じゃないよ。」 「僕の子かもしれないだろ。」 確かに日付けが被っている。  誰にも頼らず1人で勝手に中絶手術をするなんて。太一は玲奈を抱いて、泣いた。 「可哀想に、可哀想に。」 玲奈は太一がなんで泣くのかわからなかった。 そんな女だ。  太一は数日間暗い顔をしていたが、 「僕は、相手の男に会いたい。 会わせてくれ。」  玲奈は相手に連絡した。なんと相手には妻がいた。ダブル不倫。 「すいません。」 謝る男の脇から、相手の妻が玲奈に 「慰謝料,取りますよ。」 と喚き散らす。 「お互い様だ。だがウチには子供がいる。」 だから、別れない、と太一の言い分だった。  相手には子供がいない。相手の妻は離婚する、とわめいていた。
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