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第16話 同期の元ちゃん
「ヒカル、おまえが探してるフラメンコダンサー、わかったよ。」
まだ、あのスパニッシュバルあるそうだ。
六本木の『カーサ・デ・シェモア』って店だろ。
そこのオーナーに聞きに行ったんだ。」
情報を持って来たのは、事務所の同期、元太だった。わざわざ聞きに行ってくれたのか?
元太は俺より少し売れている。どんな仕事も断らないガッツがあるのだ。
売れっ子のアイドルが主演するドラマの、脇役で、濡れ場のある汚れ役を見事に演じた。
主役のアイドルを食ってしまうほど話題になり大好評だった。
お相手は有名な大女優だった。濡れ場はアイドル的にNGだが、元太は思い切ってアイドルの縛りを捨てたのだ。
「やだーっ元ちゃん、不潔!」
「あんな事しちゃ、イヤっ!」
ファンが不安と怒りの声を上げる中で
「カッコいい!エロい元ちゃん、すごくいい。」
「あんな事しちゃう元ちゃん、セクシー!」
とファン層が変わって前より人気が出た。
「お相手の女優さんに助けられてできたんです。
彼女のおかげです。」
謙虚な元ちゃんに女優さんも感激して、引き合いが増えたのだった。
また次の、この女優さんとの映画出演決まっている。
「元ちゃん、忙しいのに俺のために、ありがと、な。」
「同期で何かにつけて一緒にやってきたから気になってたんだよ。
おまえの役に立ちたくて、さ。」
元ちゃんとはたまにセックスするセフレだった。優しい奴だ。
ゲイなのにノンケのラブシーンは、つらかっただろう。
いつも俺が忘れられないフラメンコダンサーの話をするので、仲間内では有名になっていた。
もう俺は太一さんがその人だと信じている。
偶然なんて嘘くさい。絶対に太一さんだ。
手の届く所にいる人。近いけど遠い人
こわくて未だにダンサーだった過去を聞くことが出来ないでいる。
元ちゃん情報によると10年近く前、店でカンテとバイレの担当だったホセという日本人がいたと言う。店のオーナーで、自身もカンテの歌手、ガルシア・フェルナンデスから聞いた話だった。
ホセは、ホセ・タイチ・フェルナンデスというステージネームで活躍していた。
オーナーのガルシアが名付けたというスペイン風の名前。
小さい時からバレエで鍛えた身体は、フラメンコを踊っても素晴らしかった。
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