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第21話 セビリアの春祭り

 スペインへ旅立った。アンダルシア。 ヒターノ(ジプシー、ロマ)に混じってフラメンコを学んだ。  愛、悲しみ、喜び、苦しみ。 デュエンテの情熱的な表現に魅せられた。  4月、セビリヤの春祭り。 ファリア・デ・アプリル、四月市。 セビージャの街はお祭り一色だ。  伝統的なセビジャーナスの踊り。誰もが踊れる。盆踊りのようなものか。素敵な衣装を身にまとい踊り明かす。  赤と白の提灯が彩る会員制のカセータという小屋が1000件以上も並ぶ。中には旅行者用の小屋もあって自由に入る事はできる。  旧市街から川を渡ったこちら側が会場になる。 移動遊園地や闘牛、もちろんフラメンコもある。  レブヒートというカクテルが人気だ。 シェリーのマンサニーチャをレモネードで割った飲み物。たくさんのタパス(一品料理)が並ぶ。  一応有料だがみんな大盤振る舞いだ。  太一はこの空気感に浸っていた。毎年4月にはセビージャに帰るというガルシアに付いてきた。  そしてガルシアの知り合いだと言うヒターノに世話になっていた。  太一は言葉もろくにわからない。いきなり知らない世界に飛び込んだようなものだった。  新鮮な体験だった。 祭りの会場はどこでもすぐに踊り出す人々で溢れている。 「タイチも踊ろう。」  簡単なリズムに乗って広場に出た。 軽いステップで見よう見まねで踊ってみた。  周りには陽気なフラメンコダンサーがたくさんいてみんなが太一に注目し始めた。  ガルシアが周りの人に紹介している。 「日本から来たバレエダンサーだ。 フラメンコが覚えたいんだってさ。」 「オラ!素敵な男。べべ!」  たちまち人気者になった。 フラメンコギターを抱えたヒターノらしき男がギターをかき鳴らす。  太一は即興で踊ってみせた。 「オオ、グラシアス!」  ガルシアと一緒に彼のカセータに連れて行かれた。歓迎されているらしい。  ガルシアの通訳で話に花が咲いた。 語り明かし、踊り明かし、歌い明かし、朝になった。 「ブェノス・ディアス」  陽気な人々に起こされた。 「太一は俺たちのキャンプに来い。」  滞在しろ、と言うのだ。  ヒターノのキャンプに行った。
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