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第29話 初めての
「タイチ。」
「なに?ヒカル。」
くすぐったい気持ちで言ってしまった。
「キスしてください。」
太一は驚いた顔をしたが俺の顔をその指で持ち上げてくちづけてくれた。
バード。啄むような軽いものだった。
「もっと、本当のキスをください。」
「いいのか?止まらなくなるよ。」
ゾクっとした。立ち上がってソファに移動する。
「おいで。」
もう何も考えられない。
(この人はこんな風に誘うんだ。)
太一の胸に崩れるように抱き付く。
何度も何度も繰り返すキスの嵐。
お互いに男だから、わかる。
(欲情している。俺に興奮してくれてる。)
お互いの股間に当たるものがある。固くなって苦しそうだ。
「いいのか?」
この先には地獄が待ってる。
抱き合ってシャツの中に手を入れて直に肌に触れる。
「ああ、ずっと夢見てた。太一とこうするの。」
耳に舌が入る。くすぐったい。
「ああ、はあ・・」
俺は心配になった。太一は経験があるのだろうか。ゲイのセックスの経験。
「太一、待って。」
ふっと笑う大人の余裕の太一。
「君は経験があるのかい?」
「ええ、女の人とは、まだですけど、男なら。」
「じゃあ、僕に教えてくれ。ヒカルにリードされたい。」
「俺、ネコなんですけど。」
「いつも男がリードするものだと思っていた。
僕は猫にはなれない。入れる方でいいかい?」
「え、と、準備が必要なんです。」
雰囲気に流されて自然に結ばれる、なんて事はゲイセックスには無いのだ。
ロマンチックではない。下世話な話になる。
きっと太一は興醒めだろう。
俺は乳首を噛まれるのが好きだが、きっとふくらみなど何もない男の胸に魅力は無いだろう。
考え過ぎてしまう。
「俺は綺麗じゃないから。」
肩の下に手を入れて抱き上げられて顔を見られた。
「君は素敵だ。女性の真似をする必要はない。
僕は男の身体が好きだよ。」
身体中、弄られて(まさぐられて)感じてしまう。痛いくらいに勃起している。
「こんなに固くして。可愛い。素敵だ。」
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