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第31話 家族
朝になった。お互いに離れがたい思いでいる。
ハルクがよく眠って機嫌良く起きた。
「イカァ。イィチ。」
俺たちを見つけて名前を呼んでくれる。
「おはよう。イカァはここにお泊まりしたんだよ。」
オムツをとっておまるに座らせると上手におしっこをした。
「えらいねぇ。チーできたねぇ。」
ケラケラ笑ってご機嫌だ。着替えさせる。
太一がミルクを持って来た。
「もう離乳の時期なんだけど。」
やっぱり、ミルクが離せない、という。
二人で子育てをしているようでくすぐったい。
「ちゃんと育ってるのか、時々不安になるよ。」
「玲奈は心配しないのかな。」
昨夜の事があって玲奈の話は気まずい。
太一が片手でハルクを抱えながら、肩を抱いて耳元で囁く。
「僕は正式に離婚するよ。
一緒に暮らそう。子供も一緒だ。」
俺はハルクに情が移っていたから、絶対に太一が親権を取るものだ、と思っている。
ハルクがいれば完璧な家族になれるだろう。
ゲイのカップルでも家族だ。
玲奈は相変わらず、男と遊んでいる。この頃では全く悪びれず、太一のせいにしている。
在宅ワークで一人でハルクの面倒を見ている大変な太一だった。
「家のローンもあるから、頑張って働かなくちゃ,な。」
俺は涙が出て来た。子供を第一に考える太一がこの上なくいい男に見える。
俺もハルクは可愛くてならない。
このまま、家族になれたらいいのに。
俺はほとんどこの家に居ついてしまった。ハルクの世話、と言う口実で。
玲奈が突然帰って来た。荒れている。また男に捨てられたのか。
「家の中、汚いわね。
ハルクも可愛くない服を着てる。
何やってんのよ。」
「姉貴、何,八つ当たりしてんだよ。」
ハルクを抱かせるとギャン泣きだ。久しぶりに見る母親の顔に人見知りしている。
「全く、可愛くない。ヒカルここに居ついてるんだって?ママが帰って来ないって言ってたよ。」
男に捨てられて,夫と子供を思い出したのか?
「おもしろくないわ。子供なんかいらないのに。」
泣き止んで玲奈の腕から逃げ出そうとするハルクにひどい言葉を投げつける。
「子供の前でそんな事言うなよ。」
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