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第32話 玲奈

 玲奈は可愛い顔をしている。身長150cmの小柄なスタイルは男受けがいい。  長年、母親を見ているから、スナック勤めを毛嫌いしている。金持ちの男を狙っているが、頭が良くないので気の利いた会話が出来ない。高級な店では面接で落ちる。 「あーあ、男に不自由した事ないけど、金持ちには縁がない。」 「アハハ、何言ってんのさ。イケメンのご亭主がいるだろ。」  仕方がないから母親の勤めるスナックをチョコチョコ手伝って日銭を稼いでいる。  店のマスターは玲奈を重宝して使っている。 母親も玲奈もこのマスターに手をつけられた過去がある。今でもちょっかいをかけて来るが、玲奈はお高く止まって相手にしない。母親が物欲しそうだ。 「ババァはもう賞味期限切れだ。」 「マスターだってジジィじゃね?」 (アタシはもっと高く売れるはず。) 子供の事はあまり思い出さない。  時々思い出しては家に帰ったりしているが荒んだ生活は見た目にも表れている。薄汚れてだらしない。  太一と出会った会社の契約社員はとっくに切られていた。  母親の再婚相手の遺産が入った時は、羽振りがよくみんな集まって来たが、この頃は誰も相手にしてくれなくなった。 (あーあ、太一が死んでくれないかなぁ。) 子供は誰が見るのだ?何も考えていない。 母親に聞く。 「ヒカルは何やってんの?」 「太一さんの所に入り浸りだよ。 あたしゃ、太一さんとヒカルが出来てんじゃないか、と思ってるんだけどね。」 「冗談じゃないよ。そんなの許さないんだから。 キモい事言わないでよ。太一はノンケだよ。アタシを抱けるんだから。」  そうなったら金にならない、と絶望的だ。 玲奈は保険金を当てにすることしか考えていなかった。太一が死なないと大金は入って来ない。  そのために大きい保険に入っている。掛け金も高い。恐ろしい妻なのだった。 「高い掛け金、毎月払ってるのはアタシなんだよ。」 飛んだお門違いな事を言っている。  一方、ヒカルと太一は順調に愛を育てていた。 「保育園に申し込んだんだ。 この頃はこの辺りはそんなに狭き門でもないって。ハルクは少し言葉が遅いようだって、一才6ヶ月検診の時、保健士の人に言われたんだ。」  子育ては悩み尽きない。

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