33 / 66

第33話 事務所

 ヒカルはこれでも一応アイドルの仕事をしている。この所、ハルクの世話でサボりがちだったボイストレーニングだが、仕事というのはほとんどが売れてる先輩アイドルの後ろで踊ったり、コーラスだった。  所属事務所からの、その他大勢の仕事。 今までは元ちゃんと一緒だったのが、例のドラマ以来、元ちゃんは演技の方で売れっ子だ。  そんな元ちゃんが引っ張り上げてくれた。 ドラマの脇役。主役の元ちゃんの友達役。  演技なんて全くの素人だったが、元ちゃんのリードで何とかやっている。  元ちゃんの彼女の友達と恋に落ちるストーリー。彼女役の娘は売り出し中の片桐愛。  事務所の一押しだ。 元ちゃんは彼女がいるが年上の人妻と不倫する、というお決まりのストーリー。元ちゃんの彼女役の女優さんも俺のお相手と同期の森エレノアだった。 「すげえ、女優さんたち可愛い。」 俺の言葉に元ちゃんがヤキモチを妬く。 「元ちゃん、俺にヤキモチ?」 「ああ、ヒカルが好きなんだよ。 俺、今でもそっちだから。」 「ええ⁈俺なんかでいいの? やったー!俺、モテ期に入った?」  思いもかけず、元ちゃんから告られた。 数回セックスした事はあるが、マジで好かれてるとは思わなかった。  今をときめくアイドルの元ちゃんが俺を好きだって。  俺には太一がいるけど、ちょっと嬉しい。 共演する愛ちゃんとエレノアと4人で過ごす事が多くなった。  元ちゃんは共演する大御所のマサミさんに連れて行かれる事も多かった。かなり、気に入られているらしい。 「よっ、人妻キラー!」 「やめろよ。俺疲れてんだよ。 ヒカルが癒してよ。膝枕して。」 楽屋の元ちゃんは可愛い。 「いいよ、膝においで。」 久しぶりの元ちゃんとキス。甘い香りがする。 さすが芸能人。夢中になってキスしてしまった。 「ヤバいよ、ヒカル。勃って来ちゃった。」 「可愛いなぁ元ちゃん。」 「ヒカルとしたい。」 「ダメだよ,我慢して。お相手の女優さんにフェロモン撒き散らして。」 「ヒカルって煽るのうまいよな。 これ、俺のマンションの鍵。後で来て。」 鍵を渡された。 (ホントにモテ期だ。 でも俺には太一がいるからな。 俺の最優先事項は太一とハルクだ。)  アイドルの仕事をやっていけるのか、目が回るスケジュールに俺は冷静さを欠いていた。  落ち着け、俺!

ともだちにシェアしよう!