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第36話 借金 2

 その夜、ヒカルが来た時にこの借金取り立ての事を話した。 「太一、俺、投資用に少し金あるよ。」 「大丈夫だよ。僕も少しは蓄えはある。 ただ、このまま放っておくと膨らんでどうにもならなくなる。」  玲奈を探した。とにかく会って話を聞きたい。 ハルクを置いては、どこにも探しに行けない。  ヒカルが玲奈に連絡を取れた。 やっと見つけた玲奈は不貞腐れて目の前に座っている。 「全部でいくらになる?」 「太一、死んでくれないの? あんたの保険金で賄える額よ。」 入っている生命保険は三千万円だったと思う。 (僕の値段は三千万か。) 「あんたが死ねば丸く収まるのよ。」 泣きながら喚く玲奈を哀れに思う。 「それで離婚に応じなかったのか。」 「そうよ、ただ離婚したんじゃ金にならないでしょ。あたしに落ち度があるって、慰謝料ももらえないでしょ。 死んで!死ね死ね死ね!」 とりつく島もない。 「玲奈、この前死んだ親父で味しめたか? この人でなし!」 ヒカルが怒りで震えている。 「おふくろは知ってんのか、おまえの考え?」 「ママのアイデアだったのよ。 簡単に離婚しちゃダメって。」  苦渋に満ちた表情の太一が言った。 「わかった。玲奈の借金は僕が精算するよ。 全部片付いたら離婚してくれるか?」 「わかった。でも全部よ。もうあたしのところに取り立てが来ないようにして。」 自分の事だけだ。ハルクの事は一言も出ない。 「約束してくれ。ハルクに誓って。 キチンと離婚すると。」  親権は太一が取ることになった。後で家裁で調停が必要だろう。  太一は一つ考えがあった。ガルシアに連絡を取った。  シェモアのドアを開けた。 「太一、会いたかった。少しも変わらないね。 相変わらずいい男。ふるいつきたいよ。」 ハグが強い。 「困ってる事があるんだろう。私に言ってごらん。心の恋人、このガルシアに。」

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