36 / 66
第36話 借金 2
その夜、ヒカルが来た時にこの借金取り立ての事を話した。
「太一、俺、投資用に少し金あるよ。」
「大丈夫だよ。僕も少しは蓄えはある。
ただ、このまま放っておくと膨らんでどうにもならなくなる。」
玲奈を探した。とにかく会って話を聞きたい。
ハルクを置いては、どこにも探しに行けない。
ヒカルが玲奈に連絡を取れた。
やっと見つけた玲奈は不貞腐れて目の前に座っている。
「全部でいくらになる?」
「太一、死んでくれないの?
あんたの保険金で賄える額よ。」
入っている生命保険は三千万円だったと思う。
(僕の値段は三千万か。)
「あんたが死ねば丸く収まるのよ。」
泣きながら喚く玲奈を哀れに思う。
「それで離婚に応じなかったのか。」
「そうよ、ただ離婚したんじゃ金にならないでしょ。あたしに落ち度があるって、慰謝料ももらえないでしょ。
死んで!死ね死ね死ね!」
とりつく島もない。
「玲奈、この前死んだ親父で味しめたか?
この人でなし!」
ヒカルが怒りで震えている。
「おふくろは知ってんのか、おまえの考え?」
「ママのアイデアだったのよ。
簡単に離婚しちゃダメって。」
苦渋に満ちた表情の太一が言った。
「わかった。玲奈の借金は僕が精算するよ。
全部片付いたら離婚してくれるか?」
「わかった。でも全部よ。もうあたしのところに取り立てが来ないようにして。」
自分の事だけだ。ハルクの事は一言も出ない。
「約束してくれ。ハルクに誓って。
キチンと離婚すると。」
親権は太一が取ることになった。後で家裁で調停が必要だろう。
太一は一つ考えがあった。ガルシアに連絡を取った。
シェモアのドアを開けた。
「太一、会いたかった。少しも変わらないね。
相変わらずいい男。ふるいつきたいよ。」
ハグが強い。
「困ってる事があるんだろう。私に言ってごらん。心の恋人、このガルシアに。」
ともだちにシェアしよう!

