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第38話 ホストクラブ
ヒカルは反対した。
「ホストなんて太一に似合わないよ。
身体、壊すよ。無茶な酒の飲み方するんでしょ?
それに枕営業。いやだよ。」
「はは、ヒカルはずいぶんホストに偏見があるんだな。ディアボラはそんな店じゃないよ。
客層が上品だ。」
「金持ちのおばちゃんたちのオモチャにされるんでしょ。太一は綺麗な顔してるから、おばちゃんたちが離さないよ。」
ハルクが不思議そうにヒカルを見ている。
「ダメ、ダメ、イカァ、怒っちゃダメ。」
胸に抱き取って頭を撫でてやる。ハルクを羨ましそうに見ているヒカルも抱き取って頭をポンポン。
「俺を子供扱いしないで!」
「こども、こども、イカァ、こども。」
ハルクにも頭をポンポンされた。笑ってしまう。
子は鎹(かすがい)と昔の人は言った。ハルクのおかげで深刻にならなくて済んでいる。
「元はと言えば、ウチのバカ姉とバカ母のせいだ。ごめんなさい、太一さん。」
「そんなに気になるのなら、一度ディアボラに来てほしい。いかがわしい店じゃないから。」
ヒカルは初めてホストクラブに足を踏み入れた。怖いから元ちゃんについて来てもらった。
「いらっしゃいませ。ミコトです。」
名刺をくれたのはまじめそうな美少年。少年の年ではないだろうが若く見える。
「あの、お二人ともテレビに出てるでしょ?」
「あ、バレた。隠すほど売れてないけど。
テレビなんか見る暇あるの?」
「うん、彼氏が、録画してくれる。」
「彼氏?キミ、もしかしてゲイ?」
ミコトは恥ずかしそうにうなずいた。
「俺たち、どう見える?
ゲイカップルに見える?」
「え?だってあなたは太一さんの恋人でしょ。」
元ちゃんが驚く。
「ヒカル、彼氏いるの?」
向こうから太一がやって来た。家にいる時とは違う。スーツを着ていかにも落ち着いたベテランホストだ。
「いらっしゃい。ヒカルのお友達?
僕、宮原太一。」
「フルネーム言っちゃうんだ?」
「あ、変ですか?慣れてなくて。
そう言えば名刺に太一、としか書いてなかった。
名字はいらないんだ。」
「そんな事も知らないの?」
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