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第43話 親権

 太一はハルクを連れてヒカルと一緒に家に帰って来た。あのタントに乗っている。六本木からは遠い。引っ越しを考えてはいるが。 「俺たち、幸せな家族だよなぁ。」 ヒカルがしみじみ言う。もう深夜だ。 眠ってしまったハルクをそっと寝室に運ぶ。  いつもぐっすり眠るいい子だ。 ヒカルは太一と一緒に風呂に入る。愛の夜。 「太一がいれば何もいらない。」 首に抱きついて囁く。つま先立ちになる。背の高い太一がその筋肉質の胸に抱きしめてくれる。  愛し合う事に慣れて来た。立ったままシャワーを浴びる。水浸しのキス。 「ヒカル、可愛いな。好きだよ。」 自然に言葉が溢れてくる。結婚していた時もこんな事は思わなかった。玲奈には、それが足りなかったのか?  なんだか、謝りたいような気持ちになる。 (僕には,今大切な家族がいる。 ヒカルとハルクを離さない。)  家庭裁判所の呼び出しは数日先だ。太一は菫ちやんに相談した。社長の円城寺では少し心配だった。忙しい菫ちゃんに頼るのは気が引けたが、ホストの問題解決は、雇い主の義務だと言ってくれた。 「少しこっちで探ってみよう。 そういうの得意な人たちがいるから。」  翌日にはもう情報が届いた。 「なんだよ。三千万円、持って行っただろ。 足りねぇのかよ。」 ヒカルが悔しがる。玲奈は親権を争うつもりだ。 今まで面倒見ないで全部太一に丸なげだったのに、何を今さら。  菫ちゃんの情報網で、バックにあの斉藤という奴がいるようだ、とわかった。取り立て屋のあの斉藤だ。ドアを蹴って督促状を持って来たあの男が玲奈とくっついているらしい。  ゴネて絡むのは奴らの得意技だ。 たちの悪い闇金で、たちの悪いバックがついている。本物のヤクザだとわかった。 「もっと調べる? こういう連中は叩き潰してもいいんだけど。   太一の情もあるでしょ。奥さんだった人に。 どう?徹底的に叩き潰したほうがいい?」  太一は菫ちゃんを初めて、怖いと思った。 「良かったら、腕利きの弁護士を付けるわよ。」 ヒカルが 「玲奈の狙いはハルクの親権じゃねぇよ。 多分金だ。金の匂いに群がってくる。  子供をダシに使いやがって、人の心はねぇのかよ。」  太一が三千万の金を用意出来た事に味をしめたらしい。  今更ながら、鬼畜な女だ。

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