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第45話 一件落着
正式に離婚が成立した。
ヒカルはひとまず、安心して穏やかな暮らしが出来ている。太一はホストの仕事に慣れて来た。
ヒカルはいつも託児室にいるので,太一のおおよその客を知っている。控え室に来るホスト仲間からも情報が入って来るからだ。
どんな客層がいるのか、始めの頃は気になったりしたが、みんなの雑談で見当がつくようになった。
すごい客がいる。金持ちというのは際限がない。最高級のシャンパンをダースで注文する。
一瓶、数十万のシャンパンを12本、とかだ。
一晩で数百万の金が動く。
支度金三千万もすぐに元が取れるのだろう。
不思議な世界だ。夢の世界。
ヒカルはかずさんと交代でハルクの面倒を見ている。もう会話が成り立つ。楽しくて仕方がない。可愛くてたまらない。
かずさんは気長にいろんな事をハルクに教えてくれる。メキメキ知識を吸収するハルクに目を見張る。
(子供ってすごいな。興味深い存在だな。)
「ハルクちゃんもお友達が欲しいわね。」
かずさんが言い出した。
昼間、太一パパと公園で遊ぶので夜は疲れて早く眠くなる。かずさんがお風呂に入れて、子供のための料理を作ってくれるから、モリモリ食べてよく眠る。夜も静かな防音の部屋で、規則正しい生活だ。
時々、菫ちゃんが様子を見に来る。菫ちゃんが孫のように可愛がる。
「私はこの年まで独身だったのよ。
独身どころか、内緒だけどバージンなのよ。」
ヒカルはぶっ飛んだ。
「ご冗談を!」
「ふふふ、縁がなかったの。」
世界を又にかけてビッグビジネスをしている人が、信じられない事をいう。
「子供は,欲しかったな。」
マジで寂しそうに笑う。
父親から受け継いで、大きな企業を動かしているすごい人なのだ。
「面白いでしょ。世の中はタイミングなのよ。」
昔、愛した人がいたけど結ばれなかった、という。しみじみそんな話を聞いた。
営業時間が終わって,太一が来た。
「お疲れ。ヒカル帰ろう。
かずさんも遅くまでありがとうございました。」
もう日付が変わる時間だ。夜中の車での移動は子供にはキツイだろう。
近くに引っ越して来る事を考える。
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