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第48話 刺青
「もしもし、みづき?遊ぼうよ。」
「あたし、忙しいんだよ。電話かけてくんな。」
「もしもし、美玲?子供元気?
会いたいなぁ。」
「あんたの子供は?
あたし、子供放っといて遊ぶ暇なんかないから。」
ママ友も地元の同級生も相手にしてくれない。
家で腐ってると
「玲奈、気分転換にスーパー銭湯に行こうよ。」
母親に誘われて近所のスーパー銭湯に行った。
「ママ、お金あるの?」
一人1,200円だった。その他のオプションを頼めばまた金がかかる。
「タオル一枚500円です。」
母親が小銭をかき集めて払った。
備え付けの浴衣に着替えて大浴場に入ろうとして係の人に止められた。
「あの、ウチではそのような大きな刺青の方は、ご遠慮いただいております。」
入るのを断られた。個室の家族風呂ならいい、と言われたが、別料金が払えなかった。
「おまえ、そんなすごい彫り物、いつ入れたんだよ。恐ろしい子だね。」
「アンタほどじゃねぇよ。
自分の亭主、保険かけて自殺させるようなババァに言われたくねぇな。」
荒んだ二人は諦めて歩いてアパートに帰って来た。
「ママ、まだあの貧乏くさいスナックで働いてんの?」
「もうやめ時だ、ってマスターにはチクチク言われてんだけど、食って行くには仕方ないだろ。」
「あ、ああ、いつからこんな事になったんだ!
みんなアイツが悪いんだよ。太一の奴。
アイツがアタシの不幸の始まりだ!」
「なまじ、小金が入ったのがいけなかったんだ。
前の亭主から、いくらか引っ張れないかね。」
母親は最初に追い出した、玲奈とヒカルの本当の父親にたかろう、と考えた。
「まだ、生きてんだろ、おまえたちの父親だよ。
何年も会ってないけど、連絡くらい取れるだろう。」
父親はなかなか見つからなかった。
その前に斉藤に見つかった。
「おまえ、どこほっつき歩いてんだよ。
まだ、金返してねぇだろ。逃がさねえよ。」
玲奈はゾッとした。以前友達とやんちゃしてた頃、ヤクザを裏切った者がどうなるのか、散々話を聞いていた。
「ダサいね。斉藤さん裏切るなんて、命知らず。
どうなるか、わかってんだろうに。」
と、散々嘲笑って来たのだった。
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