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第51話 元ちゃん
例の打ち上げの夜以来、元ちゃんが事務所を辞めると言い出した。
あの夜、酔っ払って興が乗ったマサミさんは、みんなの見ている前で元ちゃんを縛り上げた。
マサミさんは亀甲縛りを覚えて誰かに実行したかったらしい。パーティの流れでワルノリが始まった。
「誰かで試してみたい。」
サディストを自称する大山が来ていた。マサミさんにいろいろ悪趣味な事を吹き込む。
マサミさんはすぐに実行したがる。それも駆け出しの若いイケメンをターゲットにして、いたぶるのが好きだ。
「縛りをやってみたい。元太やらせて。」
断れない事を知っていて駆け出しのタレントを指名する。
大山が悪趣味な道具を持ってくる。
大物に媚びへつらう売れない大山は、えぐい提案をして若いタレントをいたぶる。こうして何人も潰して来た。この所マサミ会に擦り寄って常連になっている。
死なない程度にサディスティックな道具を使って見ている客を喜ばせる。
「縛るのも難しいんですよ。」
ここに招待されたタレントたちは嫌な顔をしながらも、自分じゃない事にホッとする。
「マサミさん、やめなよ。嫌がってるよ。
洒落になんないよ。」
「あら、生意気ねぇ。みんなぁ、この子も縛っちゃっていいかな。」
この頃ちょっと人気が出始めた女の子が餌食になる。
「元太、アンタのせいで彼女がいじめられてるよ。」
大山がロウソクを持って来て火を付けた。
縄で縛って転がされた女の子の剥き出しになった太ももにロウソクのロウを垂らし始めた。
「きゃあ!熱い!止めてください!」
「大丈夫、ロウってのはそんなに熱くないよ。
痕は残らないから。」
「元太のせいで彼女がひどい目にあってるよ。」
無責任な事を言い放つマサミという女に、元太は覚悟を決めた。
「やめろよ!俺、引退するから。やめてあげて。」
もう仕事は、いらない。
「アンタが辞めたって、何も変わらないよ。
みんな,聞いた?元太引退宣言!
そんなに影響力ないよ。何様?」
みんながゲラゲラ笑っている。大麻の回し飲みで部屋の中が煙たい。異様な雰囲気だった。
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