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第53話 ディアボラ

 ディアボラの客層は豪華だ。  贔屓にしてくれる常連の一人に、銀座の高級クラブのママがいる。 『クラブ 花包み』の千堂ママは、いつもお店の女の子を従えて豪遊してくれる。  レオンの太客同士が毎週交代で金曜はシャンパンタワーだ。そのメンバーの一人。  惚れた男がいたが、衆道になってしまった。 「いい男は、みんなゲイに持ってかれる。」 ゲイに恋人を寝取られた、と嘆いている。その恋人とは、超大物、藤尾集蔵、その人だった。  この国で何か事業を始めるなら、藤尾さんの決済が必要だ。どんな政治家も総理大臣も持ち得ない権力の中枢にいる。  その辺の反社は裸足で逃げ出す。ヤクザもチャイマもみんな逆らえない。何しろ後ろには、あの奥のご老人がいる。国を動かしているのは見えない実力者。ご老人は多くを語らない。  神道に通じているらしい。国作りに関わったとされる。神代の話が面々と受け継がれている。  ファンタジーと受け取るのもいい。真実は見えないところにあるものだ。  現実には、藤尾という人が、全権委任されている、、とでも言おうか。 「集蔵、いい所に来てくれたわ。 新しく入った元太くんを紹介するわ。」 菫ちゃんじきじきに引き合わせてくれた藤尾さん。元ちゃんを連れて来たヒカルも緊張している。  集蔵さんのとなりには、ガタイのいいイケメンが張り付いている。接客しているのはベテランのレオンと、もう慣れて来た太一だった。 「あのう、元太です。」 おずおずと話しかける元太に隣のイケメンが声をかけた。 「元太くんって、俺,知ってるよ。 テレビに出てたでしょ、あのドラマ。」  藤尾さんが、俺の嫁、兼ボディガードだ、と教えてくれた、名都(メイト)と名乗るイケメンの彼が言った。 「わあ、テレビなんか見るんですか?」 「ああ,見るよ。集蔵と一緒に見たり。」 「メイトはテレビっ子だからな。」 (テレビっ子?昭和か。) ヒカルは一人でウケてしまった。  この大物はいたって話しやすい人だった。 「俺もそのドラマ、ちょい役で出てたんですけど、気づいてもらえなかったかな。」 弱気な声が小さくなった。 「あ、わかった。 あの可愛い片桐愛ちゃんとキスしてたよね。」 「あ、演技ですから。」 太一の手前、焦って言い訳した。

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