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第54話 藤尾集蔵
ホストではないヒカルも、席について盛り上がってしまった。
気がつけば、男ばかりのテーブルだ。お客さんはもちろん姫が多いが、ホストはゲイの割合が多い。藤尾さんは特に男を惹きつけるオーラがある。
「いつもレオンがご指名なんだよ。」
太一が言った。
「ははは、私はレオンの彼がやっているバーの常連なんだよ。家が近所なんだ。
そこで太一にも何回か、会ったことがあるよ、な。」
「はい、バー高任、は雰囲気のいいお店です。」
(俺は行ったことないよ。ずるいぞ。)
太一が笑って立ち上がってヒカルの頭をポンポンとしてくれた。
「藤尾さん、こいつは僕の大切な人なんです。
ここのホストじゃないけど、僕の子守り、兼嫁です。」
「その言い方はコンプラに引っかかるぞ。
そうか、太一もゲイか。」
「なんか嬉しそうに言わないでよ、集蔵。」
菫ちゃんに叱られた。
元ちゃんが気まずそうにしている。
「何か、トラブってるんだろ。菫が言ってたが。」
やっと元ちゃんの方に話の矛先が向いた。
「事務所が辞めさせてくれないんです。」
愛ちゃんもエレノアも辞めさせてもらえないと言う。ヒカルもすんなり辞めさせてくれるわけない、とは思っていたが、結構陰湿なやり方だそうだ。
「わかった。芸能界に詳しい人に話してみるよ。」
藤尾さんは事務所の名前を聞いただけで、他には何も聞かなかった。
先入観を持たないように,かな?
この所、きな臭い噂が流れていたのは事実。
藤尾さんの一声で、最近の芸能界の調査が始まった。
「藤尾さんは徹底的に調べるから。
安心していいわよ。」
菫ちゃんが太鼓判を押した。
元ちゃんのマンションに愛ちゃんとエレノアも集まって現状を報告した。
「ひでぇな。
愛ちゃんもエレノアも嫌がらせされてんの?」
まだ残務整理が残ってる,と言って事務所に呼び出され、大掃除をさせられていると言う。倉庫からなにから全部。女の子二人には手に余る大掃除だ。まさにパワハラ。
あのマサミさんの命令で事務所がやらせているらしい。元太繋がりで友達が目をつけられたと言うわけだ。どこで恨みを買ったのか?
二人には想像もつかなかった。
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