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第58話 会員制秘密倶楽部

「藤尾さん、どこまでやりますか?」 「ああ、面倒だな。芸能界は伏魔殿だ。 下手に触りたくないな。」 「でも、立場の弱い者はいつまでもこき使われるんですよ。徹底的に潰さないと。  菫さんにも頼まれてますから。」 「メイト、二人の時は敬語、やめろ。」 「はは、急に変えられませんよ。」  ヒカルたちのいた芸能プロは、弱小だからなおさら、マサミ会のような売れている者の命令は絶対なのだった。 「まだ、何か言ってくるのか?」 「というか、腐敗の病巣が深いんです。 今回はマサミ会ってのがガンですね。」 「ほう、あの中田マサミか。」 「何、ここ?麻布にこんな所があったなんて。」  あのご老人のいる倶楽部にマサミ会の主だった人間が連れてこられた、というか招待された。 中田マサミが、中心だ。  芸能界も古株になると、あの倶楽部に一度は行くべきだ、という声を聞いてやってきたのだ。  招待状が送られて来ていた。真っ白で高級な封筒だった。そしてベンツのハイヤーが迎えに来た。断る選択はない。  重厚なドアが開き、執事が出迎えた。 「いらっしゃいませ。 当店はただいま、営業中です。  初めてのお客様は招待状が必要ですが?」 中田マサミは招待状を持っていてよかった、と思った。格式ばった緊張する店だった。  知る人ぞ知る有名な店で、芸能界でもある程度の位置になって初めて招待される、という倶楽部だった。 「何、ここ?」 マサミは、また同じ言葉をつぶやいた。  何もかもが重厚で古臭く出来ているようだ。黒服が慇懃無礼に案内する。  こちらはマサミ会。腰巾着の大山がいる。あのサディストだ。そして、マサミのマネージャー。 いつもの取り巻きの売り出し中の女。同じく取り巻きで情報通の女。この頃テレビでよく見かけるあまり美人ではない女。  マサミが選ぶのはいつもそんな人間だ。自分が君臨出来る人間。お調子者の役者がいる。若いタレントをいじめるのが上手い。みんな一癖も二癖もありそうな顔ぶれだった。  店内では、メイトが待ち構えていた。メイトの気心の知れた黒服の鮫島。他にも事情のわかったスタッフが揃っていた。  ご老人がおもしろがってVIP席の奥から見ている。

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