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第61話 レイモンの部屋
倶楽部の2階には長い廊下を挟んでドアが並んでいる。ホテルになっている。
プロスティチュート(娼婦)と泊まれるようだ。もちろん秘密のデートだって。
仕事部屋として長く専有している者もいる。
『沼田レイモンの部屋』は有名なサディズム愛好家の拠点だ。防音もしっかりされている。各部屋に裏階段が付いていて外に出られる。
秘密裏にケガ人や死体を運び出すため,という噂もある。身の毛もよだつ部屋なのだ。
ドアを開けると『鉄の処女』アイアンメイデンのレプリカだと思しき2mを超える置物が出迎えてくれる。中世ヨーロッパの拷問器具。錆びついたその処女は禍々しさを演出しているようだ。
実在は疑われてきたが、その残虐性にファンも多い。レイモンの部屋の鉄製の物は、恐ろしい外観をしている。ヨーロッパの研究者によると、その存在はフィクション説が優勢である。寓話の世界。
そんなレイモンの部屋には、数々の現役の拷問道具達がコレクションされている。
マサミさんのサドっ気など、甘い子供騙しだ。
素晴らしいショーを堪能して,高級シャンパンに酔いしれて、マサミさんは調子に乗った。
「アタシは大女優よ。この世に思い通りにならない事はないのよ。」
と豪語している。
みんなコレクションを珍しそうに見ている。
「ほっほっほ。大山ちゃん、
どうかしら私のコレクション。
何か、試して見ない?」
床にトグロを巻いているロープを手に取った。
「亀甲縛りがお好きなんでしょ。
マサミさん、たまにはご自分が縛られてみたら?」
「誰か、アタシの代わりに縛られなさいよ。」
「レイモン先生の縛りは、芸術だと言われてますからねぇ。」
大山が余計な事を言った。
いつの間にか、レイモンのアシスタントだという屈強な若者が数人、グラディエーター(戦士)のスタイルで部屋にいる。みんなイケメンでマッチョでセクシーだ。筋肉隆々の戦士たち。
「アンタがやれよ。」
「アタシは勘弁。」
「このまえ嫌がる元太を、無理やり縛ったの大山だろ。アンタがやられなよ。」
やられる前提で話が進む。マサミさんの一声で
最初の犠牲者が決まった。
「あのぅ、ここは秘密倶楽部って聞いたんだけど、違法行為はやらないですよね。
ちゃんと警察とか来ますよねぇ。」
「あら、あなた達のスマホ、ここでは使えないわよ。電波が届かないから。」
みんな一斉にスマホを取り出した。
「あ!圏外だ。何で⁈」
「ここ、東京の真ん中でしょ?」
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