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第63話 レイモンの部屋 4
「女に興味ないのよね。
マサミさんを裸にしても面白くないわ。」
そう言いながらも、大きなハサミで座ったままのマサミの服を切り裂いて行く。
「傷つけないように殴りたい。
さすが、綺麗な身体ね。スタイルがいい。
壊さないようにしなくちゃ。」
柔らかい物に包まれた固くて重い物で足を折られた。
「ぎゃあ!」
すごい悲鳴に口の中に丸めた自分の下着を突っ込まれた。
「骨折は治るのに時間がかかるわね。
治るまでここにいなさい。」
(えっ?何ヶ月もかかる。
ここから出られないの?)
マサミは嘔吐した。
「あーあ、せっかくのシャンパンもフレンチも
台無しね。もったいないから拾って食べてもらおうかな。」
嘔吐物を口に入れられた。
腹の底から拒絶反応が起こる。えづいて息が出来ない。マッチョなアシスタントが口の中のものを取り出して水を飲ませてくれた。
「はあ、はあ、助けて。」
このアシスタントに縋りたい気持ちだ。
何とか症候群?追い詰められて愛と勘違いする。ストックホルム症候群だった。
(さっきまで何でもなかったのに、一瞬でこの地獄!)
信じられない思いだった。
レイモンが注射器を手に、戻って来た。
折れた足が死ぬほど痛い。
「何するの?アタシを殺すの?」
「大丈夫、強力な痛み止め、よ。」
レイモンはモルヒネを注射した。
痛みが薄れて少し冷静になった。
「薬が切れたらまた,痛むわね。
薬中になるのも時間の問題。
あなた、面白くないわ。女優なのに。」
看護士の格好の男が入ってきた。
ギブスを当てて骨折を応急手当てしてくれた。
マサミはこの男にも愛を感じた。
地獄で仏、とはこの事だ。
一部始終を見せられていた女性たちは恐れ慄いて言葉が出ない。
次は誰?
そればかりを考えてしまう。
マサミは天井から下がっている鎖に吊り上げられた。後ろ手に縛られて肩が外れたのがわかった。痛みはない。
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