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第64話 果てしない地獄

「一体この倶楽部はどういう場所なのだ?」 「今回は処理と言っても甘い案件でしたね。 抹殺までは行かなかった。」 黒服たちの感想だった。  しばらくして下に降ろされたマサミは、整体の心得のあるアシスタントに肩を入れてもらった。 「一回外すと癖になるから気をつけて。」  優しい言葉に泣けてきた。  いつもはサディズム愛好家の軽い親睦会に使われるこの部屋だが、今日のレイモンは本気だった。  アシスタントたちは、レイモンの性癖を知っている。犯罪と紙一重。いやもう犯罪だろう。  薬物も簡単に手に入る。 「私は血を見るのが苦手なのよ。」 「アフリカの拷問に、一切皮膚を切らずに血の一滴もこぼさないやり方がありますよ。」  このアシスタントはブラックミックスで、肝が座っている。レイモンはこの屈強な男に抱かれるのが好きだ。 「ああ、気分が悪い。マサミさんを麻薬中毒にして、骨折を手当したら、もういいわ。  他の皆さんはその目に焼き付けたかしら。 あなたたちの顔はしっかり映してあるから、他言は無用よ。」  外部に漏らしたら地獄の底まで探し出して、一族郎党、皆殺しにする、と脅かされた。  だいぶ盛っているが、女性たちは震え上がった。 「もっと楽しくサディスティックに遊びたかったのに、マサミって興醒めな女。  もう誰も映画に使わないわね。使えない女ってことで。  薬が欲しくなったらおいで。」  そんな事で翌日全員解放された。 マサミは自分の不注意で骨折した、と発表してマスコミを騒がせた。 「全治6ヶ月。もう歩けないかもしれない。 女優は辞めるわ。」  中田マサミの引退が発表された。 「マサミ会が解散したって。」 ヒカルたちが話している。 エレノアが 「別のエリカ会ってのがあるんだよ。」 「マサミ会みたいに悪質なの?」 「そうでもないみたい。」 「誰でも最初はマトモなんだよ。 芸能界が狂わせるのさ。」    この出来事はあのご老人たちに報告された。録画したメディアと一緒に。  元ちゃんは役者として頭角を表し、いいドラマに出ている。もう濡れ専、とは言わせない。  演技派として認められて来た。

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