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第65話 ヒカル

 片桐愛とエレノアはキャバクラ『アンジー』に勤め始めた。人気が出ている。  アンジーのママは『銀座 花包み』の千堂ママの片腕と言われた富沢京子だ。  円城寺が銀座から引き抜いて来た。やり手の女。京子ママは自身がレズビアンだ,と言って隠さない。  愛とエレノアを暖かく迎えてくれた。  ヒカルはますます、太一に惹かれている。 一緒に住んで、甥っ子とは言え子供もいる。幸せの絶頂なのに一抹の不安がある。 (玲奈はあんな女になってしまった。 身体に大きな刺青を入れて、ヤクザの女に成り下がった。子供に情は無いと言ってる。)  ディアボラにグラマラスなフラメンコダンサーをたくさん連れて来てくれるあのガルシアが、興味深い情報を持って来た。 「思い出したのよ。ヒカルがカーサ・デ・シェモアに来たのは中学生の頃だって?  お父上と一緒だったそうだね。その人の事、思い出したの。フラメンコファンで自分でもカンテを歌う人だった。よく飛び入りで歌ってたよ。」 ガルシアの言葉に太一も 「僕がいた頃、お客さんでカンテを歌う人がいたなぁ。覚えてるよ。  あの方がヒカルのお父さんだったんだね。」 もっと知りたいと太一に頼んだが、ガルシアはそれ以上の父の消息を知らなかった。  プツンと切れてしまった父との接点。 「もう,亡くなってるかもしれない。 縁があればいつか会えるよ。」  ヒカルはもう探すのをやめた。見つかればまた、母が何かをタカリに来るかもしれない。これ以上醜いことにならないように、探るのをやめた。会いたければ今までに、何か言って来ただろう。会えない事情があったのかもしれない。    ヒカルはいつもホストに誘われているが、ハルクの世話で忙しい。派手な世界はいらない。  二人とも太一に愛されて幸せそうだ。 太一は神がかってきた。ホストが天職のようだ。 ディアボラのナンバー2、3くらいにいつも入っている。  ナンバーワンはあのレオンだ。その下を守っている。雛子先生の引きでバレエ関係のお客さんが増えた。

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