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旅路③-♡
朝日に瞼をくすぐられ、曜介は自然と目が覚めた。視界を埋めるのは、黒い後頭部。ご自慢のさらさら髪は、潮風を浴びて少々傷んでいるが、匂いはいつも通りだ。爽やかな甘さと、仄かに汗が香る。昨晩の情事を思い出し、体が火照った。
昨晩、何時まで睦み合っていたのだろう。時計がなく、正確なところは分からない。体感では、二時間も眠っていないと思う。曜介よりも疲れたであろう、真尋はまだぐっすり眠っている。
曜介は真尋を腕の中に抱きしめた。規則的にリズムを刻む心音と、緩やかな呼吸音。重ねるようにして、曜介も息をする。下着も着けずに眠ったので、抱きしめれば肌がぴったり密着する。その温もりを直に感じ、曜介は安堵する。
「んん……」
真尋が小さく身じろいだ。起こしたか、と思い、曜介はぱっと手を放す。すると、真尋はころんと寝返りを打ち、曜介の方を向いた。その瞼はまだ半分ほど下りていて、眠そうではあったが、真っ直ぐに曜介を見つめている。
「なんで離れんだよ」
「いや、起こしちゃ悪ぃかと」
「ちゃんと抱きしめてろ」
甘えるようにすり寄って、曜介の胸に頭を預けた。
「せっかく、腕の中にいるんだから、ちゃんと捕まえてろ。二度と、離したら……」
夢現だからだろうか。やけに素直に甘えてくれる。曜介はもう堪らなくなり、遠慮なんてなしに、思い切り真尋を抱きしめた。
「ばか、くるし……」
「好きだぜ」
「ああ?」
「お前は?」
「……んなの、いちいち言わなくても分かるだろ」
「だよな。つーことで、いい?」
「は?」
「だって、お前がこんなデレデレにデレてくるのって、ウルトラレアじゃん? となりゃ、やることは一つだろ」
「……正気か?」
「正気も正気よ。起きる時間までまだちょっとあるから、それまでには終わらすから。な、おねがい」
「てめー、どこまで童貞なんだ……」
呆れ返って悪態を吐きながらも、真尋はこちらへ尻を向けてくれる。ギンギンに膨らんだ一物が、腰にずっと当たっていたせいもあるかもしれない。こんなものをぶら下げて朝食バイキングなど、それこそ正気の沙汰ではない。
背面側位というのだろうか。一刻も早く繋がりたくて、寄り添って眠っていたそのままの体勢で行為に移った。昨晩散々蕩かした蕾は、一晩経ってもまだ熱を持っており、軽く押し込むだけで奥へ奥へと誘ってくれた。
「んんっ……」
最奥まで到達し、真尋は詰めていた息を漏らした。呼吸に合わせ、潤んだ肉襞が吸い付いてくる。曜介が腰を揺すると、真尋はまた息を詰める。
「っ、く……ふ、んぅ……っ」
「声我慢してんの?」
「ったり前、だろ……んっ」
「まぁ、そりゃそうか」
「はや、く、いけよ……っ」
「お前イかしてからじゃねぇと、イけねぇ」
「あっ……!?」
曜介は真尋の片足を持ち上げ、膝裏を掴んで大きく開かせた。こうすることで挿入が深くなり、ピストンもしやすくなる。ベッドのスプリングに手伝ってもらいながら、前立腺を狙って突き上げる。
「どう? いいとこ当たるだろ」
真尋は悔しそうに唇を噛む。律動に合わせ、黒髪がさらさらと靡いている。
「よくねぇ? じゃあ、こっちは?」
少し角度を変えて奥を突く。真尋は目を剥き、腰を跳ねさせた。
「ばっ……っか、だめだ、だめっ」
「締め付けやべぇっ……」
肉襞が媚びるように絡み付く。限界が近いのか、肚の奥が小刻みに震えている。曜介は一層激しく腰を遣った。真尋は腰を仰け反らせ、つま先を丸めて曜介の足に絡ませる。
「あっ、うう……っ、だめいく、いくっっ────」
すかさず、曜介は真尋の頬を掴み、振り向かせて唇を塞いだ。爆発するような喘ぎを全て呑み込み、自身の全てを注ぎ込んだ。
「ぁ、……んん……♡」
余韻を味わうように舌を絡める。奥に放った精液が潤滑剤の役割を果たす。しっとりと潤み、滑らかに吸い付いてくる蜜壺を、もう一押し掻き混ぜたくなる。曜介は軽く腰を回した。その時である。
スマホのアラームが鳴った。大音量だ。絶対に寝坊できないので、予めしっかり設定しておいたのだ。曜介も真尋も、弾かれたように飛び上がった。勢い余って額をぶつけ、真尋は涙目になって曜介を睨んだ。
「だ、大丈夫大丈夫。まだ慌てる時間じゃない。早めにセットしといたから、シャワー浴びるくらいの時間はあるはず……」
とはいえ相当ギリギリだ。曜介はまだいいとしても、真尋は足腰に力が入らないようで、独りでは如何ともしがたいらしい。慌てる時間じゃないとは言ったが、即座に前言撤回し、大慌てで朝の支度に追われたのだった。
その後、移動のバスでも帰りの飛行機でも、隙を見つけては居眠りばかりだったのは、言うまでもない。
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