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翌日の夕方。 アロが”務め”を終えた頃合いを見て、彼の館を訪ねた。 俺を迎えたアロは顔を強張らせたが、すぐに綺麗な化粧の顔で微笑んで、俺を客間に通した。 昨夜の出来事のほとんどが闇に紛れて互いの顔がほぼ見えなかった事実は、”なかったこと”にするためにはよかったと思う。 「どういったご用件でしょう?」 薄衣の胸から腹に透けて見える傷を見て見ぬフリをして、持参した包みと箱をテーブルに置いた。 「もらってくれ」 「先日もいただいたばかりなのに…」 男物の衣を手に取ったアロは、肩をすくめて恐縮してみせた。 「着てくれてるらしいから」 「…ええ…その箱は?」 「薬だ」 「薬…?」 箱に伸びた手が、封を解く前に止まった。 「性欲を減退させる、役に立ててくれ…無くなる頃に言ってくれれば、またやろう」 他人を装えなくなった顔を見つめながら、続けた。 「それと、張形(ディルド)、ペニスを模した淫具だ」 「…っ!??」 「必要なら使うといいーーー」 「どうして、こんな…」 苦々しく伏せた顔は、こちらも苦しくなるほど歪んでいた。 「…少しやつれて見える、ちゃんと食べるんだ」 「…はい」 「困ったことがあったら言ってくれ」 「…はい」 「なんでも」 「重ね重ね、お心遣い痛み入ります…」 「…じゃあ、失礼する」 エントランスまで俺に従ったアロは、「本当に、ありがとうございます」と深く礼をした。 その声は、今にもわっと泣き出してしまいそうに聞こえたが、振り返らないで後にした。 門の外で控えていたガイが、開口一番、「どんな様子でしたか?」と聞いた。 もちろん、アロへの”貢物”の調達は彼に任せている。 「もう徘徊することはない…と思いたい」 「そう願います」 「……辛そうだった」 「そうでしょうね…私なら恥ずかしくて顔向けができません」 「…」 「貴方はどうなんですか?」 「どうって、何もーーー」 「少し、お休みになられた方がいいかと…」 「そーだな、長いことあいつをおぶったが重かった」 「………」 「…これ以上、苦しめたくない」 「貴方のせいでは…」 「…」 「くれぐれも深入りはーーー」 「わかってる」 それでも。目を閉じれば、昨夜の一部始終を体で思い出せた。

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